ドレスローザ(ルフィ行方不明)
「それにしてもウタ様?あれは本当にゴムゴムの実、何だべか?ルフィ大先輩の死亡はまだ確認されてないって話だべ?」
「…私も子供の頃に一度見ただけだけど、仮に本物の可能性が少しでもあるなら誰にも渡したくない…。でも…」
そう言うとウタは倒れているベラミーに視線を送り、外の事を思い出す。
「仲間の命には代えられない!」
「んだば、おれに任せてけろ!おれァ元々優勝したらあの大切なルフィ大先輩の形見さ!あんたに届けるつもりだったんだべ!」
「え?そうなの?」
「もつろんだ!あんたが持つべきだ!ゴムゴムの実は必ずおれが手に入れるから!あんたは安心して外に出てくんろ!!」
「トサカくん!!ありがとう!!」
何故か自分の方を全く見ないバルトロメオをおかしく思いながらも、その提案を嬉しく受け取るウタ。
コツコツコツ…と、そんな二人に遠くから男の足音が徐々に近づいてくる。
「ゴムゴムの実は、お前には渡さねェぞ。"歌姫"ウタ」
足音の正体であるシルクハットの男が、そう声をかけながら近づいてくる。不審な表情を浮かべるウタに対し近くにいたバルトロメオが、その男へと向かっていく。
「んだてめェ!何もんだァ!?ウタ様に気安く声ェかけやがってェ!あのお方は、かの伝説の男"蒼翼"モンキー・D・ルフィ様の弟子、そして"火拳"のエース様の妹にして!未来の『海賊王』であらせられるんだっぺ!このバカ」
「…そんなこと昔から知ってる」
「わっ!」
バルトロメオがふいに押され、ガシャンという音を立て倒れる。
男がウタの前まで行くと、被っていたシルクハットを外し顔を見せる。
「何?あなた、だ…れ……」
「久しぶりだな」
「え…え……」
「ウタ!」
「えェ~~~!!」
ウタは驚愕の声をあげた後、大泣きしながら男に抱き着いた。
「サボォ~~~!!!!」
「うぶっ」
「い゛ぎでだ!ザボォなんで!!」
顔を抱えるように抱きついてきたウタにより呼吸ができなくなったサボは必死にもがく。強引に顔をずらし、ようやく息継ぎをし泣いている妹に微笑む。
「ありがとな!ウタ。生きててくれて嬉しい!!」
「でも゛サボ!!ル゛フィが…ル゛フィが…」
「―――ああ…!兄ちゃんは死んだ…!けどお前たちは生き延びてくれた。おれは何も出来ずに兄妹全員を失うところだった。生きててくれてありがとう…ウタ!!」
サボは抱きついていたウタを優しい手つきで床へと下す。そして覚悟を決めた顔で、
「ゴムゴムの実は、俺が食っていいか?」
その発言に、ウタは涙をふくこともなく顔を上下に激しく動かす。
「う゛ん!!それがいい!!」
そんな妹をサボは愛おしく見つめ、頭を撫でる。短い時間だがウタが泣き止むまで待つとサボは先をうながす。
「お前は友達を助けに行くんだろ?」
「うん…」
「こっちはおれに任せろ!行ってこい!」
そう言われ外へと移動するウタ。名残惜しそうにチラチラと振り返る妹の背中を、サボは目を細めて眺め続けた。
——————
「ウタ様のお兄様?ウタ様の代わりに試合に出ると言ってもどうするべ?」
事態をじっと見ていたバルトロメオが近付いてきて恐る恐る訊ねる。
「どうって、あいつが被っていた仮面を俺が被ってルーシーとして出るんだが?胸は詰め物でもすれば大丈夫だろ?」
「そのガタイでウタ様の華奢な体はさすがに無理があんべ!?絶対にバレるべ!!」
騒いでいるバルトロメオを静かに見ているサボは、ふっ、と余裕の笑みを浮かべる。
「大丈夫だ!おれはあいつの兄貴だからな!」
「うォォォ!!全く根拠がなさそうだけんど、すんげェ自信だべ!!不安がってるおれァ恥ずかしくなってきたべ!!なんだかバレなさそうな気がしてきたべ!!!!」
「よし!行こうぜマリンコロッセオ}
「バルトロメオっすよ!!」
end