パレスチナのライダー
【元ネタ】クルアーン、『聖ゲオルギウス伝説』、ヘブライ語聖書、パレスチナ他各地民間伝承など
【クラス】ライダー
【真 名】ゲオルギウス/ヒドル
【性 別】男
【身長・体重】180cm・95kg
【外 見】緑色の服を纏うゲオルギウス
【属 性】秩序・善・天
【ステータス】筋力:D 耐久:B+ 敏捷:EX 魔力:A 幸運:A+ 宝具:B+
【クラス別スキル】
騎乗:A+
乗り物を乗りこなすための能力。騎乗の才能。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
A+ランクでは竜種を除くすべての獣、乗り物を乗りこなすことができる。
一瞬にして世界を駆け巡ると伝えられ、トルコの伝承ではその際灰色の馬に乗るとされる。
ヒドルはしばしば水と結びつけられ、船乗りの守護者ともされており、また、火の馬と火の戦車に乗って天に昇った預言者エリヤと同一視される。
対魔力:A
魔術への耐性を得る能力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。
【固有スキル】
縮地:A
瞬時に相手との間合いを詰める技術。
最上級であるAランクともなると、もはや次元跳躍であり、技術を超え仙術の範疇となる。
イスラームの聖者伝説において度々行われる奇跡、タイ・アル・アード(地球の収縮)。
一瞬にして長距離を移動する力とされ、自身が動くのではなく世界を動かす事で目的地に移動すると言われる。
この奇跡を行ったとされる人物は多いが、中でもヒドルは世界の終末まで死ぬ事がないとされ、あらゆる時代、地域に存在している。
シンクレティズム:A
一時的に霊基を拡張、短期間だけ自己と関連のある存在が有するスキルを獲得出来る。
パレスチナの伝統においては、ゲオルギウス、ヒドル、エリヤは同一の存在とされ、その聖所は全ての一神教徒に崇拝されていた。
また、ヒドルは一部地域のゾロアスター教やヒンドゥー教にも取り込まれて崇拝対象とされており、神話学においてはギリシア神話のグラウコスや、ギルガメッシュ叙事詩のウトナピシュティム、アーサー王伝説の緑の騎士、仏陀とも関連づけられるなど、地域、信仰を超えて幅広い伝承を有した存在である。
再生の「緑」:B
自己の周囲の植物を元気にする。溢れ出る生命力により自己の肉体、魔力を自動回復。
ヒドルは「緑の人」を意味し、その足跡に草木が生えるなど、植物や豊穣と関連する伝説を有する。
パレスチナの農耕暦においては、同一視されるゲオルギウスの二つの祭礼が雨季の始まりと終わりに位置することもあり、その崇敬は農業と結びつけられる。
英雄作成:C+++
他の英雄の助力をする際、自他に補正がかかる。
モーセ、ズルカルナイン、サイフ・イブン・ディー・ヤザン、アミール・ハムザ、ハントゥア、バタール・ガジなど、様々な伝承の英雄の下に現れ、助力を行った逸話から。
ヒドルは神が地上に与えた「慈悲」であるとされ、彼と出会うこと自体が一つの恩恵と目された。
神性:B
その体に神霊適性を持つかどうか。
ゲオルギウス、ヒドル、エリヤそれぞれが世界各地において崇拝、崇敬の対象となっている。
精神教導(鎖):B−
自他への精神的干渉を弱体化する。
かつてゲオルギウスを投獄した際に用いられた鎖。
聖遺物であり、癒しの力を有する。
パレスチナのゲオルギウス(マール・ジルジス)=ヒドル(アル・ハディル)=エリヤ(マール・エリヤス)信仰において、その鎖を保管する教会には狂気を予防、回復する力があるとされた。
そこはある種の精神病棟の役割を果たしており、狂人と目された存在は鎖で繋がれ、パンと水を与えられて40日間監禁されたと伝えられる。
【宝具】
『聖者永生・終末の来たるその日まで(ナビー・ムアンマル)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
