バーボンセイア
「やあ先生。ようこそ、バーボンセイアへ。この紅茶はサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」
落ち着いた雰囲気のこぢんまりとしたバーボンハウスのカウンターでコップの水気を拭き取りながら百合園セイアは先生に謝罪した。
騙されたのは一度や二度ではない。またか、という感じで先生はため息をついた。
“またなんだね?セイア”
「あぁ、そうだとも先生。また、だ。しかし久しぶりだね。最近は同業者も増えてしまって商売あがったりだ」
“へぇ、最近ちょっと苦しいの?”
「まぁ否定はできない。何しろ同業者が増えてしまってね。最近はどこもかしこもエだ死ばかりだ...」
“そっかぁ...ねぇセイア。ちょっと今日はガッポリ稼いでみない?”
「...なんだって?」
「うわぁ、おしゃれなお店...」
「来ちゃいました。ピース」
「ちくわ大明神」
「あはは...失礼します、セイアさん...」
“というわけでお客様に集まっていただいたよ。じゃあ注文を受け付けようね、セイア”
「待ってくれ、今誰か不審者が...それに一体これは!?」
「ではこちらの『コユキさんが先生にカジノの景品として人権差し出すことになった初夜プレイ』を所望します。出来るだけ早く」
「...なんだって?」
“ほらセイア、ちゃんとご注文確認しなきゃ。『コユキが先生にカジノの景品として人権差し出すことになった初夜プレイ』だよ”
「誰も彼も羞恥心はないのかっ!?うぅ.......『コユキが先生にカジノの景品として人権差し出すことになった初夜プレイ』でよろしかったでしょうか...?」
「はい、大正解です。ヨシヨシ。早くしてくださいチビキツネマスター」
「なんだとう!?」
「ひっ...♡んん、ぅ...っ♡せんせい...っ♡」
“おぉ...すっごいこれ...”
カウンターでカクテルを作るマスターの顔が羞恥に染まる。時々漏れ出る艶やかな嬌声は、瀟洒な空間に流すBGMにしてはやや刺激が強いように思われた。
揉む、掻く、撫でる、掴む、扱く。セイア自慢の尻尾の感触を気に入った先生は、とにかくカウンターの後ろからそれをもみくちゃにしていた。
「は、離してくれ先生...もう出来たからっ...ひん♡お客様のところ、へぇ...っ♡」
“別に私が離す必要は無いよね。頑張ってセイアが持っていけばいい話だよ。セイアは出来る子だよね?ほら頑張って“
「いま、ほめてもっ...!」
犬のリードのように尻尾を掴まれたまま、ヨロヨロと覚束ない足取りで何とかお客様のテーブルまでたどり着く。マスターとしての意地か、どうやら溢しはしなかったようだ。
「お、お客様っ...♡『コユキが先生にカジノの景品として人権差し出すことになった初夜プレイ』でございます...っ♡早くお召しになって、早く帰ってくれっ...!」
“触ってみる?”
「ぜ、ぜひ...!」
「んなっ!ま、待ってくれっ!お触りはダメ...んあっ♡ち、ちがっ♡そういうお店では、あぁっ♡やめてくれぇ...」
「随分ともみくちゃにされたね?」
「だ、だれの、せいだと...」
「まだ閉店には早いんじゃないかな、マスター」
「ぅひぃっ!?お、お尻を揉むんじゃ、あっ♡セクハラ、だぞっ...♡」
「マスター。『百合園セイア』一つ頼むよ」