ビキニSS
どうしてこうなった。
いくらそう考えても、現状は変わらない。
アオイは細いうなじ、真っ白くちいさな背中をさらし、耳朶まで赤く染めてうつむいていた。
ペパーも一緒に買い物に付き合った大胆な紐ビキニ。プールに流されたトップスを拾って来たミライドンは、早く遊んでくれとせがむようにアオイに体を寄せている。
「ごめん、ペパー、後ろ結んで」
とアオイからこそこそとささやかれれば、親友の頼みをむげに断ることもできないけれど。
(勘弁してくれ……)
「おう、任せろ。ビビヨン結びで良いんだよな?」
ペパーは平然を装い、ためらいながらそうっと手を伸ばす。
間違ってもアオイの素肌に触れないように。
先ほどまでぴたりと自分の背に密着していた濡れた肌、ささやかながら柔らかなふくらみ、かすかに先っぽが固さを帯びていた感触がありありと残っている。少しでもアオイに触れてしまえば、理性がひんしになりそうだった。
無防備に信頼を預けてくる親友に、そんな汚いものを向けるわけにはいかない。
まずは背中側の紐を取って、くるりと輪っかを作る。確かに濡れている手では、そして濡れている水着は結びにくい。アオイが頼んできたのも仕方ないかもしれない。
「……よし、できた」
次は、とうなじに結ぶ紐へと手を伸ばした。ひとつ成功して油断があったのか、指先がアオイの細っこいうなじをかすめ、
「ひゃんッ」
アオイの聞いたこともない声が聞こえた。高くうわずって、でもどこか甘い──。
「悪い、驚かかせたか!?」
「ごめん、くすぐったくて、そこ、弱いんだ」
「そうなのか。アオイは敏感ちゃんなんだな」
大丈夫だろうか。アオイにおかしく思われていないだろうか。
顔と言わず、耳と言わず、指先まで熱くなりながら、ペパーは懸命に指を動かす。
指の動きに合わせて、ぴくんっとアオイの肩が跳ねる。唇を噛みしめているのか、「ん……っ」という声が聞こえてくるのがたまらなかった。