ブラックアンドホワイトチェリー

ブラックアンドホワイトチェリー

モノクロに咲いていた白と黒の話

今日もまた、黒川花美は居候先の桜宮朱音と話していた

「ごめんね…いつも花美ちゃんに一会のこと任せて…」

「いいですよ〜、私がやりたいだけなので!」

ニコニコと笑いながら花美は答えすぐに、歩いて行った。


長い廊下を渡ってコンコンとノックをして声をかける

「一会ちゃ〜ん…入っていい…?」

先ほどまでとは声の音量がまるで違う。

怯えさせないように、怖がらせないようにそんな声色だ

しばらくしてから

「…ん」と言う一言とガチャリと鍵の開く音する

花美がゆっくりとドアを開けると“いつものように“布団をかぶって体育座り

をしている少女、白山一会がいた。

「一会ちゃん、こんばんは」

「…花美…もう夜…?」

「いや?まだ夕方だよ」

「そっか…今日はいつもより早く起きれた…褒めて…」

そう言って布団にくるまったまま近づいてくる

「いいよ〜」

そう言って花美は一会の頭を

「よーしよしよし」

と言いながらわしゃわしゃと撫でてあげた

エヘヘと暗い顔を少し綻ばせながら一会は撫でられていた。


ガチャ 


いきなりそんな音がして男の話し声が聞こえてくる

その瞬間、

一会は、綻ばせていた顔を恐怖に歪ませて

「ごめんなさいごめんなさい…いやだ、殺さないで、痛いの…カヒュッいや…

もう…何も…ヤダヤダヤダヤダヤダ」

すぐに花美はぐっと一会を抱き寄せて

「大丈夫…大丈夫だよ…私がいるから…何も起きないから…」

と落ち着ける

花美は一会の兄が帰って来たのだと言うことがわかった、多分、一会もわかるだろう

それでも、心に染み込んだ恐怖というものは拭えない。


花美は今日も考える、

もっと早くあの村から連れ出していなければ彼女は明るくいれただろうか、

もしも、ここに来てから“あの子“に頼らなければ少しはマシだっただろうか

それだけで、一会はただの少女として過ごせただろうかと。

全て、意味のないことだ。全部、自分が動かなかった過去のことだから

「……花美、今日はどこにも行かないで…」

そして、自分のことをそれでも慕ってくれるこの少女をどこか自分のものにしたいとも思ってしまう。

そんな、汚い自分に吐き気を催しながらも

「うん…いいよ…ずっとここにいるよ…」

少女の優しさに甘え続ける。


薄汚れたモノクロ写真のような生活を今日も2人は過ごし続ける




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