パルデアの休日
キタカミからパルデアの旅程は長い
あまりに長い旅は、贅沢に眠り尽くしても、まだ到着しない
少し退屈したオーガポンは今か今かと到着を待ち望んでいた、その気持ちが弾けたような元気いっぱいな声を上げてボールから登場した
「オーガポン、着いたよ!出ておいで!」
「ぽにー!!」
そびえ立つ摩天楼にオーガポンは目を丸くして、そわそわとした動きで上下左右を見渡した
「ここはテーブルシティ、学校のある街だよ
パルデアいちばんの大都会で、おいしいお店もたくさんあって……
そうだ、オーガポン、学校に行く前に街を見て回る?」
「ぽにぽに!」
こうしてオーガポンとのテーブルシティツアーが始まった
まずは何をしようかと、久しぶりの都会の空気を感じながらぴしっとした気持ちで歩いていた矢先、オーガポンが足を止めた
「ぽ?」
目の前のブティックのディスプレイにオーガポンは釘付けだった
帽子、かばん、靴下…オーガポンには初めて見るものがたくさん並んでいる
「オーガポン、気になるの?お店、入ってみようか
人間もね、オーガポンの仮面みたいに、色々なものをその日の気分でかぶっておしゃれするんだよ
この帽子とサングラスもこのお店で買ったんだ」
「オーガポンと初めてお祭りで会った時、オーガポンは碧の仮面をつけて楽しそうだったよね
人間も楽しい日にはおしゃれをするんだよ、オーガポンと一緒だね!」
「ぽにぽに!」
話が伝わったのか、物珍しいお店の品物にわくわくしているのか、オーガポンは元気に返事をした
「オーガポンにも何か買ってあげたいけど…うーん…ここはどれも人間用で……
そうだ!デリバードポーチでバトルの道具を買おうか!」
「ぽにー!」
ブティックを出て、次はデリバードポーチへ向かう
オーガポンは出会った時からバトルに興味津々だった
「オーガポン、一緒に次の大会に出てみようと思ってるんだけど
オーガポンは強いから、どんな戦い方で行くかすごく悩んでるんだよね
デリバードポーチにはバトルで使う道具がたくさん売ってるから、オーガポンと選びながら、バトルのアイデアにしたいんだ」
棍棒を振るうような動きを真似して、オーガポンに熱い思いを伝えた
「ぽにーー!!」
伝わったみたいだ
オーガポンはやる気満々だった
ブーン、とデリバードポーチのドアが開く
ごちゃごちゃとした店内で迷子にならないよう、オーガポンの手を繋いで、道具売り場までやってきた
「オーガポンは攻撃とすばやさが素早さが自慢だから、こだわりハチマキとスカーフが活かせるタイプ、だと思う
この前一緒にピクニックしたセグレイブ、あの、オーガポンがずっと追いかけっこしてた冷たい恐竜の子ね、この前の大会であの子はハチマキを使ってたんだけど、とっても強かったよ!」
「ぽ」
オーガポンはきょとんとしていた
他の棚にも目をやった
「いのちのたま 大人気商品 だって
うーん、でも、ちょっと頑張りすぎって感じでオーガポンにはあんまり持たせたくないかな…」
「オーガポンには仮面を持って戦うって選択肢もあるね、お気に入りの道具がなかったら、オーガポンの好きな仮面を持つのもいいと思うし…
うん、無さそうだったら、雑貨売り場でトレーニング道具を買うのもいいね」
オーガポンがあまりピンと来ていない様子を見て、やっぱり思い出の仮面を使って戦うのが良いと合点して、雑貨売り場に向かおうとした
「ぽ!!!」
後ろからオーガポンが声を上げたので振り返った
「え、これがいいの?」
オーガポンはこだわりメガネの方をアピールしていた
「オーガポンにはあんまり向かない気もするけど… 」
「ぽに!ぽに!!」
オーガポンが強くアピールする
しびれを切らしたのか棚からメガネをとって、オーガポンは仮面をつけるような手慣れた動作でこだわりメガネをかけた
オーガポンはご機嫌になって、ぴょんぴょんと跳ねている
「…オーガポン、仮面好きだもんね、メガネもかけてみたかったんだね!」
ふと横目を見ると試着用のミラーに目に止まった
「もしかして、おそろい?」
メガネをかけながらメガネを探すことがある
キタカミに行く少し前にブティックで買った、新しい赤い偏光レンズのサングラス
飛行機の時差ボケ帽子も兼ねて、キタカミを出た時から掛けていたことをすっかり忘れていた
「ぽにおー!」
鏡に気づいたオーガポンは一層嬉しそうに声を上げた
「おそろいだね、オーガポン
そのメガネ、(ちょっと高いけど……バトルで使えるかわからないけど……う…ん…でもオーガポンがそんなに喜ぶなら……)、買おうか?」
「ぽに!」
支払いを済ませて、お店を出る
視界がかすみそうになるようなパルデアの強い日差しには、サングラスがちょうどいい
オーガポンとお揃いの、赤いグラス
オーガポンの5枚目の仮面
初めてのパルデアの思い出が詰まった仮面
今日はお祭りの国パルデアにやってきたお祭りの日の、とっておきのおしゃれ
「(バトルのことは、後で考えよう…
オーガポンって、エナジーボール覚えるのかな…」
そんなことを考えながら、オーガポンと一緒に長い階段を登った