ハンター(宇宙人)の嫁にされる乙夜
虚ろな視界に、何度も何度も薬を打たれて赤黒くなった自分の腕が映る。このゲームが始まってからどのくらいの時間が経ったのだろうか。あちこちから仲間たちの悲鳴や嬌声が聴こえる。正気を保てているのは最早俺くらいで、他の奴らの精神はとっくの昔に壊れてしまっているようだった。何人ものハンターに輪姦されて、人間の尊厳を全て奪われたのだから当然だ。俺だって、意識を飛ばせるなら飛ばしてしまいたい。しかし身体に刻まれた忍者の血がそれを許してくれなかった。
ふと、俺の身体を好き勝手していたハンターたちがなにやら会話をし始めた。日本語でも英語でも無い、彼ら独自の言語なのだろう、耳をそばだてても一切内容は分からない。
「…ッおい、もう充分だろ、俺たちのこと…解放しろよ!」
得体の知れない奴らが言語を理解していることに一縷の望みをかけて、俺は力いっぱい叫んだ。今俺がなんとかしなければ、俺もこいつらも一生サッカーが出来なくなってしまう。そうなったとしても、せめて命だけは。すると、急に一体のハンターが俺の近くに現れて、品定めをするようにじっと俺の顔を見始めた。そいつは今までのハンターとは段違いのオーラを醸し出していて、目が合った俺は思わずすくんでしまった。固まっていると、そいつは満足したようにうんうんと二回深く頷き、周りにいるハンターたちに何か指示を出した。その途端、全てのハンターたちがそこら中に転がっている無数の卵を拾い集めだした。それらは全て、ハンターに捕まった仲間たちから生まれたものだ。
俺は為す術なくただ見ていることしか出来なかった。ふと、呆然と座り込む俺の身体をさっきのハンターがひょいと抱えあげた。抵抗しようにもゆっくりと薬の効果が出てきたのか、思うように身体に力が入らない。
「離せ…!この…!」
ジタバタと暴れても圧倒的なパワーでホールドされて、謎の言語をブツブツ言われるだけだった。何やら不機嫌そうなそいつは急に俺の腹に手を当てた。そして、その手のひらからポウ…とピンク色の光が出た途端、俺は信じられないほど強烈な快楽に襲われた。
「あ”ぁッ!?!?!?♡♡♡♡♡♡♡♡」
全身が引き攣るほどビクビクと激しく痙攣して、俺は呆気なく絶頂した。こんなん、たかが人間ごときが勝てるわけ無い。深い深い絶頂から戻ってきたとき、俺は自分の腹が異様に膨らんでいることに気づいた。
「な、に…これ」
認めたくない。認めたくない、が、腹の中に卵が、ある。現実を飲み込み切れずにいると、犯人であるハンターが優しく俺の腹を摩ってきた。いつあの光を出されるか分からない恐ろしさに身体が勝手に震える。いやだ。あんなのを何度も浴びたら、俺が俺でなくなってしまう。ぶるり、と悪寒が背中を走った。しかしそれは恐怖からくる現象では無かったようで。出てきてしまう。卵が。
「…う、そ…」
ゴポ、と胎内で卵が動く音がした。やだ、産みたくない。産みたくない。そんな俺の願いは簡単に打ち砕かれて、嘲笑うかのように大きな卵がずるずるずる、と俺の内蔵を通っていった。
「ッ!?!〜〜〜〜〜ッっ!?♡♡♡♡」
あまりの衝撃に声も出なかった。痛いのでは無い、気持ちよさに殺される。産道を通る卵は結腸や前立腺といった性感帯全てを無惨に押し潰していくのだ。出産を終えた真っ赤な尻の穴がヒクヒクと収縮する。
ハンターは生まれたばかりの卵を俺の前に突きつけた。男なのに、宇宙人に孕まさせて、子供を産まされて、こんなに屈辱的なことは無い。奥歯を噛み締めていると、ハンターが俺と卵を抱えたまま歩き出した。その先にあるのはおそらく、宇宙船。見たこともない飛行物体だ。他のハンターたちは既に全員乗り込んでいて、中には大量の卵が積まれている。幸い、ブルーロックの仲間たちは乗せられていないようだ。ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、俺はある重大なことに気づいた。コイツ、まさか俺の事を連れていく気なのか?身体に冷や汗が浮かんだ。
「おい!もう卵は取っただろ!それやるから、ッ離せ!」
俺は必死にハンターに訴えかけた。しかしハンターは足を止めてくれない。もう少しで扉に着いてしまう。
「………乙夜!」
その時、遠くの方で耳慣れた声が聞こえた。烏だ。お前、気失ってたんじゃなかったのかよ。ふらつく足をなんとか立たせながら烏がこちらに走ってくる。俺もそれに応えるように懸命に手を伸ばす。
「烏、助けて……」
柄にもない言葉が勝手に口からこぼれ落ちた。その言葉は烏に届くことなく、無情にも扉は閉められた。そして間もなく、正体不明の宇宙船は完全に地球から姿を消した。乙夜影汰という人間を覚えている人物はもう存在しない。