デの字の裏話〜お題小説について〜

デの字の裏話〜お題小説について〜

デッドボール

 作品についての細々としたことはリア芸ニキへの返信で書いているので、今回は違うテーマで書かせてもらいます。


 テーマ『お題小説の書き方』


1 お題を募集するタイミングについて

 SSを描くのに一番必要なものは何か。

 それはモチベーション。

 モチベにも二種類ありまして、

 ひとつは「描かなきゃならない」という義務感。長編SSに取り組んでいるときはこっちがかなりの比重をしめています。

 もうひとつは、「描きたい! なんでもいいから描きたい!」という渇望感。

 長編SSに詰まり気味の時や、色々とストレスが溜まっている時、そして他の作者様が描いたSSを読んで嫉妬に狂った時によくこういう症状になります。

 お題を募集するときは大体後者の時ですね。

「描きてえ!でも手持ちにネタが無え!誰かネタをくれぇ!」

 ていう状態です。


2 お題からストーリーの作り方について

 お題の内容は意外なものばかりです。ほとんど予測がつかない。まぁ予測の範囲内ならそもそもお題もらう前に自分で描きますし。

 頂いたお題について(その質はともかく)記憶にある限り一つを除いてSSに仕上げさせてもらいました。まあお題を捻じ曲げたりしてかなり強引に書き上げたのも結構ありますが。

 なんでも描けると豪語する気はありませんが、少なくともSS風にでっちあげるテクニックみたいなものは自分なりにありますので、それを紹介したいと思います。

(1)予告編式妄想

 いわゆるプロット作りに該当する部分です。参考にするのは映画の予告編。

・導入:メインキャラの普段の日常、本筋と関係ない会話

・転調:日常の変化。イベントの始まり。

・主題:お題を象徴するシーン。

・余白:クライマックス直前のシーン

 独断と偏見ですけど、映画予告編ってだいたいこういう構成になってる気がします。これと似たような妄想してプロットを作っていきます。

 なおこの時真っ先に思い浮かぶのが「余白」のクライマックス直前シーン。次に「主題」「転調」というふうに逆算していくことが多いですね。「導入」と、そして言及のないラストシーン(オチ)についてはこの段階ではまだ確定させません。

(2)導入部の描き方について

 SSで一番難しいのがこの部分です。これ多分、みなさんも一緒じゃないかなぁ。

 私の場合、よく使う書き出しの定型みたいなのがいくつかあります。

・モノローグ導入

 一人称SSだとだいたいこれが最初の一文になります。特にのどか主役だと多い気がする。

「嘘って、なんだろう?」(君の嘘2)

「映画は独りぼっちでよく観てた」(友達の距離感)

 最初にメインキャラの心情を語らせることでキャラへの感情移入と舞台の紹介やテーマについて同時に描ける便利なやり方ですね。

・キャラの会話導入

 メインキャラ同士の掛け合いから入るやり方。聞き手役の問いかけやツッコミ等から始めると主題へ一気に切り込めます。

・リテイク方式

 導入がどうしても思い浮かばないときは、この方式をよく取ります。

 とりあえず適当に書いて、書いて、やっと本題に辿り着けたらそれをボツにして要約し直すやり方です。

 言葉で言ってもわかりにくいので実例を掲載します。

 紹介するのはあま拓SSの『妻になる日』。

 二人が既に夫婦でありつつも微妙な距離感であることをぼかしつつ、温泉旅行に無理やり繰り出される……という導入をどうやって描くかに苦労した覚えがあります。

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『妻になる日』(導入ボツ案)

