ハッピー・インセイン!

ハッピー・インセイン!



「ミヤコちゃん、本当におじさんの眼が好きだねぇ」

「はい、ホシノさんの眼球は綺麗です」

呆れたように話しかけたホシノの視線の先には恍惚の表情を浮かべてガラス瓶を手にするミヤコがいた

瓶の薬液の中には、ミヤコお気に入りの青と橙色で一対の眼球が浮かんでいる…


「うへ〜…目を抉られた時は流石にびっくりしたよ〜、追い詰め過ぎちゃったかなあとか、どうしようとか…ヒナちゃん達に知られたら流石にミヤコちゃん殺されて困ったことになっちゃうと思ったしさぁ〜」

彼女の瞳のように二色に彩られた飴玉を口に放り込み、ゴロンとベッドの上に寝転んだホシノが天井を見上げながら懐かしそうに呟く

「ふふ…あの時は私も何もかもどうでもいいと思っていましたからね…」

ガラス瓶を標本棚のお決まりの位置に戻したミヤコがホシノの横に腰掛け、"砂糖"を含まない自作の眼球を模したゼリーを頬張った

「…今は違うの?」

「はい…今なら私を見て笑っていた貴女達のことが理解できます、きっと…同じ気持ちですから」

正気の境を超えてしまったことによる心境の変化、彼女の場合は恐らく不可逆的なものなのだろう


狂った者が自分より正気で可愛げのある者を見て癒される、ミヤコは見られる側から見る側になった

「うへぇ〜、そう言われるとちょっと昔のはしゃぎ過ぎな自分を思い出しちゃって顔が熱いよ〜…フォンダンホシノになっちゃうよ〜…」

きゃっきゃっと砂糖の高揚に身を任せてミヤコにじゃれついている最中、ふっとホシノが静かに微笑んだ

「でもまぁ、おじさんの眼は再生したし、ミヤコちゃんも明るくなったし…これでよかったんじゃないかな?」

「ええ、きっとこれで良かったんですよ…宝物も手に入りましたしね」


アハハと笑い合う二人、砂糖を摂っているか摂っていないかの違いはあれど…

彼女達は狂っていた

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