ビッチ豊くん概念
「ふぃ〜。」
久しぶりの有給だ、温泉に入ってもバチは当たらないだろう。
たまたまネットで目に止まった温泉だがなかなかにサービスが良い。
温泉も乳白色で少しどろっとしている源泉かけ流しで自分好みである。
そういえば、フロントで小さな女の子が忙しそうに働いていたな。
あの子が女将の子なのだろうか、たしか豊ちゃんだったかな。自己紹介をしてくれた姿を思い出し微笑ましい気持ちになる。
「しかし、穴場なのかやけに人が少ないな。」
こんなに良い温泉宿なのに何故だろうと首を傾げていると、露天への扉を開ける音が聞こえる。
何気なくそちらを見遣ると今朝働いて女の子がいた。裸で。
「あ、お兄さん入ってたんですね。」
「!?ちょっ、こっちは男風呂だよね!?」
「あってますよ。なに慌ててるんですか?」
我関せずといったふうに豊ちゃんは体を洗い始める。
「いや!女の子がなんでこっちに入ってきてるの!?」
「むぅ、お兄さん僕は男ですよ!」
可愛らしい顔で頬を膨らませながらこちらを振り向くと豊くんの股間にあるはずのないものが見えた。
そう、キンタマである。それも普通の人の何倍もあるような。
しかしただ大きいだけではない。綺麗でツヤツヤして思わず頬擦りしたくなるような光沢を放っている。
「ちょっとお兄さん、いくらなんでもそんなに見つめられたら恥ずかしいよ。」
その言葉でやっと我にかえる。それほどまでに人を惹きつける何かが彼の睾丸にはあるのだ。
「んふ♡お兄さんってよく見るとイケメンだよね♡福○雅治みたいって言われない?」
「…いや、言われたことないけど…ちょっと近くない?」
「そう…?男同士なんだから♡普通じゃない?」
そう言って豊ちゃん、もとい豊くんは僕の体を弄る。
「お兄さん体逞しいよね…僕のタイプなんだ♡」
豊くんの吐息が胸に当たる。
寸前で口と口が触れ合いそうになった瞬間
「あー、ダメダメ!こんなことしてたらまた怒られちゃう!っとうわっ!」
突然豊くんが僕から離れたかと思うとバランスを崩して転びそうになる。
「危ない!」
既のところでその見た目通りの綺麗に手入れがされているであろう手を掴むことができた。
「…♡お兄さん助けてくれてありがとう。お兄さんは優しいんだね♡」
蒸気した頬で豊くんにお礼を言われたじろいでいると豊くんは握った手からするりと抜け出し後ろ手を振りながら脱衣所へと消えていった。
「なんだったんだ…?」
しばらく呆然としていたが吹き付ける風に肌寒さを感じ、また少し温まってから服を着たのであった。
脱衣籠に自分のものとは違う部屋の鍵と可愛らしい文字が書かれたメモが置いてあったのはまた別の話である。