デーモン・テイマー×Evil★Twin リィラ

デーモン・テイマー×Evil★Twin リィラ


 頭がガンガンする。

 昨日飲みすぎたかな、なんてことを考えながら目を開くと、そこは私の部屋じゃなかった。

 ひんやりとした石造りの部屋。四方の壁に掛かった蝋燭だけが頼りない光を放っていて、多分中央にいる私のところはその光も微かにしか届かない。

「……キル? いないの?」

 呟いて、歩き出そうとして。

 そこで初めて、自分が腕を拘束されて宙づりになっていることに気づいた。

 ギリギリ足がつく程度の高さから吊り下げられて、足元に踏み台になる様なものもない。

 しかも衣服はすべて脱がされて、私のナイスばでーがあらわになっている。

 そして、当然のように呼び声に答える者もいなかった。

 周囲を見回してみても、まったく見覚えがない。酔っぱらって入り込んだにしては、拘束されているというのは奇妙だし、そもそも普段過ごしている所にこんな場所はない。

 古臭くて、湿っていて、路地裏の後ろ暗い雰囲気を何倍にもしたような、電子の世界でしか見たことのないような場所は。

 そう思っていると。

「あら、目が覚めたのね」

「……誰?」

 何処からか姿を現したのは、きわどいボンデージ衣装を纏った青髪の女性だった。

 谷間にへそ出し、手足のグローブ。片手に持った鞭。……その手のお店の人だろうか。

 この人は見たことがない。配信なんかで共演した相手でもなさそうだ。

「私はデーモン・テイマー。貴女を黙らせろって、貴女達がオイタしたクライアントからの依頼なの。だから、あなたには相方ちゃんを誘い出す餌兼ペットになってもらうわね」

「ふーん。いいからこれ外してくれない? 肩が痛いんだけど」

「あら、随分ツンケンしてるわね。そういうのはお嫌い?」

「知らない相手に拘束されてたら、誰だってイヤでしょ」

「まあそうよね、ふふ」

 何が面白いのか、くすくすと笑いだすデーモン・テイマー。……ほんとになんなんだ、この人。

 大して強くもなさそうだけど、この腕を拘束している鎖が厄介だ。

 たしか、デモンズチェーンだっけ。拘束した相手の力と術を削ぎ落とす道具。これのせいで私は何の抵抗も出来なくなってる。

 とはいえ、この相手に負けるとは思えないし。そのうちキルが気づくでしょ。私の信号を辿って探し当てるはず。

「じゃあ、嫌じゃなくなるまで躾けてあげるわね——ふっ!」

「いッ……つ……!?

 彼女が鞭を振り下ろす。

 あまりに唐突で、気構えも出来ずに鞭を受けてしまった私は、遅れてやってきた焼けるような痛みに息を詰まらせて……。

 同時に打たれた場所に広がる確かな快感に、混乱していた……

「ぁ、な、にが……?

