テロ,ライブ

テロ,ライブ


公安に入ってすぐ行われる、半年間の訓練プログラム。危険な仕事である反面、給料含めた待遇目当てに希望する者は多く、フミコとその同期達は全員、訓練施設内の会議室に集められた。

しばらくして、長身の男性が会議室に入ってくる。髪を金髪に染めた、老齢の人物。

「ひぃ、ふぅ、みぃ…」

静まり返った部屋の中で、集まっていたフミコ達を数える興味なさそうな表情を、まだ覚えている。

思わぬ手がかりを得たフミコは、勤務が終わったら一度訓練施設を訪ねてみることにした。


午後4時30分を回った。

多くの企業、官公庁はまだ勤務時間。中学や高校なら、終礼は済んだ時刻だろう。病院の待合室には診察を待つ患者が、商店では客の質問に答える店員がいる。

池袋と乙女ロードを有する豊島区、東京大学と東京ドームを有する文京区。2つの区域にいる正社員、フリーター、派遣社員、学生。

その一部は時間を確認すると持ち場を離れた。隠し持っていたマスクで顔を隠して、トイレやバックヤードから表に出ていく。早足で歩きながら左手の付け根を指で押すと、一斉に左腕を強く振った。

左前腕が血飛沫と共に裂け、中から蛇の様な物体が飛び出す。それは多いもので12枚の小さな刃が連なった、鞭と剣の機能を備えた武器。

彼あるいは彼女らは、付近にいた人々目がけて異形の武器を振るった。

スーパー、学校、オフィス、病院、駅…人が密集する場所で同時多発の殺戮が始まる。すぐに警察官が駆けつけるが、発砲前に警告を行う彼らは、躊躇なく凶器を振るう暴徒達の前に倒れていく。

公安にも応援要請が入り、出勤中の公安デビルハンター達も事態の収拾に向けて動く事となった。

「どんなに働いても生活は良くならない!何故だ!!」

「私達はー!要求する!!」

「社会保険料!!さ、げ、ろ!!」

マスクの暴徒達はそれぞれ、大声で要求を叫び始めた。聴衆の様子に構わず、"自分達に注目が集まっている事"を確信して、メッセージを発信する。

この事態を察知した戦争の悪魔は一瞬目を丸くした後、裂けそうなほど口の端を吊り上げた。

「フユはとりあえず無事みたい」

「キリヤも平気みてえだ。さっさと合流しようぜ」

同じ頃、都内にいた姫野夫妻は殺戮に耽る暴徒達から距離を取り、乗っている車内から子供達に連絡をとった。

「それなら、途中でキリヤと合流して、フユを拾って帰ろう。…デンジ君、行ってきていいよ」

ハンドルを握るリンゴは、デンジの落ち着かない様子を見て付け加えた。

「えっ」

「チェンソーマン、なりたいんでしょ?」

「けどよぉ…アイツらが…」

問われたデンジは迷っている。以前、マキマに妻子が死んだと聞かされた事が心に残っており、別行動を取るのが不安なのだ。

「こっちはパワーちゃんもいるし、なんとかなるから」

「マキマを凌ぐ最強の悪魔であるワシがついとるんじゃ!あの程度の雑魚なぞ、1000…10000くらいは問題にならん!」

血の悪魔パワーは車内に現れ、2人の会話に割って入る。

「だってさ」

リンゴが悪戯っぽく笑う。妻の笑顔を受けて、心臓に燃料が入った。デンジが自家用車から飛び出すと、リンゴも車を発進させて子供達の元へ向かう。

デンジをチェンソーマンにさせるのは、リンゴからするとデメリットしかない。敵を増やすばかりでいつでもやめてくれていいのだが、十数年前から変わらず自己表現の手段として捉えているらしかった。

(そういう人と子供作っちゃったのは私だもんな〜)

旦那様は頭のネジがぶっ飛んでいる。十数年連れ添うリンゴにも計り知れない一面があって、それがデビルハンターとして何よりの武器になるのだと、リンゴは経験から知っている。

デンジは人の少ない方へ走っていく。変身シーンを見られて正体がバレるなんてカッコ悪い。

相棒から心臓と力を貰い、子供が生まれ、やがて子供達は手が掛からない年齢になった。

(あれからすげぇ時間経ったよな)

1人と1匹の小屋暮らしから、ここまで来た。出会い、戦い、別れを経験して、少年は父親になった。この先どこまで進んでいけるのか、デンジにもまだわからない。

ーーヴヴン!!

デンジは胸のスターターロープを引いた。その姿が人間から、人外のそれに変わる。腕から生えて回転する鋸の刃、そして仮面のような顔から角の様に突き出た鋸の刃。

両手と脳天からチェンソーを生やし、悪魔どもを滅多斬り。何度殺されても蘇り、どんな敵でも最後は勝つ。正体不明のデンノコヒーロー、チェンソーマン!!

デンジはチェーンを伸ばして宙を滑空、左腕から伸びたブレードで殺戮を行う暴徒の前に姿を現すと、腕のチェンソーを豪快に振り下ろした。

「がああァあ!?」

「大人しくしろ!!暴れんじゃねえ!!…って、痛ってぇ!」

左腕を喪った暴徒が苦悶の叫びを上げる。近くにいた仲間達がデンジを取り囲み、腕の蛇腹剣で斬りかかるが、デンジは止まらない。

膝からチェーンを伸ばして暴徒達の足に引っかけて体勢を崩すと、次々と異形の左腕を切断していった。



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