ナギナギ継承√の兄弟喧嘩の一幕
・雰囲気暗め
・書きたいところだけ書いたので短い
・弟君のメンタルがほんのり病んでる
・
・
・
・
【ぼく自身に、コラさんの命と引き換えに助けられるほどの価値があったのか未だに分からない】
【ぼくはいつも兄さまに頼りっぱなしで、泣いて後をついていくしかできなくて】
【何もろくにできない、ずっと守られてばかりの役立たずだ】
ルカが本音としてノートに綴ったのは、根深い自己否定だった。
【コラさんの犠牲が無駄じゃなかったって思いたくて、色々なこと頑張ってぼくの価値を見つけてみようとしたけれど、それでも分からなくて】
【ナギナギの実を食べたあと、能力を使ってみたときに兄さまが懐かしそうにしてたのを見て思ったんだ】
【兄さまは、コラさんが大好きだから】
【もしもぼくがコラさんの代わりになれたら、なにか価値が生まれるのかもしれないって】
【もっとコラさんに近づけたら、必要とされる人になれるのかなって】
【ダメなぼくなんかじゃ、なくなれば良いんだって】
「やめろッ!!!」
鋭い声と共に、ルカの手からノートと鉛筆が弾かれた。その衝撃でルカが顔を上げると、右手を振り抜いた姿勢のまま肩で息をしている兄が、怒りとも悲しみともつかない表情でルカを見つめていた。
呆然とルカが立ち尽くしていると、ローは痺れを切らしたように弟の胸ぐらを思いきり掴んで、その身体を強く引き寄せた。額がくっつきそうになる至近距離で、怒りを滲ませた金色の双眸が虚ろな両目をしっかりと捉える。
「……ッいい加減にしろ、ルカ!!兄さまの言うことを聞け!!!」
「いいか!?お前はコラさんの代わりにはなれないし……おれがお前をコラさんの代わりにするつもりもねェ!!!」
「おれは、おれは……ッ!他でもねぇお前が必要で!!大切で!!大好きなんだよッ!!“ルカ”!!!」
その言葉に、ルカは目を大きく見開く。ぱち、ぱち……と何度かまばたきを繰り返してから、どこか遠くを見つめていた視線がようやく目の前の兄と交わった。
すると、たちまち大きな瞳が潤みだした。涙の雫がぽろぽろと溢れ出す。
兄が自分の胸ぐらを掴んでいる手とは反対の空いた左手に、ルカはそっと手を伸ばした。一度だけきゅっと握りしめてから、自分より少しだけ大きな手の甲を指でなぞって問いかけた。
【ぼくでいいの?】
「ッ……お前“で”いいんじゃなくて、お前“が”いいんだよ、バカ野郎……」