ビーナNTR(導入だけ)
かわいそ我慢の、限界だった。
ぼくだけ自由には元の体に戻れなくて、ぼくだけ名前が適当で、ぼくだけシて貰えなくて……。おかしい。こんな事があっていいわけがない。あいつ、ミガリが今、愛を享受できているのはぼくのお陰でもあって。そのぼくが、少しも愛されないのは、おかしいんじゃないか?あっていいはずがない。許せない。認めない。
怒りか悲しみか、はたまた寂しさか悔恨か、理解し得ない感情が身体を突き動かす。ザリザリと足を引きずり気味に歩き、真夜中のシャーレに侵入する。なんだか妙に頭が冴えていて、今ならわかる、この身体でも、ハッキングできる。警報機能を切り、扉のロックを外し、エレベーターを起動させる。エレベーター乗り込んで適当な階に移動させながら、監視カメラの映像を盗み見る。……いた。寝ている。オフィスで、ミガリ……と。
──ギリッ
奥歯が軋む。その音で自分が無意識に食いしばっていることを知覚する。こいつら、こいつら……こいつら!!!許さない、許せない!許したくない!!壊してやる!ぼくが!台無しにしてやる!!
エレベーターのリミッターを外し少しでも早く会うために規定速度を超えさせる。早く、早く……。着いた。既に開けておいた扉から、エレベーターが停まりきらないうちに飛び出し、オフィスに入り込む。
すうすう、という寝息と幸せそうな二人の寝顔を見て、昼間ゲブラに言われた言葉が脳内で木霊する。
「盗っちゃえばいいじゃない」
「我慢が辛いのはわかったけど、そもそもなんで我慢しているの?」
「やられたらやり返していいのよ?」
「あなた舐められてるのよ。一回見せつけてやりなさい」
そうだ、そうだよ。ぼくは間違っていない。酷いことをされたから、酷いことをしてやるんだ。お前が、お前たちが悪いんだ。好き勝手して、ぼくの気も知らないで、ぼくを弄んで……ぼくを蔑ろにして、ぼくを見下して、ぼくを馬鹿にしてぼくを貶んでぼくを辱めてぼくを、ぼくを……!