セカンドバージン

セカンドバージン


「例えばあの娘達に鏡花水月を掛けずとも自由意志を奪う事など私には造作もない。

だが私は、暴力の先に快楽があるとは考えていない。

無理矢理は性に合わなくてね。

協力して貰えるかな?平子真子」

「モチロンダキョウシマスワ、藍染サマ」


* * * *


 藍染はキングサイズのベッドへ平子を押し倒した。100年ぶりの平子の存在は実に性欲を刺激する。

 しかし寝転がった平子は両手で顔を覆ったまま離そうとしない。

「口付けをしたいんだが」

「あん時、そんなんせんでも腰振ったやん」

「感じなかっただろう?痛めつけたい訳ではない。左手をおろして口を開きなさい」

「ハァァ?嫌ですゥ。お前とした事ないモンしたないんですゥ」

 平子の声がくぐもって聞こえる。

 お互い信用できない人間だと思っていた、かつての上司と部下がキスをするのは平子の言う通り確かに可笑しい。

 可笑しい藍染があの夜平子を襲った結果、可愛い娘が産まれたのだがそれは別の話だ。

「グダグダ言わんとさっさとしような」

「協力するのではなかったか?」

「妥協するつーたんじゃ」

 仕方がないので服の上から脇に唇を寄せると、

「ギャアアア!」 平子が叫び声を上げた。

 正直にいうと藍染にはあまり会話をする余裕がない。平子の気持ちを無視して推し進めてやりたい。2人の間に柵ができたあの日のように剣のお相手をして欲しい。

 しかしそれをすると今後揉める事は目に見えている為、理性的に返事をしている。

 藍染は平子の全てを手に入れたいのだ。

「君が何も見たくないと言うのなら、アイマスクを持ってこようか」

 死神であろうと人間。疲れた時には蒸気に癒されたい日もある。虚圏へ来る前ドラッグストアで購入した藍染の私物だ。

「いやそれ何プレイやねん、さっさとシヨぉな」

「君が止めているんだが?」


* * * *


 布越しに感じる藍染の体温が不快だ。こんなにも近い距離にいる事が信じられない。

 目隠しプレイなどしたいとは思わないが、ここまでくると諦められる気がした。

 藍染は平子を怖がらせないように優しく触れてくる。それが余計に苛立たしい。

 耳元から首筋にかけて口付けられるとくすぐったくて身を捩る。

 シャツのボタンを外し、下着姿になった平子を上から見下ろすと、藍染の征服欲は多少満たされる。

 胸の谷間に顔を埋めると、汗の匂いがした。

「現世の下着を付けているんですね」

ひらこたいちょう。かつて部下であった男の話し方だ。

 藍染の手が腹の辺りを探るように撫でている。

 ここに何が宿っていたのかを確かめるかのように。

 その手つきが何とも言えない気分になる。

 そのまま指先が臍の下まで辿り着くと、平子は思わず息を飲む。

 これから何をされるのか想像してしまい、顔が熱くなった。

 先程から身体のラインを辿るように這う藍染の指先は、確実に目的をもって動いているようだ。太腿の内側をさすられて、ぞわっと鳥肌が立った。

 反射的に足を閉じようとすると、膝頭を掴まれて阻止されてしまった。

 藍染のもう片方の腕が足の付け根付近に伸びてきた。

 内腿の際どい部分を触られた瞬間、平子はちょっと待ったァ、と声をあげ起き上がる。

「あなた本当にやる気あります?」

「この体でするん、初めてなんや」


平子の主張によると、娘は霊体で出産し、義骸は処女。


 そういうことらしい。ならば仕方がない。優しくしなければ。

 しかし藍染はもう随分と前から我慢の限界なのだ。

 再び藍染に押し倒された平子の視界には天井が広がっている。

 藍染の顔が近づいてきて、目を隠すと額に柔らかなものを感じた。次いで頬へ、鼻先に。

 唇の端に口付けられた後、舌先で舐め上げられる感触に身震いする。

 薄く開いてしまった口に、すかさず舌を差し込まれた。歯列をなぞられ上顎の裏を擦られる。

 逃げ惑っていた舌を引き摺り出され絡め取られると、頭がぼんやりしてきた。

 飲み込みきれない唾液が顎を伝っていく。

 角度を変えて何度も貪るようにキスをされ、ようやく解放された頃にはすっかり息が上がっている。

 耳元に顔を寄せられ、吐息混じりの低い声で囁かれた言葉に、平子は何かを諦めた。

「遊びの時間は終わりです」


* * * *


 ドロドロに溶かされた平子がベッドに横たわっている。

 耳元に息を吹きかけると面白いほど身体を跳ねさせる。

 執拗に攻め立てると、泣きそうな声を上げて達する。

 腕を顔から動かすと見んなァ、と瞳からは生理的な涙が溢れていた。

 藍染はそれを親指で拭い取りながら、満足そうに微笑み、瞳を閉じさせ優しく口付ける。

 まだここで止めるつもりはない。

 彼女の腕を引いて起こし、あぐらかいた上に座らせた。

 抱きしめて顔が見えないよう肩に顔を埋めさせてゆらゆら揺れてやる。

「あなたを愛しています。

霊術院講師役の際、下らない自己紹介でスベッた姿を見た時から」

本当はもっと早くに言うべきだった言葉をやっと口に出来た。

「嘘やん」

「本当です」

「スベッとらんかったわ」

「あなたが私を許す筈が無い、憎悪が消える日が来ない事も分かっています」

「……」

「あの夜も、今回も決して謝ったりはしない」

 つまりこの告白自体藍染のエゴだと言いたいのだろう。

「お前はホンマクソ裏切り者藍染やな」

「今も私に触れられるのは嫌だと思っている事も分かっている」

「分かっててよォヤれるな……」

「男は単純なものだよ」

「ほーん」

「本当に」

「ほぉか。アイツと織姫ちゃんの5体満足精神無事を約束するなら俺を好きにせぇ」

「約束は守るとも。あなたは私の子を孕んでくださいね」

 藍染の腕の中で平子が大切な何かを諦めた気配がした。



・藍染の喋り方が混ざってるのはどのキャラが平子に有効か分からなかったから

・織姫は原作よりも早く攫われている

・平子はGJ、ウルキオラと同じ反膜で虚圏へ

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