【ノベルゲーム風IF】潜水艦の災禍シリーズ2-2「動脈と静脈」

【ノベルゲーム風IF】潜水艦の災禍シリーズ2-2「動脈と静脈」

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・思いっきり書き忘れてましたが、シリーズ2「雪原の悪夢」と同時間軸のハートの一味視点のお話です。書き忘れてて申し訳ありません(1/12追記)

・R-18G

・軽度の暴力描写及び性描写あり。

・このSSはBLと同じ生産ラインで生産されています。念の為ご注意ください。

・今回もほんのりロー×シャチ、シャチ×ローの気配がします。

・食事中の閲覧はちょっとオススメしづらい内容。

以上宜しければお読みいただければ幸いです。


ローがポーラータング号を去り、もぬけの殻になった船長室にクルーたちが集まっていた。

『おれの私物は焼き払え ゾウへにげろ』

そう書かれた書き置きだけが、彼らを出迎えたのだった。

「私物を焼き払えってそんな…」

メモを見たイッカクが思わずそう呟いた時、

「うっ!?なんだこれ!?」

声を上げたウニの視線の先には、粒混じりの精液でじっとり濡れたバスタオルが置き去りにされていた。

よく見ると、ぶちまけられた粒のごく一部が逃げ場を求めて蠢いている。

「シャチ、これってお前の服に着いてた虫……だよな」

青ざめたペンギンが蠢く幼虫を指さしてシャチに尋ねた。

「あぁ。……おれが知ってることから話させて欲しい。」

シャチは、ローに心の中で詫びてからほんの数分前に自身に起きたことを話した。

「は…なんだよそれ…キャプテンが虫ヤローに乗っ取られてるって言いてぇのか!?」

どこからともなくざわめきが広がる

「違う!そうじゃねぇんだ!!むしろ逆でおれ達はキャプテンに守られたんだ。クルー全員連れてキャプテンから逃げろって…おれを、殺せ…って。」

しん、と室内が静まり返った。

その時、イッカクが口火を切った。

「…ウチらでキャプテン、治せたり…しない?」

「そうか!寄生虫なら駆虫すればキャプテン助けられるかもしれない!!」

どこからともなく賛同の声が上がり、希望は燃え移ってゆく。

「だけど…肝心のキャプテンがどこにいるかわからないよ?」

ウニが考え込んだ時、モコモコの手がおずおずと挙げられた。

「あの…おれ……キャプテンに皆には黙っててくれって言われたんだけど…。キャプテンに頼まれてドレスローザと…パンクハザードって無人島の2箇所の地図を描いたんだ。それとね、もう1つ頼まれたことがあって…」

ベポが頼まれた地図を描きあげ、ローに手渡したその日。

ローはやけに真剣な顔でベポに向き合っていた。

「ベポ…万が一おれに何かあった時やおれが単独で船を降りて戻らねぇ時は、お前の故郷を頼りにさせてくれ。」

「おれの故郷…ゾウを?」

「あぁ。移動し続けるゾウは集合場所に指定しても外部に情報が漏れにくい。エターナルポースも使えない島だがお前がいればアイツらだけはゾウにたどり着ける。それに、お前のビブルカードがあればおれも後から追いつけるからな。」

そうなる日が来なければいい、そう思いながらベポはローに地図を手渡したのだった。

そして現在、『ゾウに逃げろ』との書き置きが目の前に置き去りにされている。

「なるほど…つまりベポがゾウに居ないとキャプテンもゾウの位置が分からないのか。」

ペンギンが顎に手を当てて呟く。

「そうなんだ。だから一旦みんなでゾウに向かって、ゾウで待つメンバーとキャプテンを探しに行くメンバーに別れるのはどうかな?」

ベポの提案に、賛成!との声があちこちから上がった。

湧き上がる皆の視線を避けるように、シャチは微笑んでしとどに濡れたバスタオルの前に立った。

そして……

蠢く幼虫を数匹つまみ上げて

口に含み、舌で軽く転がし、飲み下した。

「うぇえあっっっっま!?!?キャプテンまさか糖尿…???」

「は……?シャチお前何…を……??」

「何ってそりゃイッカク、検体の確保と治験用の患者の用意がいるでしょ。」

そう言ってシャチはイタズラが成功した子どものように笑って見せた。

「えっ…だからって、だからって何飲んで「退いてろ」」

焦るイッカクを青ざめたペンギンが押しのけて前に出た。

次の瞬間

ドボンッ!!!

