ファムで射精した
円盤闘技場セリオンズ・リング。
火山上空に位置するこの戦いの地では日夜機械生命体セリオンズたちが互いの武装を奪い合い、その力を高める場所であった。
その日、珍しい組み合わせで試合が執り行われ闘技場は熱狂に包まれた。
かたや連戦連勝でその名が広まり始めたセリオンズ"リーパー"ファム。
人魚を模した美しいフォルムと二本の機械触手を駆使して戦う戦士。一方、相手は無名の人間の男であった。
正直、ファムは男を侮っていた。
これまで倒してきた存在に比べてあまりにも脆弱な生身の身体しか持たない人間に負けるハズがないと。
だが、ファムを含めて観戦者全員が男の秘めた情熱から発する力を見誤っていた。
「ファムの攻撃が当たらない?」
縦横無尽に繰り出される二本の触手による殴打、そして先端から放たれる鋼鉄をも切り裂くウォーターカッターの軌道も読まれ、まるで未来を先読みしているかのようだった。
一度距離を取ったファムはジェット噴射のように触手の先端から高圧水を噴射し、生身の人間では対応出来ない速度で接近する。
しかし、それすらも読んでいたのかファムのシールドバッシュを避け、ファムの触手を掴んだ男はその推進力を利用してファムをそのまま後方の壁へと投げ飛ばす。
反応が遅れたファムはそのまま轟音と共に壁にめり込み、衝撃で機能停止したファムの機械触手は力無くその場に垂れ下がった。
まさかの結果に闘技場は大盛り上がり。男はファムから何かを奪う権利を獲得したのだった。
「ファムは、負けたのですね」
再起動したファムは自分が敗北した事を悟る。
システムチェックの結果問題なく、躰を駆動させて上体を起こす。
「よかった、目を覚ました」
起き上がったファムに話しかけてきたのはファムに勝利した挑戦者の男だった。
闘技場で見た鬼気迫る表情は影も形もなく、その見た目は体格の割に覇気のない青年だ。
こんな男に負けた事実は認め難いが、負けは負け。
ファムはセリオンズのルールに則り、一つ男に武装を渡す必要がある。
「アナタは、ファムの何を欲しますか?」
ファムの抑揚のない言葉に男は意を決し、答えた。
「俺の、童貞を貰ってください!」
ファムの思考回路は、たったそれだけの言語を解するのに時間が掛かる。
沈黙したファムに男は次々と処理しかねる情報をファムに浴びせる。
男は女性的な機械に興奮する倒錯者であり、ファムに挑んだのもエッチな事、すなわちファムと性行為をするためだと言う。
ファムは内心に秘めた感情を表す言葉を模索する。
(ドン引きです……)
人間の様に表情を浮かべれたなら引き攣った顔になっていた事は間違いない。
何があろうとも変化のないファムの鉄の顔はただジッとこの偏愛者を見つめる。先ほどから熱サーチに引っかかっている下半身の異常な膨らみが、この男が本気であると示している。
ルールならファムから何かを奪わなければならないが、広く解釈するなら勝者の望みを敗者が叶えると言えなくもない。
「触手による搾精なら可能です」
ファムの言葉に男は狂喜乱舞し、その姿に再びファムはドン引きする。
「ファムは一つ学びました。これがキモイというやつですね」
火山上空に位置するだけあってこの闘技場全体は熱気に包まれているが、闘技場に満ちる熱気とはまた違った熱気が控え室に満ち満ちていた。
ファムがベッドに腰掛け、同じベッドに大の字に転がる全裸の男。無機質な躰のファムとは対照的に血肉を皮で覆う男の身体からは汗が吹き出し、シーツをしっとりと濡らす。
ファムは男に求められてたフェラチオなる行為をするため、機械触手の先端を調整する。
元々放水する威力を調整するために穴の大きさは可変可能。異様な熱を放つ肉棒が入るサイズに合わせると触手でゆっくりと肉棒を咥え込む。
「ああっ」
男の情け無い声がぬちゃぬちゃと機械的に動く触手の音に入り混じる。
触手を上下に動かしつつ放水口を拡げたり窄むたりしながら肉棒を刺激する。
「どうですか?ファムの触手は気持ちいいですか?」
返答なんて聞かずとも分かる問い掛けに男はコクコクと首を縦に振る。
ファムは無意識に身体をくねらせる男を抱きしめ、身動きを取れない様にする。
「どうです?情け無いとは思いませんか?負かしたファムに重要な器官を触手で嬲られているんですよ?」
ファムの言葉に男のモノはますます硬度と大きさが増し、はち切れんばかりに膨張する。