 勤労感謝の日を含めた11月の連休。おいしーなタウンは相変わらず観光客で溢れ、客商売を生業にしている我が品田家も御多分に洩れず繁忙期を迎えていた。

 それがようやく過ぎて一息ついた頃、娘が、

「パパとママに大切な話があります」

 と、深刻な顔をして私たちを呼びつけた。

 そろそろ年頃を迎える娘からの相談だ。私たちは二人並んで居住まいを正して娘に向きあった。

 果たしてこの子は、何を言おうとしているのだろう。

 固唾を呑んで待ち受ける私たちに、娘は言った。

「今年もママのお誕生日会できなかったよ!! 何で!?」

 うむ、この子は何を言っているんだろう。ママ、ちょっと理解が追いつかないな。

 隣でパパが苦笑いを浮かべた。

「ごめんな。この時期はどうしても忙しくて」

「パパのお誕生日会だってまだやってない!!」

「いや、パパは別に良いよ」

「よくない! そもそも今日はパパとママの結婚記念日なんだよ!? 二人ともちゃんと覚えてる!?」

「「え!?」」

 二人揃って思わず顔を見合わせてしまった。

「そうなのか、パパ?」

「そういえば、お前の誕生日近くだった気がする」

「そういえばも何も、今日だって言ってるでしょーが、もぉ〜!!」

 娘がテーブルをバンバンと叩きながら声を張り上げた。なんという剣幕だろう。もしかして私たち、怒られている?

「パパ、ママ!」

「「はい」」

 身をすくめた私たちに、娘はタブレットを差し出した。

 その画面には温泉旅館の予約受付通知メールの文面。

 なんだこれは?

「明日から一泊二日で旅行してきて」

 ほんと何を言っているんだこの子は。

「店はどうするんだ!?」

「ばーばたちがやってくれるって。お願いしたら喜んで引き受けてくれた」

「ゲストハウスは!? 団体様の予約があっただろう!?」

「おとといキャンセルの連絡あったでしょ。忘れた?」

 そういえばそうだった。

 私の隣で、パパが呆れた声で言った。

「お前、そこまでして家族旅行に行きたかったのか?」

「あたし行かないよ? パパとママの二人だけで行くの」

 新婚旅行からやり直してきなさい。

 有無を言わさない娘の指示に、私たちは揃って頷くほかなかった。

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 我ながら導入が長い!!

 それにこれ以降は出てこない娘の存在感が強すぎるし、他の部分も説明し過ぎでテンポが悪い!

 書いている途中からずっとそんな思いでしたけど、とりあえずあま拓が旅館へ行くところまでは我慢して描き続けました。

 その上で、それを一旦全部カット。

 内容で必要なところのみを残して要約したのが、下記の完成版になります。


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『妻になる日』(完成版)

 勤労感謝の日を含めた11月の連休。おいしーなタウンは相変わらず観光客で溢れ、客商売を生業にしている我が品田家も御多分に洩れず繁忙期を迎えていた。

 それがようやく過ぎて一息ついた頃、娘から温泉旅館の予約チケットを押し付けられた。

「いくら忙しいからって、ママの誕生日と結婚記念日を忘れるなんてありえない。だからせめて二人きりで休んで欲しい。てか、行け」

 店はどうすると反論したら、なごみ亭は娘の祖母たちが任せてくれと太鼓判を押し、ゲストハウス福あんはなぜかこの二日間だけ都合よく予約が入っていなかった。

「さては外堀を埋められたか?」

 私のボヤキに隣を歩く彼が小さく笑った。

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導入はできるだけ短くシンプルに。これを心がけてます。出来てるかどうかは別として。


・開き直り方式

 メタを絡めたルール無視のやり方。

 先日のここ拓や、過去の「胸揉み選手権」や「ゴールデンウィークドラフト会議」、「犬のお散歩対決」のようなネタの場合、細かいことは無視していきなりイベントをぶっこむことが多いです。

 これ、鉄華団ニキやソクオッチニキがよくやる導入な気もします。


3 ラストの締め方(オチ)

 最初からオチを決めているパターンはほとんどないです。描きながら思いつく感じ。

 これは方法論とかがあるわけでないので、どうすればいいとかは言えないです。

 ただ参考にしていることはあります。

 それはゲッターロボの作者で有名な石川賢先生の作品の締め方。


 通称「俺たちの戦いはこれからだドワォ!!」オチ。


 先生の作品ぶっちゃけ打ち切りエンドみたいなオチばっかりなんですけど、一番盛り上がるところで風呂敷畳むどころか宇宙レベルに広げてそのままぶん投げる豪快なやり方ゆえに変な快感があるんですよね。

 先生の作品のお陰で、


「オチなんて綺麗に畳む必要はないんだ!? とりあえず終わればそれでいいんだ!?」


 ということを学びました。

 出来はともかく、作品を仕上げることが一番大事。そのためならオチはついていればそれでいい。それぐらいの開き直りで描いています。(ブラックvsブラッド最近書き進めてないなぁ……)


 長文失礼しました。

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