「う゛っ…んぅ゛う゛っ……んぐっ……」

ペンギンの武装色を纏った拳が、シャチの胃の真正面に綺麗にめり込んだ。

「っう゛ぇ……ペン……手荒…っは…っ……吐かっ……ねぇよ?」

シャチは辛うじて吐き戻しだけは歯を食いしばって堪えたものの、堪らず床に腹を抱えて倒れ込んだ。

「シャチお前自分が何したか分かって「っへっ…分かってる…。だからペンギンは、ペンギンにしか出来ないことし…て……。」」

シャチはそう言い切ると意識を失った。

シャチを壁に凭れさせて、ペンギンは帽子を目深に被り直す。

「……今後の方針について提案させてくれ。

まず操舵手と航海士は船をゾウへ向けて進める。

次に少しでも医療の知識のあるものは集合して寄生虫の治療法を模索して欲しい。その他のメンバーはそれぞれのサポートに当たってくれ。シャチには船長室に隔離しつつ、可能であれば船長室になにか資料がないか探すようにおれから話す。」

「「アイアイ!!!」」

提案の形を取ったペンギンからの指示に、全員が一斉に動き始めた。

◇◆◇

その日の深夜、防護服を着たペンギンはシャチのいる船長室を尋ねた。

「…シャチ、起きてるか?」

「はぁい、ど〜ぞ〜」

随分と呑気な返事があったことを確かめてから、ペンギンは船長室のドアを開き、素早く中に入り扉を閉めた。

「よっ。」

シャチは普段と変わらぬ顔でへらりと笑って見せた。

ペンギンは片付けられたベッドに腰掛けるシャチの隣にそっと腰掛けた。

「……殴って悪かった。」

「気にしてねぇよ、オレが同じ立場でもそうするし。ん、そうだ。キャプテンの部屋一通り見てみたらあったぜ。」

シャチはハードカバーに見える書籍をペンギンに手渡した。

「さすシャチ。助かる。」

タイトルのないその手帳は2年前の出来事から記録されていた。

日々の出来事を綴った日記が大半であったが、所々に寄生虫の症状がまとめられていた。


『2/29 自室にて読書中に左手の痙攣を自覚した。念の為オペオペの能力で全身をスキャンしてみたところ、左手首から肘まで、両足の膝から下、脊椎の一部が虫のような未知の生命体に侵食・置換されている様だった。

なお、メスでの摘出を試みたところ

アイツらにバレてなきゃいいが……

脳がスパークするような感覚と性的快楽と共に射精及び失禁を伴い気絶した。脳機能の一部を乗っ取られている?

一旦経過を観察することにする。』


『3/7 今日、数日ぶりに全身を再度スキャンした。結果、信じ難いが体内の寄生虫は増加していた。また、情けない話だが性的欲求が少々増加しているように感じる。どういう事だ…。』


『3/31 性的欲求の更なる増加と共に、自慰行為を行った際精液に虫卵のようなものが混じり始めた。出てきたものをスキャンしてみた所、極微量の珀鉛が検出された。』


『7/15 スキャンを行った。蛹のようなものが…(何か書いた上から塗りつぶした跡がある。)』


『9/20 少しづつだが、精神的に麻痺しているのか何なのか…。精神的におかしくなっているらしく何度オナニーしても収まらない。量も馬鹿のように出る。訳が分からない…。』


