私達の日常/私の異常

私達の日常/私の異常


 部屋に響くのは男の荒い息とベッドがきしむ音。

 これだけでは男が自分を慰めてるだけに思えるが、その部屋にはもう一人いた。

 男――ルフィ――の下ではうつ伏せに寝ている女――ウタ――が居り、その膣内にはルフィの男性器が納められ行き来を繰り返していた。

 そう、男女の睦言。二人の年頃であれば好きな人との逢瀬に夢中になり、時がたつのも忘れて没頭してしまうのもやむを得ないだろう。

 だが、ウタの表情はというと快楽を感じているようには見えず、時折上げる嬌声も聞く者が聞けば演技だとわかってしまう。

 彼女の演技力自体は元々高く、自身の体質について色々調べたときに見た動画等で得た知識もありルフィには気づかれていないとウタは思っている。

 そう思ってはいるが、ルフィは勘が鋭い男でもあるので内心はバレていないか、もしバレてしまって愛想をつかされてしまったら? こうして抱いてくれているのも哀れな私につきあってくれているだけだとしたら?

 ルフィは優しい男だし、私を愛してくれている。そんなことはないと思うし、私ももちろんルフィを愛している。大好きだ。

 それでもこうして――行為の最中でも嫌な考えが浮かぶほど私は自分の体質が好きではない。この、快感を感じない体が。

 セックス自体はできているので濡れてはいる。多少濡れにくさはあると思うが、ルフィがいつも丁寧に前戯をしてくれるので入れる頃には十分潤っているし、ルフィが入ってきて動いてる間も反応して溢れてきたり収縮してルフィを攻めたてたりしているようだ。

 それなのに、私は快感を感じていない。

 後ろからしてもらうのが好きなのも顔を見られなければバレにくいという打算があるからだ。……背中越しに感じるルフィの息遣いや、私のお尻や腰をがっしりと掴む手の感触や突き入れられるたびにダイレクトに感じるルフィの肉体もまあ、嫌いではないけれど。

 そうして耳や肌で感じるものはとても愛おしいのに、性的な快感だけはどうしても得られない。ルフィの事が好きなのに、体も反応してるし行為に対して忌避感も嫌悪感もなにもないのに。

 ルフィもルフィであれこれ勉強して色々試してくれるのだが成果には結びついていない。そのこともまた、私の自己嫌悪に拍車をかけている。私が自分に対して暗い感情を募らせること自体がルフィを悲しませるとわかっていても、好きな人とのセックスにちゃんと答えられない自分を呪ってしまうのは止められない。

 そうしてまた終わらない負のループに陥っているとルフィの息遣いが荒くなり、動きも早くなってきた。……そろそろ射精するのだろう。

 完璧には答えてあげられないけど、私の体でルフィが気持ちよくなっているのは嬉しい。嬉しいからこそ……ああだめだ、また思考がそっちに寄ってしまう。今日はいつも以上にダメみたいだ。

 こんな思考を巡らせている間も私は喘ぎ声の演技を忘れてはいない。マルチタスク能力の無駄遣いもいいところだが、それでルフィに気づかれないのであればある意味有効活用と言えるだろう。

 背中越しにルフィが限界だと告げてくる。それに対し私は今日はそのまま中でいいと返す。周期的に安全日だと添えて。――まあ、100%安全だなんて日はありえないのだが、少しでもルフィに快楽を味わってほしいので言わないでおく。たとえゴムをつけてても妊娠する時はするのだから、その時はその時だ。

 ルフィが一際深く突き入れ、それに合わせて私も声を上げる。ドクドクと脈打つ勢いと熱に合わせるように、切羽詰まった切ない吐息を漏らす。

 いつも思うが、ルフィの射精は平均より長く量も多いのではないだろうか?

 出始めてからしばらくはお互い動けないし、出し終わってから膣内の後始末をするのも結構かかる。それだけ私で気持ちよくなってくれたという証なのだから嬉しいが、危険日等に生でやったら1回でも妊娠してしまいそうなレベルだ。

 長い長い射精が終わりルフィが引き抜くとゴボリと私からあふれてくる。……ほんと、多いなあ。私のナカが小さい、という事はないと思う。あのサイズのルフィのを全部受け入れられてるし。

 後ろの方でガサガサと音がする。ルフィが私の後始末を手伝おうとしてくれているのだろう。毎度のことながらとても恥ずかしい。でも、すぐにでもやっておかないとシーツが色々大変なことになるし、お風呂場に行く間に色々こぼれてしまうのだから仕方がない。

 そうこうしているうちにルフィが私の腿に触れながら力むように言ってくる。いやほんと、ものすごい恥ずかしいんだけどねルフィ?

 ゴボリゴポリと大量に中に出されたルフィの精液を頑張って外に排出する私。それをティッシュで受け止め拭いゴミ箱にすてるルフィ。早く終わってと願うものの、量が量なのですぐには終わらない。

 毎度毎度いつも思う。ルフィのあのサイズが私に収まるのもそうだけど、ルフィの体のどこからこんな量の精子が出てくるのか。

 そんな益体もないことを考えていると後始末も終わり、ルフィが水を取ってくるからと部屋を後にする。

 私はそんなルフィを見送りながら起き上がり、掛布団で身を包む。寒くはないが、こうしていると落ち着くのだ。不出来な私の体を覆い隠せるようで。

 その後はルフィがもってきた水を飲んだり、お風呂に入って洗いっこしたりして過ごした。途中ルフィがまた勃起させていたが手や口でヌいて上げた。

 私が奉仕するというのは好きだ。ルフィの快感を感じてる顔も射精をこらえる顔も可愛くてとても愛おしいし、尽くしているという感じがしてとても嬉しい。……私が感じないという事も関係ないし。

 そうしてちょっとしたハプニングがありつつも私とルフィは同じベッドに入って眠る。

 今日は金曜の夜で土日もお互い特に予定もない。だからこのお泊りも問題ないのだ。

 ルフィは私を抱き枕にして眠っている。その体温の温もりと、私を守るように優しく、だがしっかりと抱きしめている確かな存在に安心感を覚え、私もまた意識を手放して眠りにつく。

 眠ってさえしまえば、あれこれと暗い考えを巡らせることもない。いつの日か、素直に快楽を感じてルフィと共に耽るというありえない未来を期待しなくても済むのだから――

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