「ふふふ……。私は、相手が悪魔かどうか見ればわかるの。そして敵意を持つ悪魔に鞭を振るえば……ほらっ!」

 ッパァン!と空気の破裂する音。

 皮膚にはっきり赤い筋が浮かび上がり……、

「ぁ、ああああぁぁっ♡♡♡

 今度は、はっきり感じた。

 痛みと快感が、同時に襲ってくる感覚。鞭で打たれるなんて、絶対に痛みで叫ぶようなことをされているのに。

 同時にやってくる快感のせいで、その痛みも快感の一部として頭に刷り込まれるような、頭のおかしくなりそうな感覚が私を襲う。

「敵意は快楽に、快楽は忠誠と依存に……♡ 悪魔は私に屈服し、私に飼ってほしい、打ってほしいと縋り付くようになる……

 その言葉に、私は自分がそうなった姿を幻視してしまった。

 全裸に鞭の痕だらけの体で、彼女の足元に縋り付いて、打ってもらうことを希う自分の姿を。

「そ、そんなこと、あるわけないでしょ……。キルが来たら、絶対叩きのめしてあげるから……」

「ふぅん……。まあ、せいぜい頑張って抵抗してみなさい♡ なんでデーモン・テイマーなんて呼ばれているのか、骨の髄まで教え込んであげるから……♡」


 それから、目の前の女は私のことをひたすら鞭でぶち続けた。

「ささやかなお胸をしてるのね。知ってる? 胸は小さい方が感度がいいのよ」

「ぁ、っそ……」

「敵意を持てばその分快感が増える、でも敵意を持たずにはいられない……。欲求に素直な悪魔らしいわねぇ。で、もぉ……ほらっ

「んひぃぃぃっ♡♡ ち、ちくびっ♡ やめぇぇっ!!♡♡

 あるときは、私の乳首を執拗に狙って鞭を振るった。

「ほら、ほらっ♡ ねぇリィラちゃん、もう乳首こんなに腫れちゃってるわねぇ……♡ 可愛そう、慰めてあげる……、れろぉ

「ふぉ、ぉ、ぉっ♡♡ だめっ♡ ちくび、なめちゃだめっ♡ ぁ、いく、イっ、~~~ッ♡♡

 舐めしゃぶられて、弾かれて、無様に腰をカクつかせて絶頂する。

 散々打たれて刺激に弱くされまくった私の乳首は、テイマーが弄れば簡単に絶頂するお手軽アクメスイッチに変えられた。


「お尻、ぷりっとしててかわいい♡ むしゃぶりつきたくなっちゃう

「ふぐっ!♡ 鞭で打ちなが、らぁっ♡ いう、なっ♡♡

「あらごめんなさい でもお尻を鞭で打たれるの……気持ちいいでしょう?♡ 家畜みたいで、ねっ

「ふぎゃああっ!!♡♡ ぉ、おおっ♡♡

 ぷしっ、ぷしっ、とがに股になった私が潮を吹く。

 もう打たれつくして真っ赤に腫れあがったお尻を、テイマーの鞭が引っ叩くたび、快感がお尻から下半身全体を揺らして、まンこが勝手に反応してしまう。

 素手で叩かれて、痛みしか感じないはずの時でも、同じように反応するように仕込まれた。


「お腹を打たれるのも気持ちいいわよね、その奥がぶるぶる、ぶるぶる~って震えてるの、知ってるもの

「べ、べつに……♡ 気持ちよくなってなんか、な、ひきゅっ♡♡

「嘘はだぁめ♡ 子宮のところ鞭で打たれて気持ちよぉ~くなってる、ヘ・ン・タ・イ・さん

「ち、が、あ、あ♡ あああっ♡ 打たないで♡ やだっ♡ それやだっ♡ 変になる!! おかしくな、っぢ、ぁ~~~~っ♡♡♡

「おかしくなるまで続けるんだもの、早くおかしくなって リィラちゃん

 白目を剥きかけながら、獣みたいに吠える。

 腹の辺りをひたすら鞭で打たれて、その奥の子宮が揺れる。

 そのたびに、無理やり引きずり出された快感が逃げ場を失って爆発して、頭がおかしくなるような気持ち良さに吐きそうになる。

 怖いのは、これに慣れてきていること。

 快感が、快感じゃなくなってきていること。

 痛いはずなのに。痛みが快感とすり替わってきていること。

 たすけて、たすけてキル。わたし、壊される。


「はーっ……。はーっ……。もう、やめで……」

「もう、結構頑固なのねリィラちゃんって。さすが裏世界のエージェントってところかしら」

 何時間、何日? どれくらい経ったのかわからない。

 テイマーが休憩と称して、一度どこかへ消えた時以外、時間が経過したと判断できる素材がなかった。

 多分、一週間は過ぎていないけど、それだって正確じゃない。

 できれば数日は経っていてほしい。それならキルが私の痕跡を辿ってきてくれるはず。きっともうすぐ、助けも来ると希望が持てる。

「キルが、もうすぐくる……。にげたほうが、いいよ……」

「え? まだ一日しかたっていないのに、凄いのねキスキルちゃんって」

「……は? いち、にち?」

 テイマーの言葉に、薄れがちだった思考が消える。

 何を、言っているのかわからない。

 ポカンとした私がおかしいのか、にこりと笑って。

「ちょっと薬を使って、貴女の体感時間を引き延ばしているの。感じれば感じるほど、その快感をなが~く味わえるように♡ ……もしかして、もっと経っていると思ったの?」

「え、あ、え? いちにち、いちにち、って、え」

「ふふ、あっははははは! ごめんねえ、最初に言っておいてあげればよかったわね♡ もしかして、その可能性を信じて我慢していたのかしら。それなら可哀そうなことをしちゃったわね……」