『9/21 性衝動を無視して行動できないか試した結果、他人と一定時間同室にいると飢餓感に襲われるようだ。イッカクに何かする前に船長室に戻れたことは本当に幸いだった。何を考えているんだおれは。このままでは恐らく、おれはおれの自我を保てなくなる。あいつらに危害を加える可能性すらある。その前に落とし前をつけて、あの人の本懐を遂げなければ。』


『9/22 ベポに計画に必要な地図を依頼したところ、一両日中に仕上げてくれた。本当に助かる。更にゾウを利用させてもらう話もさせて貰った。もう心配は要らない。利用してしまってごめんな。』


『9/24 意識を保つのが難しくなってきた。完全におれが消える前にここを離れなければ。ペンギン、シャチ、ベポ……ごめん。』


読み終えた時、ペンギンの背中は冷たい汗でじっとりと濡れていた。

「嘘…だろ…こんなに前からキャプテンは独りで戦って……おれたち誰も気づきもしてねぇなんて……」

「だからこそ、これからおれたちが助けに行かないとだな。」

そう言ったシャチの声は、かすかに震えていた。

「シャチ……」

「でーさ、ペンさん。おれが自分から寄生虫飲み込んだって事、もしもの時はキャプテンに隠さないでね。」

「……馬鹿シャチ。クソバカシャチ。お前が死んだら、おれはお前とおんなじ死に方してやる。同じだけ苦しみ抜いて死んでやるからな。」

ペンギンはシャチの手を祈るように握りしめた。

そしてそのまま、2人は落ちるように眠った。


翌早朝、寝落ちしたペンギンとシャチが目を覚ますとまだ夜明け前であった。

「ペンギン…流石にその格好のままは体壊すから…」

「おう…へやでかみんとってくる…」

「そうして…」

ペンギンは寝ぼけ眼のシャチに見送られて船長室を出た。

そして防護服の処理等を行い自分の寝床で仮眠を取った。

その後しばらくして再度目覚め、向かった食堂で声をかけてきたのはイッカクであった。

「ペンギン…おはよ。」

「おはよ。昨日は悪かった。」

「ううん、気にしてない。」

そう言うイッカクの顔色はどこか優れず、眠気を引きずっていた。

「…眠れなかったのか?」

「うん。だからベポに付き合ってもらってここで寝酒してたの。そしたらさ…ベポの手を握らせてもらった辺りで急に寝ちゃったみたいで変な夢見たんだ。」

食器がカチャカチャと音を立てる。

「どんな夢よ。」

「それがさぁ…誰かと手ぇ繋いで、真っ暗な道を必死で歩いてんの。後ろからは複数人の足音がしててさ。

しかもなんでかわかんないんだけど…なんとなーく手を離すのは不味いなって感じがすんの。んでそのまま暗がりをずーっと歩くんだけど、手を繋いでる相手に手を振りほどかれそうになりながら必死で出口まで歩ききったとこで目が覚めた…。しかもベポも全くおんなじ夢見たって言うし。」

ペンギンの顔色が青ざめていく。

「マジか…おれもシャチと寝落ちしてそっくりな夢見たわ……。」

「ウッソ…。」

「こっちはなんつうかもっと鮮明だった。基本流れは一緒なんだが、ガキのおれとシャチ2人でキャプテンの手握ってたり、道が雪道だったり…細部に違いはあったけど。」

「えっ怖……。」

2人は無言で食事を終えた。

食後にペンギンは、再びシャチの部屋を訪れた。片手には朝食のトレーを抱えている。

「シャチ…起きてるか?朝飯持ってきたぞ。」

「ペンちゃん…?どうぞ〜」

眠た気な声に迎えられてドアを開く。

「お、朝飯じゃん助かる〜……。いやぁ、昨晩はやべー夢見たわ……。」

聞けばシャチが見たのもペンギンと全く同じ夢で、ペンギンは目眩がした。

彼らを載せた潜水艦は、ゾウへ進路を向けたばかり。

奇妙な出来事はまだまだ続くのであった。

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