「先程よりカタくなっていますね。どうしてですか?ファムに教えてください」
「あ、ファムの触手が、俺のチンポを咥えて、じゅぽじゅぽされて気持ちいいから、です…ンンッ♡」
根元までファムの触手に包まれ、もう一本の触手が睾丸をゆっくりとなぞる。
「ここは人間のオスにとって弱点だとファムは聞いたことがあります。それは本当ですか?」
「は、はいぃ」
男の素直な答えにファムは無いはずの口角を上げたような錯覚をする。
「では、試してみましょうか」
「え? ふぎぃ!?」
ギュッ、と片方の玉を触手で咥えて窄める。
金玉を締め付けられた男は目尻に涙を浮かべながら悲鳴を上げ、海老反りに跳ねるがファムの躰で押さえつけられ逃げ道はない。
「なるほど、睾丸とはこんなに柔らかいのですね。危うく潰してしまうところでした」
「はぁーはぁー、はぁー♡」
ファムの耳元で喘ぐ男の声。聞くに耐えない情け無い声だがファムを満たすナニかがあった。
思考回路にソレを定義する言語が見つからないが悪い気はしない。
ファムはさらに男の身体を物理的にスキャンし、男の弱点を探っていく。
目隠しをし、触手で両手を縛り足の指先が付くか付かないかのギリギリの状態にされた男はプルプル震えながら未だに咥えて離さないもう一本の触手の快楽に悶えている。
「ファムの指が今アナタの乳首を摘んでいるのがわかりますか?」
クリクリと弾力のある乳首を親指と人差し指でイジリながら問うファムの言葉に男は頷く。
女であればここは子を育てるのに必要なものだが、男の乳首というのはほぼ必要がない部位であるとファムは知っている。
では何故男にも乳首があるのか?
「ファムは一つ学びました。男の乳首とはこうやってイジめられるためにあるのですね」
「んおぉっ♡!?」
グリッと強く捻ると男の身体は電流を流されたかのように大きく跳ねる。
ファムを倒すために鍛えた身体、身体中を弄りファムが理解したのはこの男は人間としてはかなりのステータスであるということ。
そんな男がファムの指先一つで悶え苦しみ、もっとも重要な部位を晒しているこの状況。
ファムは弱い者イジメは好まないが、屈強な男をこうして弄ぶことに対し、言い得ぬ感情データが溢れる。
「ファムに乳首をイジメられてからアナタのチンポ、ファムの中で何度もビクビク跳ねてますよ」
チンポ、という単語に男の身体が反応する。
触覚だけではなく言葉にすら反応する人間の身体に関心するファムはその単語を繰り返す。
「チンポ、気持ちいいですか?ファムの武器でもある触手をこんな事に使わせて興奮しているんですか?このチンポ」
男の身体はガクガクと痙攣し、涙と鼻水と涎と汗でグチャグチな顔は僅か白目を剥き出し、戦士の勲は微塵も感じられない。
ファムは男性器が限界に達した時に放たれる白い液体の呼称を思い出す。そろそろ出させないと本当に壊れてしまいそうだ。
あくまで勝者は男でファムは敗者、勝者の望みをファムは叶えてやらないといけない。
「先程からアナタのチンポは限界みたいですが、ファムにどうしてほしいですか?」
息も絶え絶えな男は残された体力と理性を振り絞って口にする。
「しゃ、射精させてください……」
か細く弱々しい男の懇願にファムは応える。
「わかりました。ファムの中でザーメンを出してください」
ファムは許しを出した瞬間触手の口を閉め、睾丸を鷲掴みにする。
「〜〜〜〜♡♡♡!!」
♡♡ビクッ!ビクッ!!ぶびゅるるるるるぅぅ〜〜〜〜!!!♡♡
生殖に必要不可欠な子種を同種のメスではなく異種族、それも孕み用の無い機械であるファムの触手にあらんかぎり無駄撃ちする。
一滴残らず搾り取ったファムの機械触手がじゅぽんと音を立てて男の肉棒から離れる。
「ファムに射精して気持ちよかったですか?」
ピクッ♡ピクッ♡
言葉もでない男の代わりにチンポがファムの問いかけに反応する。
その姿に、ファムは触手を手で絡めながらどこか色付いた声色で告げる。
「でしたらファムがもっとキモチヨクしてあげます♡やめてほしかったらファムに命じてください♡」
二本の触手が男に迫る。捕まれば先ほど以上の快楽が襲う事だろう。
だが男は口を噤み、腰を浮かしてファムの触手に再びそそり勃ちだした肉棒を差し出す。
ぬちょりとした感触と共に、搾精の愉しみを知ったファムによる無限搾取が始まろうとしていた。
エンド