フィナーレ
カワキのスレ主「いよいよ最終日(フィナーレ)だ。……思えば長い、長い夏休みだった」
「やり残しはないよね? もう後戻りはできないよ?」
「やるべきことはすべて済ませてある。——さあ、報酬をいただきに行こう」
思いつきから始まった私たちの計画は今、ここに結実する。
すべては己が利のために——この手で楽園を、壊すのだ。
◇◇◇
『フィナーレだ!』
『やったね、みんな!』
「やりましたね、先輩! ミッションコンプリートです! 無事にサバフェスは閉幕しました。あとは評価が出るのを待つばかりですね」
紫髪の少女、マシュはにこやかな表情で笑った。
この夏、最大にして最後のイベント——サバフェスが閉幕したのだ。淋しくもあり、けれどそれ以上に、達成感に満ちた良い笑顔だ。
その向かい、人好きのする顔で笑うのは、美しい銀髪の青年、エドガー。エドガーは心からの感謝を込めて、晴れやかに笑った。
「本を作ることがこんなに楽しいなんて知らなかったよ! ありがとう、星見の君たち。おかげで新しい幸せを知ることができたよ」
そう言ったエドガーは充足感と少しの寂しさを持って目を細めた。
「……本当に、最高のお盆休みだったなぁ」
「エド……。…………そうか、そうだな」
その横顔を目にして、ユーハバッハはフードを深く下げた。
「私も、そろそろ夢から覚める時だ。いつまでも幸福な夢に浸っているわけにもいくまいよ」
「エドガーさん? ユーハバッハ陛下?」
ユーハバッハの意味深な言葉の後、カルデアの観測結果に異変が生じた。
「……! 先輩、見てください! 人理定礎、急速に安定へ向かっています! これは……」
驚いた表情で顔を上げた星見の少女たち。ユーハバッハが一歩前に進み出る。それは、これまで見せていた親しみ深い青年ではなく、王の威厳に溢れた佇まい。
「この特異点を生み出したのは私……そして特異点を作った目的は果たされた。そろそろ目覚めの時ということだ」
『陛下が、特異点の主……』
『マグダレーナさんと同じ、“人格ある聖杯”……?』
「……“人格ある聖杯”、か。言い得て妙だな、さすがは我が妹だ。それでは、レーナから話は聞いているな? ……お前たちのおかげで、私は満足いく夢を見ることができた。常夏の楽園はここまでだ」
夏休みの終わりを告げたユーハバッハは、功労者を労うように、ふっと口角を上げて笑った。
「お前たちには褒美を取らせねばなるまい。そうさな、特異点を維持していた力をお前たちが言うところの“聖杯”の形に加工して……」
その手に特異点を生成・維持していたリソースが形を成して集まった時——本当の意味で、夏休みは終わりを告げた。
「——そう。楽園はここまでです、陛下」
「ふふふっ、特異点のリソース、もーらいっ!」