致命傷を負った際、3回まで蘇生する。
ヒドルはイスカンダル双角王の生命の泉の探究に同行し、不老不死となったと伝えられ、死を経る事なく火の馬によって天へと昇ったエリヤと同一視された。
終末の日に偽預言者ダッジャールに殺されるが、神によって蘇生されると言われる。
イスラームにおけるゲオルギウスの伝説、ヒドルの伝説の双方に、「3回殺されるが復活する」というものがあることに由来。
『聖性三相・力屠る神火の剣(アル・ハディル=マール・ジルジス=マール・エリヤス)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1000 最大捕捉:1
ヒドル、エリヤ、ゲオルギウスの三者の逸話の混合。
宝具発動中、ヒドルの灰色の馬ボズ・アトに騎乗。縮地による次元跳躍を応用し、レンジ内の相手に対して、エリヤの炎を纏ったゲオルギウスの剣アスカロンを振るう。
回避は困難であり、ゲオルギウスの竜殺しの逸話とエリヤのバアル信仰駆逐の逸話から「神の敵」となる者に対して大きな威力を発揮する。
エリヤの信仰の守護者としての逸話からアスカロンの守護の力も強化されるが、3人分の逸話を無理矢理繋ぎ合わせたものであるため、魔力消費は重い。
【解説・人物像】
ヒドルとは、イスラーム圏で崇敬される聖者であり、神の言葉とされる聖典クルアーンの第18スーラ『洞窟』に登場する存在に比定されている。
聖者の他、一説には預言者、天使ともされる。
「二つの海の合流点」にて、旅に出たムーサ(モーセ)の前に現れ、「自分が分からない事に耐えられない貴方には、私と共にいる事が耐えられないだろう」と語り、「自分が何かを言う前に質問をしないこと」を条件に師事することを許す。
ヒドルは乗っていた船に穴を開ける、罪の無い少年を殺す、自分たちを拒絶した街の壁を報酬を取らずに直すという突拍子もない行いを繰り返し、その度にムーサは彼に口出しをしてしまう。
しかし、ムーサが耐えられなかった行いには全て理由があり、主の望みを実現したものであった。
彼は神により直接知識を授けられたとされ、未来を見通すことが出来たという。
伝説ではズルカルナインの生命の泉を探す旅に同道し、不老不死を得たとされ、一部には生命の泉の守護者であるという話もある。
世界中を旅し、木曜の夜または金曜日に各地の聖所に現れるという伝承があり、イスラーム圏全域にその存在が知られている。
「死を迎えていない人物」として、預言者エリヤと関連づけられ、同一視されることも。
サーヴァントとしては、ヒドルは上述した通り、終末まで生き続ける=死していない為英霊の座に存在していない。
そのため、パレスチナの民間伝承における竜殺しの聖人ゲオルギウス(マール・ジルジス)——キリスト教の聖人であるがイスラームにおいても尊敬される——との同一視を利用し、ゲオルギウスの霊基に介入することで無理矢理召喚される形を取った。
ライダーとして召喚されたヒドルは、ゲオルギウスの影響も合わさり、聖者として人を導くことに意欲的。
あくまでも自己を神から智慧を与えられただけとしており、自身については単なる「何処にでもいる存在」と語る。
飄々とした性格であり、人を教え導くことを好むが、ただ答えを与える様なことはせず、相手自身の手で物事を考えさせる。その教えは時に難解かつ不親切。
千里眼を有しているためか、その行動は常人とは異なるものであることもしばしば。
彼自身、説明を行わないこともあって、その突拍子もない振舞いは評価が分かれるものである。
しかし、彼の行動は原則として神の意思に則ったものであり、決して無意味なものではない。
他者に自分の行いが時に理解され辛いことは自覚している……というより態とやっている節も。
その行動の意図は神のみぞ知る。彼の奇行によってもたらされるものは、ある種の試練として受け止める他無い。