ナミの裁縫箱

ナミの裁縫箱

一応CP注意 ルフィとナミ



姉弟以上の距離感だけど恋人ではない、膝枕やあーんはするけどキスはしない感じの2人が好きだ

「麦わら帽子を直すのはナミ/私」が一味内でも暗黙の了解になっていて、補修作業中のルフィとナミにはなるだけ話しかけないようにしてたら非常に気ぶれる

修繕担当はもちろんナミ、でもナミの裁縫道具を女子部屋から持ってくるのはルフィだったら良いな。女子部屋のことは全く分からないけど、ナミの裁縫箱は棚にしまってあること・その段数までしっかり覚えてたらイイ...いい......

「ここと...ここもね」

激しい戦闘の末、主人と同様に傷ついた麦わら帽子を指先で労わりながら、ナミは独りごちた。

端正な横顔を複数の魚影が横切っていく。ここはサウザンドサニー号内部、アクアリウムバー。普段はロビンやブルック、フランキーなどがワインを嗜みながら談笑するこの場所だが、今はナミと──ルフィ二人分の息づかいしか確認できない。

「ルフィ」

凛とした声に呼ばれ、ルフィの意識が水槽からナミへと移る。彼女はソファーの上で長い足を組みながら、ルフィ本人には一瞥もくれず、ちょいちょいと手招きしていた。

ぞんざいな扱いだが、手元の麦わら帽子に注ぐ真剣な眼差しを見れば、多くの人間が粗末な考えだったと改めるだろう。

ガラスに付いた二つの手形をさっと拭い、ルフィはナミのすぐ隣に腰を下ろした。草履を履き捨てて胡座をかく。その中心には少し古びた裁縫箱がすっぽりと収まっている。ナミのものだ。

特に会話もせず、裁縫箱をナミへ手渡せば、二人っきりの修繕作業の始まりだった。


糸と泡の音、扉の向こうから聞こえる仲間たちの笑い声、優しいみかんの香り──

ルフィはこのひと時が好きだ。なんだかとても“帰ってきた”って感じがする。だから好き。

特別大きな魚影が二人の体を飲み込む。大方ウソップたちが釣ったのだろう、今日の晩飯はあれか、という思考は隅に追いやって、ルフィはナミの手に注目した。

自分より一回り小さい拳に、いくつかの生傷が痛々しく主張している。指先もささくれ立って、爪なんか割れている箇所もある。

傷だらけの手で糸を手繰り寄せ、夢への道標を整えるのは、ひとえに彼女の船長──ルフィを信じているからだ。海賊王になるのはこの男だと、彼しかいないと疑いもしない。ゆえにナミの手は迷いがない。

ぱちん、と糸を断つ音がやけに響いた。一拍遅れて、喧騒がまるで蘇ったかのようにルフィの鼓膜を打つ。どうやら随分と集中していたようだった。

「ん〜!」

ナミが大きく両腕を伸ばす。そのまま手を組んで左右に上体を軽く傾けると、いそいそと裁縫道具を直し始めた。でも、最後の仕上げがまだ残っている。

ナミは立ち上がり、ルフィは座ったまま。彼女が麦わら帽子を手に取ったのが分かると、彼はそっと真っ黒な頭を差し出す。

「はい、船長」

「おう」

帽子の天井に手を添え、“麦わらのルフィ”は快活に笑った。


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