デービーバックファイトの一幕

デービーバックファイトの一幕



フォクシー海賊団から挑まれたデービーバックファイト、今はその競技3種のどれに誰が出るかを皆で輪になって相談中だ。

競技は3種類、最後のタイマンはもちろんルフィとして、残りの2種をどう分けるか、相談がそこに移った時だった。

 

「おい!!割れ頭!ルールで聞きてえことがあんだけど!」

「割れ頭て……なんだあ!言ってみろ!」

 

突然ルフィが輪から離れたかと思えば声を張り上げて遠くにいたフォクシーこと割れ頭にルールの質問を始めた。

そういう質問は大体ナミ達頭脳担当がすると思っていたからルフィがし出すのは意外だ。

 

「ウタはおれ達の一味じゃねえんだ!参加させていいのか!?」

「え…?」

 

ただその質問が余りにも予想外だったので思わず声が漏れてしまった。

 

「なんじゃそりゃ!?お前らずいぶん複雑なご関係で——それなら参加資格は無いわな!ゆっくり観戦を楽しんでいけ!」

「分かった!教えてくれてありがとう割れ頭!」

「だから割れ頭て…」

 

割れ頭が何やら地面に頭を沈めた後、ルフィは「だってよウター」などと言いながら戻ってくる。

そこへサンジがズカズカと足音を立てて近寄りルフィの頬をグイッと伸ばした。

ゴムだからよく伸びる。

 

「何すんだよサンジ!?」

「うるせェ!ウタちゃんが一味じゃないってどういうことだゴラァ!」

「そうだよルフィ!それに私、参加できなくなっちゃったよ!?」

「だってよ!ウタは“赤髪海賊団の音楽家”じゃねえか!」

 

——そうだった。

ずっと一緒に冒険して、色んな戦いを皆と一緒に乗り越えてきて、どこかで私も麦わらの一味の一員の気分になっていた。

でも…

『いつかシャンクス達の船に追いつくために!』

フーシャ村を出航した時、確かにそう言った。

そうだ、ルフィの言う通り私は“麦わらの一味”じゃない、“赤髪海賊団”だ。

 

「言っとくけどな!おれは一味じゃなくてもウタのことはちゃんと仲間だと思ってるぞ!」

「それは分かってるけどよ…」

「万が一負けてウタを奪われたら、赤髪海賊団の奴らにどう言い訳するつもりだアホコック」

「あァッ!?うるせえぞマリモ!…分かったよ」

「…そうだね。確かに私も参加しない方が良いと思う。ごめんね、ややこしいこと言っちゃって」

 

ルフィに続いて、ゾロまでフォローしてくれて、サンジも引き下がった。

確かに、ルフィやゾロの言っていることは間違ってない。

 

ルフィが私を仲間だと言ってくれてるのは本心からだ。

疑う余地は無い。

でも、いつか私をシャンクスの元に帰そうと思っているのもきっと本心なんだ。

 

「皆、ここはまずどのゲームに誰が出るか決めましょう」

 

ナミの一声で話題が戻る。正直助かった。

あまりこの話は続けたくなかった。

 

皆が再び誰かどのゲームに出るか話し合い始める。

私はそれを一歩下がって見ていた。

ナミやチョッパーが心配そうな目をこちらにチラリと向けてくれる。

大丈夫だ、と伝えるように軽く微笑んで返す。

 

この一味を、ルフィの傍を、いつかは離れないといけない。

ずっと前から決まっていたことを改めて突きつけられて、胸が少し締め付けられた。

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