【閲覧注意】水槽の水葬
水操の術師:鹿座雲 栞――――ただ暗い、冷たい水の感触。
お母さん、お父さん、冷たいよ、息がしずらいよ――――。
助けて、誰か助けてよ―――。
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鹿座雲家には、代々受け継がれた伝統がある。
水操術式という、相伝術式を受け継いだ者には、子供ながら辛い修行を受けることになる。
【水葬の儀式】と呼ばれるそれは、子供に暗い亀が入る様な水槽の中で最低限の食事を与え、呪力を練らせる、より高い水の呪力特性を得るための訓練である。
1ヶ月間経つ毎に水槽から引き出され、生死の確認と体調の管理をするのだ。
実際に効果があるかは定まっていないが過酷な環境に身を置くことによっての呪力の増量やコントロールの練度を高める効果があるため、鹿座雲家では伝統とされている。
そして、亡くなった水操術式の使い手はこの水槽で水葬されるのだ。
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―――今、何時なんだろう、時間が分からない、暗い、暗いよ、何日間ここにいるんだろう。
―――食べ物なんて栄養ゼリーだけ、お腹空いたよ。
―――体が動かない、体が熱い、頭が痛いよ…。
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ここで亡くなる子供も少なくない、しかし、この試練を乗り越えた者だけがより高い実力を手に入れる事が出来る。
とは言われているが、実際にはあまり影響がないと言うのは呪術界では有名な話である。
しかし未だに鹿座雲家の人間は伝統を重んじ、犠牲を覚悟にして夢を見ているのだ。
200年前に現れた最初で最後の鹿座雲家の一級術師、その影を未に見続けている老害と、それに毒された鹿座雲家の人間は、この低俗な行いを続けているのだ。
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「大丈夫か?風邪か、治ったらすぐ戻す」
―――これで終わりじゃないの?
「何を言っているんだ、こんなんじゃ四級術師にすらなれない」
―――はい……
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これを12回ほど繰り返し、子供はやっと水槽から開放される。
しかし、それはトラウマとして残る事もある。
この行いが終わる事は恐らく、鹿座雲家の壊滅か、呪術界の壊滅を意味するだろう