(ネスと凛が初めて闇オークションに連れ去られてしまったので、あいつら自力では出て来られんだろうし助けに行くか〜する2人の臨戦準備シーン。いつかネスと凛の視点も書く)

(ネスと凛が初めて闇オークションに連れ去られてしまったので、あいつら自力では出て来られんだろうし助けに行くか〜する2人の臨戦準備シーン。いつかネスと凛の視点も書く)


どこかの王侯貴族の屋敷にでもありそうな調度品の数々。

 本物のダイヤモンドの使われたシャンデリアや精妙な硝子細工のような螺旋階段、天然の水晶を削り出して作った大きな燭台や宝石の散りばめられた額縁に納まる時価数億の名画……。

 やりすぎなくらい豪華で綺羅綺羅しいもので満たされたこの洋館は、かつて冴とカイザーを第一夫人として娶り、その日の夜には夫から犬に転落した大富豪の『別荘』だ。

 金を湯水以上に消費してなお余りあるあの元夫現犬は、行ったこともない国にまでわざわざ召使いの常在する別荘をいくつも抱え込んでいる。急遽その内の1つを2人は電話一本で借りつけた。


「まさか俺達じゃなくアイツらが誘拐されるなんてな。流石に迎えに行ってやらねぇと、闇オークションから自力で帰還はアイツらにはキツイぞ」


 玄関ホールにずらりと並んで頭を下げる男女の使用人ら。その間をカツカツと靴音を鳴らして足早に抜けながら、冴はやや焦った様子で手荷物を執事に預け普段着のジャケットを脱いだ。

 これから闇オークションの会場に乗り込むにあたり、急いでドレスコードに相応しい正装に着替えなくてはならない。暗黒金持ちどもは気取るのが大好きだから、いちいち白だの赤だのテーマカラーを決めてそれに見合った格好をしていなければ会場に客を入れないのだ。他は他で別のルールがあるが、少なくとも今回ネスと凛が出品される闇オークションの主催陣はそうした気質を持つ。故に衣装の算段を付けるべく元夫のツテを頼り、紹介されたここまでタクシーで乗り付けた。


「ああ。お前と2人ならともかく、1人でってのは今の俺でも相手によっちゃ難しい。まずネスにもお前の弟にも無理だろうな」


 カイザーも道々でシャツのボタンを外しズボンのベルトを緩め、ドレッシングルームに到着するなりすぐ着替えを始められる状態で冷や汗を滲ませている。

 いつも闇オークション会場リターンズやらサードやらフォースやらに見舞われても平気なのは、自分たちにはシャバに舞い戻れるだけの実力と実績があると身をもって知っているから。

 だがカイザーの魔術師にも冴の弟にもそれらは無いのだ。

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