ホシノが少し積極的になる話
「ん、ホシノ先輩ちょっといい?」
今日は久々の先生と一緒に過ごす休日。何処かに遊びに行ってもいいし、一緒にだらだら過ごしてもいい日。
多忙の中、おじさんの為に時間を割いてくれるなんて頭が上がらないよ〜と思っていると可愛い後輩のシロコちゃんに呼び止められ、封筒を渡される。
「新しく出来たアクアリウムのチケット?
うへ〜、シロコちゃんこれどうしたの?高かったでしょ〜」
「何時もお世話になってる先輩へのプレゼント。みんなでお金出し合って買ったんだ」
封筒の中には二枚のアクアリウムのチケット。先生と遊びに行く事を知っていたみんなが新しく出来た水族館へ二人で楽しんできてほしいと今日の為に用意したそうだ。
先生も私もお魚が好きだから水族館は良く二人で行く、それを知っていてのチョイスだろうか。
なんてよく出来た後輩なんだろう、いい後輩に恵まれておじさん幸せだな〜と思った矢先。
「先生とのデート頑張ってね。振り向いて貰えるといいねホシノ先輩‥!」
「へ‥?」
ぐっ!とサムズアップして頑張れと言う目線を向けて来る。
自分が無意識のうちに見て見ぬふりをしていた気持ちを掘り起こされ顔が熱くなる。
「お、おじさんは別に先生とそんな関係になりたい訳じゃ‥」
シロコが違うの?と言わんばかりに首を傾げこちらを見る。
「カイザーから助けられた後からおしゃれする様になったり先生にお弁当作ってあげたり色々アピールしてるのに?」
先生に行ったアピールの数々を挙げられ恥ずかしくて何も言えなくなってしまう。後輩に自分が色気づいた事を指摘されるのは中々に恥ずかしい。
「ん、私は先輩を応援するよ」
「‥シロコちゃんも知ってると思うけどシャーレにはさ、私なんかよりずっと綺麗で素敵な子が沢山居るんだよ。おじさんが振り向いてもらえる訳ないよ」
先生は強くて優しくてお茶目で、みんなを引っ張っていってくれる太陽みたいな人。そんな先生がみんな好きだ。ゲヘナの風紀委員長も、トリニティの元ティーパーティや医療騎士団団長も、ミレニアムのメイドも、みんなみんな先生が大好きだ。
その沢山の人の中から選んで貰えるとはとても思えなかった。
「ん、なら先生は私が貰う」
「え‥」
「ホシノ先輩が要らないなら私が先生の隣に立つ」
新しい先生の恋人の立候補者の誕生。先生がまた自分から遠ざかってしまうそう思うとつい咄嗟に
「だ、ダメっ!あっ‥」
と言葉を漏らしてしまった。
「シロコちゃん、おじさんにカマをかけたね‥」
少しの沈黙の後に抗議の目線をシロコに向ける。しかし、ホシノの目線を受けても尚
「ん、ホシノ先輩は自分の心に素直になるべき」と怯む事なく言い返す。
「うん、そうだね。ありがとう、シロコちゃん。
おじさんもう少し素直になってみるよ」
そう言うとホシノはシロコに別れを告げ、シャーレに向かって行った。
*****
「お、いらっしゃいホシノ」
シャーレに着くと先生が何か作業をしていた。私が来るまでの間で出来る仕事をやっていたらしい。
常に生徒のみんなの事を考えている先生には頭が上がらない。
「今日はどうするんだ、ホシノ。何処か行くなら車を出すぞ」
「あのね、先生。新しく出来た水族館のチケットが有るんだけど、私と一緒に行かない?」
だから今日は精一杯楽しんで欲しいな先生