バレンタイン

バレンタイン


 世はバレンタイン商戦真っ只中でござる。赤やピンクで飾られた棚を見ていると、拙者のテンションまで上がってくるでござるね。これでもそれなりに人気者でござるから、拙者もお友達とのお菓子交換の予定があるでござる。今年はちょっと頑張ってみようと思ってたでござるよ。まあそのちょっと頑張ったチョコを送ろうとしてた人はもういないのでござるが。なにしろ彼は拙者の家から巻物を回収していったあと、青い監獄に収容されて色々あったのち、もう高校どころの話じゃないでござる。乙夜殿もあそこなら好きでもない女にモーションをかけて籠絡するような任務は与えられないはずでござるし、生き生きとサッカーしてるとこを見ると拙者も嬉しいでござる。それに、あそこは年収うん百万うん千万、下手したら一億二億の世界でござる。ここまで住む世界が違うと拙者も諦めが……諦めが……うん。

 まあそれは良いでござる。今大事なのはバレンタインのことでござるよ。拙者も花の女子高生でござるから、友チョコにだって気合いを入れるでござる。

 料理は良いでござるね。集中すると無心になれるでござるよ。余ったチョコもクッキー生地に混ぜてチョコクッキーにしちゃったでござる。これは自分で食べるでござる。調理者の特権でござるね。

 片付けまでしてしまったらもうあとはラッピングだけ。つい緑色のものを選んでしまったのはまだ未練たらたらってことでござるな。くの一らしくもない。でも拙者女子高生でござるから。恋に右往左往するのも仕方ないってことで許してほしいでござるよ。よし、良い感じに出来たでござる。友達に渡すの楽しみでござる。

 ……一番出来のいいやつだけ分けちゃったでござる。乙夜殿は学校にいないし、そもそも拙者から貰った、つまり敵対する一族の人間から貰った食べ物を食べるほど迂闊な人じゃないでござろう。あの人拙者よりずっと優秀な忍者でござるから。自分で言っててちょっと悲しくなってきたでござる。拙者もくの一としては優秀な方だったはず……。まあ仕方ないでござる。これも自分で食べるでござる。

 ん、甘い。上手くできたでござるね。でもちょっと。ちょっとだけ。

「苦いでござるね……」


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