ボイジャーとデイビットが話してるのを見たい
存在すら知られていない未知のものを発見する、真の意味での“探査”機(NASA)
人類によって創造され旅立った、外宇宙への使者(マテリアル)
と天使の異物で外宇宙と繋がるようになったもの
激アツすぎる
カルデアの食堂にデイビットとボイジャーはいた。
かたや外宇宙の遺物によって人ではなくなったもの、かたや人類によって創造された外宇宙への使者。
ふたりは宇宙について話していた。
デイビットを襲った天使の遺物、外宇宙にいる名状しがたき邪神の話を。
「とおいうちゅうのはてには、そんなものがまっているのね。ぼく、こわいなぁ。せっかくもっていったこのレコードが、わるいようにされてしまうかもしれないのかしら。」
不安げにつぶやいたボイジャーにデイビットは優しく語りかけた。
「安心しろ、君は星の航海者。君が進む限り、その歩みをを妨げるものはいないだろう。」
「うん、そうだよね。ありがとう、ぼく、がんばるよ!」
ぱあっと笑顔になるボイジャーを見てデイビットは善いことをしたな、と思った。
「そういえば、あなたはとおいうちゅうのはてまでみとおせるんだよね。ぼくのこと、みえているのかしら」
ボイジャーがデイビットを見つめながら言う。
「ああ、見えてるぞ。ずっとな」
デイビットの言葉を聞き、ボイジャーは嬉しそうな顔をする。
「えへへ、ありがとう。これからも、ずっとみててね」
「もちろん」
「ぼくはさ、ながくながくたびをするために、いろんなものをきりおとしているんだ。かめら、れこーだー、ばらんすをたもつためのこまも。あなたも、いろんなものをきりおとしてきたって、ぼくはきいたよ」
ボイジャーはデイビットの目をまっすぐ見据える。
「ねえ、ぼくとはなしたことも、あなたはわすれてしまうのかしら」
その声色は寂しげであった。
「…たとえどんなことを話したかを覚えられなくても、君と話したという事実をオレは忘れない」
デイビットは少し考えたあと、そう言った。
「ふふっ、そっか!ならよかった! あのね、いつかまたぼくとおしゃべりしてくれる?」
「ああ、いつでも」
「やったあ!やくそくだよ!」
ボイジャーは嬉しそうに飛び跳ねるとデイビットの手を握った。
「約束しよう」
デイビットは握り返すことはしなかった──否、できなかった。
冷血な虫にその温もりは毒だったから。それでもボイジャーは満足そうに笑っていた。
「じゃあ、ぼくいくね。いろいろおしえてくれてありがとう!ばいばい!」
「ああ、さよなら」
デイビットは手を振って食堂を出ていったボイジャーの背中を見送った。
そしてひとりになったところで呟く。
「ボイジャー、君の瞳に映るものが、幸せなものであればいいな」
その祈りを聞く者は誰もいなかった。