ハイネの休日
ドエスエロスキーウィッチクラフト・ハイネはごくりと唾を飲んだ。手にはアレな商品を取り扱っている『歌氷麗月』から届いたばかりの、およそまともでない虫が蠢いている。普段であれば忌避するであろうが、暴走した欲求不満は普段よりも早い鼓動と熱でもって本能を溶かし、とても魅惑的であるように視線を離せないでいた。
マスターが姿をくらましてそれなりの時間が経った頃の事だ。ジェニー、エーデルにも手伝ってもらってバイスマスターとして奮闘する日々も落ち着いてきた。ようやっと心に余裕が出来てくると、見ないふりをしていた疲労が顔を出す。皆で頑張っているのだからと気合を入れるも、一度綻びがみえると取り繕うことに余計に労力が必要になってしまう。それでも、と気丈に振る舞ってはいたが、空元気は続かずとうとう周りからNOが言い渡された。
「ハイネちゃんに倒れられる方が大変だもの」
気にすることないよ、とジェニーは笑いながら言った。エーデルも横で頷いている。そう言われてしまってはハイネも無理を押すわけにはいかない。マスターを捕まえたらみんなで小旅行にでも行こう、と心に誓いながらありがたく久しぶりの休日を迎えることになった。
これが今日という日に至る経緯である。
いざ休むとなるとどうしたものか。ワーカーホリックよろしく余裕もゆとりもない毎日が、日々の彩りを奪っていた。荒れた生活を化粧で隠していたが、いざすっぴんで過ごすとなると手持ち無沙汰である。
充実した休日を過ごさなければというなかば強迫観念めいた想いが、また抑圧からの解放が、彼女の歯車を大いに狂わせた。普段なら絶対にしないであろう発想にブレーキをかけずにひたすら加速する。
「……ふふふ、これ、気になってたのよね」
そうやってハイネのもとにやってきた若気の至り、それがパラサイト・フュージョナーだった。
さて、万が一がないようしっかり戸締りをして、念入りに体を洗い、タオルだけを身につけてハイネはベッドに腰をかける。わしゃわしゃと動くそれを手にしてこれから起こることを想像する。引き返すならここ、しかし火照った頭はぼーっと虫を眺めるばかりだ。それはシャワーによるものか、それともこれから起こる事を想像しているためか。熱に浮かされながら、タオルを捲り、左胸へと近づけた。
「ひうっ!」
びくり。虫が体に触れその感触に震える。乳首を優しく喰む感触に慌てて体から離そうとするが虫の口が乳頭にいっそう刺激を与えてきて声が出てしまった。一度噛みついたそれを逃さないように六本の足でハイネの体にしがみついた。爪が肌に食い込むが、痛みよりも快感が勝り思わずベットへと倒れ込む。
「……!…!?」
胸の上で微細に振動し、都度爪が身体を締め付ける。虫の食い付いた左の乳首だけが勃っていた。絞るように何度も擦られ、声にならない悲鳴をあげた。ベッドに倒れ込んだまま起き上がれない。ふくらはぎをピンと張って快感を堪えようとするが、腰が浮いてガクガクと震える。
思わず秘所へと手を伸ばす。ワレメをなぞるように動かした指に生暖かい粘液がまとわりついた。
一度動き出すと止める術はなかった。細かい振動に合わせて、指が上下する。指の腹が陰核を撫で、指の先が陰唇を広げ、膣口の中へと潜り込む。
(あ、あたま、あたまおかしくなる……!)
普段ではありえないほど激しい刺激に目の裏に火花を散らすが指は止まらない。左腕でパラサイトを抱え込み胸に沈める。今までもより強く乳輪に牙が突き刺さるが、その痛みに負けないように右手は快楽を求め、ついに果てた。ビクン、と腰が震えるたびに水が吹き出してシーツを濡らす。
放心するようにパラサイトを強く抱きしめていた左腕がベッドの上に投げ出されると、余韻に浸る間もなく振動が再開した。ヒリヒリと痛む傷跡を慰めるように、表面を微かに引っ掻き再度ベッドの上で大きく仰け反った。
「や……やめ……ヒィッ!!」
惚けた気分も吹き飛び、ハイネの精神を現実に引き戻す。自分1人であればここで終わるという上限を軽く超え、大粒の汗が肌を濡らし艶めく。
その後夜遅くまで、パラサイトはハイネを責め続けた。ようやっと動きを止めた時にはさまざまな体液を垂れ流しながらぐしょぐしょに汚れたベッドの上で、ハッ、ハッっと快楽の波の合間にどうにか呼吸をする有様であった。
「サイアク……」
自己嫌悪に陥るが、1日で開発され尽くした左胸に指を這わせると、勃った乳首は触れただけとは思えないほど過敏な反応。散々果て尽くしてもうダメだと思った下半身に熱を感じる。
「うぅ……これで最後……ぉ……」
いざ刺激がなくなると身体が疼いて堪らない。あと少し、あと少し、そうやって熱冷める事なく身体を慰め続けるのだった。