ファナティック!
「みなさんこんにちは!今回はクリスマスレクリエーション企画の特別なランク戦!嵐山隊、冬島隊、太刀川隊、三つ巴のソリレースとなります!実況は私、水瀬隊オペレーター、佐野です!」
クリスマスイブのボーダー本部。ランク戦会場に響くよく通る声。にわかに沸き立つのはランク戦自体が普段と違う様相ゆえか。
「解説してくださるのはこの方々!増田隊からめちゃなが射程銃手!来栖隊員!」
「よろしくね」
「さらに、久木隊から特殊工作兵兼攻撃手!律隊員です!」
「どもども〜」
佐野の右隣に並び、中学生くらいの背丈と男性にしては高めの声で挨拶をするのは来栖流一、軽く手を振り挨拶をするのは右目から右頬にかけての傷痕が印象的な女性、律孝多。
「お二人とも、今日はよろしくお願いします!さて今回のソリレース!いつものランク戦とは異なりコースにあるチェックポイントをどれだけ早く通過し、ゴールできるかの勝負です!」
紹介が終わり、画面へと佐野が視線を戻して話を続ける。
「ただし!こちらのコース、様々な罠が仕掛けられています!グラスホッパーを仕込んだトランポリンやランダムな位置へワープさせられるスイッチボックスなどなど!罠はトラッパーの方々が仕込んだ、とのことですが…そこのところどうでしょう、律さん!」
「そーそー。私と冬島さんと虹乃さん、あとエンジニアの人たちも手伝ってもらって色々仕込んだよ。あ、冬島さんが出るこのコースは冬島さんには席を外してもらって組んだからそこら辺は大丈夫」
返答は軽いが、スクリーンを見るその目は簡単に罠は突破させないと物語っている。その自信は意中の人と共同作業を行っていた故か。
「なるほどなるほど!では罠はどうすれば回避できるのか!どうぞ来栖さん!」
「うん。鍵を握るのはオペレーターだね。オペレーターは10m以内の罠を隊室備え付けのPCから確認ができる。けれど罠の感知に加えてコース取りの指示もしなきゃいけないからオペレーターの腕が問われるよ」
唐突に話を振られても慌てることなく分析し、解説を始められるのはさすがA級部隊の隊員。体は小さくともその観察眼は鋭い。
「ということだそうです!普段のランク戦と違うとはいえ、隊員もオペレーターも気は抜けません!ではでは、間もなくソリレースがスタートのようです!皆さんもこの特別なランク戦、楽しんでください!」
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「今!!今見ましたか!?今嵐山さんがかっこよく罠を回避して!!!あぁ〜生きてて良かった……」
「いや今のは綾辻さんが上手く指示したみたいだね。さすが綾辻さんだ…でもやっぱりオペレーターの姿が見えないのはいけないと思うんだよね。ランク戦でもオペレーターの様子をワイプで見れるようにしたりとか……」
「冬島さんが罠にかかってるところを見るとさ...なんかこう、ちょっとゾクっとくるんだよね。普段は罠にかける側が罠にかかるのよくない?」
後日、『佐野爽香、来栖流一、律孝多、以上の隊員が揃った状態でランク戦の解説、実況をすることを禁止とする』とのお触れが出たのは言うまでもないことである。
これに対して3人揃って首を捻ったとかなんとか。