バルチャ丼
男ばかり集めれば下世話な話題もそれなりに話される。生活の大部分が放送されているが故に自重されている反動か、カメラのない部屋では却って開けっぴろげにされている。男子高校生の集まりだ、それもまあ自然なことであって。男同士の触れ合いが発生するのは普通ではないけれど、この環境では持て余した欲を発散するのに一番手っ取り早い選択肢であるのも確かだった。
「乙夜ってさー。溜まったりしないの?」
「そりゃ溜まるけど俺男には勃たないんだよね。しばらくは右手が恋人だわ」
「じゃあ抱かれる方は? 気持ち良いよ」
今日は蜂楽のもとに潔が訪ねてくる日だ。もう定例行事みたいになっていて、スペイン棟の全員に蜂楽と潔の関係性が知れ渡る勢いである。なお反応としては適度に発散できてサッカーに支障がないなら良しというものが大多数である。
「んー、まあ興味がないわけでもない」
「じゃあ今日来たら良いじゃん。潔上手いし、準備は俺が教えたげるよ」
「ちゅーす。よろしくー」
「連れてきた!!」
「連れてきた!?」
潔が乙夜を見てぎょっとする。もしかして潔に話通ってなかったのか。ここで帰ることになったら俺の尻洗い損じゃね? そう乙夜が考えていると、頭を抱えていた潔がふう、と息を吐いた。
「とりあえず蜂楽からで良い? 俺そのつもりで来ちゃったし……」
「お、やる気じゃん? 楽しませてよね」
煽る蜂楽に潔が今日は手加減なしな、と宣言する。乙夜にはあまり意味がわからなかったが、蜂楽がぎゃー!? と吠えたことでなんとなく察する。潔ってもしかしてベッドで豹変するタイプか。まあ優しそうなやつの方が夜は激しかったりするよな。
「乙夜も見てんだよ!? 潔が本気出したら俺トんじゃうじゃん!!」
「人呼ぶなら先に言えって約束したろ。破った蜂楽が悪い」
蜂楽は無慈悲にベッドへひっくり返された。落ち着かない様子でベッドの隅に腰掛けた乙夜へ潔が言う。
「あ、乙夜は優しくするから安心して」
「そりゃどうも」
すんとした顔は保っているが、心臓バクバクだったので正直助かる。蜂楽がトぶと表現するレベルを最初からかまされて正気でいられる自信は流石の乙夜にもない。
「ねー!? 潔ってば!!」
「天国見せてやるから大人しくしろよ」
「まじで死ぬって!! あッ♡」
バタバタと暴れる蜂楽を抑える手腕は見事だ。潔にも忍者の素質あるかも。乙夜はそんなことを思った。
蜂楽の体を潔の手が撫でると蜂楽の目がとろりと溶けていく。ご愁傷様、と乙夜は手を合わせたのだった。