 わけがわからない。

 たった一日なわけがない、あんなにたくさん、気持ちよくされたのに。

 あれが、一日で起きたことなんて。私の体が、一日で、壊されて、そんなこと。

 信じたくない。信じられない。いやだ、いやだ、と首を横に振っていると、テイマーがあるものを私に見せてきた。

 私の、スマホ。

「ほら、これで信じてくれるかしら? まだ、一日しか経っていないって……

「あ、や、あ……」

 涙があふれる。

 助けが来ると、思っていたから。これだけ時間が経ったはずだと、思っていたから。

 一人でも耐え抜くつもりだったけど、でも。無意識に頼っていた相手が、まだ絶対に来られないと知らしめられて。

 喉がひきつって、勝手に嗚咽が漏れる。

「じゃあ、ダメ押しもしておこうかしら。こうして……」

 テイマーが私に見えるように、文字を打ち込む。時間は、ちょうど朝方だった。

 連絡が取れなくなって、丸一日。酔いつぶれて連絡が取れないときは時々あったから、まだ怪しむ時間じゃない。

 そんなときに、私のスマホから連絡が来たら。

『飲み過ぎた。今日は一日ホテルで寝てる』

「あ、だ、だめ、やめ」

「はい、送信」

 気づかない。いつも私が送る様な文面で、会えない理由を送られた。

 キルは、きっと気づけない。怪しむ理由がないから。助けを求めるためのサインが、何も出ていないから。

「じゃ、続きしましょうね……

「ひっ」

 喉奥から押し殺した悲鳴が漏れる。

 心が、折れる音がした。


「あははは! ほらいっちに、いっちに

「へっ へっ♡ へっ へっ

 鞭の先端がクリトリスを掠るのと同時に、腰を前に突き出す。

 ご主人様の合図で腰を動かすたび、焼けるような痛みがクリをずたずたにして。

 それが、気が狂うほど気持ちいい。

「自分でクリちゃん虐待するの気持ちいいでちゅかぁ~

「はぁーい♡♡ ご主人様ぁ

「あはは 随分素直になって、私も嬉しいわー はいご褒美ッ!」

「ほぎょッ☆☆ おひっ ぉ、まんこ まンこにむぢィ♡♡

 がに股で無防備に晒されたまンこに、ご主人様の鞭が叩きつけられる。

 絶叫するような痛みも、もう快感にしかならない。そうなるように、体を壊していただいたから。

 もう手を縛る鎖もなくなった。そんなものがなくても、ご主人様に歯向かうだなんて考えることもできない。

 気持ちいい。ご主人様に向ける敵意はなくなって、打たれたときに快感に変わるものが失われたから、ただ痛いだけのはずなのに。

 その痛みが、もう快感でしかない。

「そうそう、素直になれたリィラちゃんに、一つお願いがあるの」

「はひっ♡ なんでしょうか、ご主人様

「うん、キスキルちゃんを誘い出して罠にハメる、お手伝い

 にやにやと、私を明らかに見下した笑みを浮かべて。

 四つん這いになった私の背に乗って、とん、とん、と踵で私のお腹を蹴りつけながら、ご主人様が言った。

 別に断ってもいいわよ? と言ったご主人様が、ぺちぺちと私の腫れた尻を叩きながら答えを求めている。


 その『お願い』を、私は——





「おはよー」

「おはよ。昨日ほんとにずっと寝てたの? 飲み過ぎでしょ」

「んー……。はかどった」

「なにがよ……。って、何そのチョーカー、高そう」

「いいでしょ、友達に貰った」

「へー」


「それでさ、キル。その友達に、キルを紹介したいんだけど……


 金色のチョーカー、ご主人様の服と同じ色のそれをなぞりながら。

 キルが私のように無様に壊れる姿を想像して、私の心はご主人様に従える喜びに満ちていた。

 ごめんね、キル……

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