チェンソーマンvs馬並みのアレ
チェンソーの怪物と化したデンジは人馬に跨るサンタクロースに斬りかかるが回避されてしまう。蹄による蹴りのカウンターを食らい、デンジは隣のビルの屋上に吹き飛ばされてしまった。
「いてえ…」
サンタクロースはセイシロウが見せた力に頬を緩ませる。闇の肉片を分けた事で一人が貰える力は弱まったはずだが、馬の機動力はそれを補ってくれている。
「喋ってんじゃ、ねえ!!」
わざわざ近寄ってご高説を垂れるサンタクロースに、デンジは襲い掛かる。跳躍と共に蹴りを放つが、人馬の突進により打点がずれて、サンタクロースに足を掴まれてしまう。
「さよなら」
地上に放り投げられたデンジに、人形の群れが殺到する。
「ヒイ〜!!」
人形の群れに袋叩きにされるデンジだったが、乱入してきた弓矢の化生の助けによって、危機を脱する事ができた。
「誰!?」
「ノコギリ男。アイツをぶっ殺すまで手を貸せ。
アイツ、私の女達を殺しやがった……」
弓矢の異形…変身したクァンシは新たにやってきた人形の群れをデンジに任せて、セイシロウに跨るサンタクロースの元に突撃する。
「貴女が来るのは想定外でした」
クァンシ達との距離を広げていたサンタクロースは、追いついてきた彼女に話しかける。
クァンシの両腕から放たれた矢のシャワーにセイシロウは即座に反応。物陰に回避して逃れる。
「最初のデビルハンターと言われた人間に会えて光栄です」
しかし、馬の機動力を問題にするクァンシではない。彼女は矢を放ちながら、明かりを壊しつつ逃げるサンタクロース達を追っていく。
「ちくちくします」
やがて2人はクァンシに捕捉され、高速で飛来する矢の軍勢に体を削られていく。サンタクロースは痛覚を他の人形と分散できるが、セイシロウは違う。限界を迎えた人馬は、サンタクロースを乗せたまま地面に崩れた。
一方その頃、デンジは一時的に正気を取り戻したサンタクロースの人形達から逃げ回っていた。身体を操られているとはいえ、相手は一般人だ。彼等を殺すのは躊躇われる。
「人殺し…」
逃げ道を塞ぐように現れた人形を、やむを得ずチェンソーで貫く。末期の一言に身体が固まり、再び人形達に四方から攻撃されたデンジを、クァンシが救った。
「人形が人のマネをしているだけだ。躊躇せず殺せ」
「なんで、んな事テメエがわかんだよ!!」
「そういう事で理解すれば殺せるだろ」
クァンシはサンタクロースの追跡を再開するが、彼女を見つける前に夜が来た。
「ふふふふふ。これが闇の力なのですね」
サンタクロースの姿が更に変貌する。
体表は暗色に染まり、下半身は馬のそれに変わっている。笑う彼女の唇は、血で濡れていた。クァンシがデンジの救援に向かった間に、セイシロウの体内の肉片を食べたのだ。
闇の力、馬の力をも手中にしたサンタクロースは凄まじい。デンジを一撃で吹き飛ばし、クァンシの放つ矢を容易に捌いていく。
「貴女が私を殺している間に、人形を作らせて貰いました」
人形となったロンとピンツイが、顔にツギハギのある愛人を人質に取っていた。
「こればっかりだな」
呆れた様子で呟いたクァンシはピンツイ人形の一撃を受け入れ、愛人の腕の刃で貫かれた。そのまま反撃する事なく、彼女はピンツイを抱きしめる。
クァンシの様子を把握したサンタクロースは彼女を人形にしようと試みるが、ガソリンを被ったデンジが邪魔に入った。
「これがア!!光の力だああああ!!」
闇の力を得たサンタクロースに、デンジは光の力で対抗する。軍配はデンジに上がったが、敵はサンタクロースだけではない。
復活したクァンシは、倒れたサンタクロースを挑発していたデンジの首を刎ねると、愛人のコスモに本気のハロウィンをサンタクロースに食らわせるよう命じた。
サンタクロースをハロウィンに沈めたクァンシだったが、その場にマキマが現れると武器を捨てて投降。生き残った愛人2人の助命を請うが、聞き入れられる事はなく、マキマによって3人同時に首を落とされた。
それから数日後、アキは天使の悪魔と共に海沿いを歩いていた。未来の悪魔が予知した自分とパワーの死を回避する方法について、マキマに相談する為だ。
銃の悪魔への復讐を望んでいた彼だったが、デンジ達と暮らすようになって、心境に変化があった。マキマに明かされた、銃の悪魔の現状も変化の原因の一つかも知れない。
「マキマさんはなんでこんな時に海にいるんだろうな」
「さあね…何も考えてないか、嫌〜な事考えてそうだよね」
天使の悪魔は「疲れた」と不平をいいながら、アキと一緒に歩く。
「…1つだけ、キミがチェンソー君に殺されない方法を知ってるよ」
「なんだ?」
「公安をやめて遥か遠くへ逃げるのさ」
天使の悪魔は無愛想だが、アキの身を案じているようだ。彼にデビルハンターを止めるよう勧めてくるが、アキにその意思がない事は、天使の悪魔にもわかっている。
「あ…キミ、マキマの事好きだろ?」
「まあな」
「なんで好きになったの?」
尋ねられたアキが歩きながら考え込んでいると、彼の身体が何かにぶつかった。天使の耳に「❤️クソ女はここでヤレ❤️>>>」という声が飛び込んでくると同時に、天使の悪魔の傍を歩いていたアキの姿が消えた。
天使が振り返った一瞬、セクシーな女の姿が見えた気がした。