スリラーバーク編inウタPart2
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ナミ達と完全に逸れ、張り巡らされた巨大クモの巣に絡め取られたルフィ組。サニー号だけでなくブルックの乗っていたゴースト船とナミ達を乗せていたハズのミニメリー号まで身動きが取れず、おまけに船が止まったところで計算されたとしか思えない位置にある島の入口にゾロはため息を漏らす。
「ゴースト達の手招きまで見えてきそうだ」
「なーにをごちゃごちゃ言ってんだゾロ!!ホラおめェも来い!!ここにいたってヒマなんだ、行くぞ!!弁当わけてやるからよ、ししし!!」
ルフィに誘われ、こんな見え透いたバカな罠を張るやつらの面を拝ませてもらいに行くのも一興かと結局サニー号に残っていた6人全員でスリラーバークへと乗り込んでいく。
そうして意気揚々と乗り込んだもののいきなりの急な下り階段に辟易とするが入口なのだから考えても仕方ないと割り切り下っていく一行。
「ロ…ロビン!!またあの変態透明猛獣が出たら私が守ってあげるからね!!」
「あら、震えちゃって…急に怖くなっちゃったのかしら?」
「安心しろウタ!!またさっきのが出てきたらぶっ飛ばしてやるからよ!!」
「今変態って言ったか?」
「おめェじゃねェよ!」
そうこうして堀を下りきるとその先に何やらグルルル…と威嚇する何かが見えてくる。一つの胴体に3つの首、いわゆるケルベロスだ。
普通であればその異形に恐慄くところだが、あいにく彼らは普通とは言い難いタイプの集まりであった。
「へェ…ケルベロスか……地獄の方が安全だろうに」
「あらかわいいわね」
「あいつケンカ売ってねェか?」
「生意気だな…」
「お、うめェのかな?」
「ケルベロス肉…私初めて!」
異形の自分に怯まないばかりかかわいいだの生意気だの、挙句の果てには食われそうになり戦々恐々とするケルベロスであったが口先だけで負けてはいられないとキッと目の前の侵入者らを見据える。
「何だやる気になったぞ。じゃおれが」
「いや待てよ、手懐けてみよう」
何を思ったのか目の前の異形の存在をルフィは手懐けようと網と籠を外して歩み寄る。犬の元締めみてェなやつだぞとゾロが忠告するも犬は犬だとルフィは気にかけず、その横でウタがわくわくしながらルフィが手懐けるのを待っている。
「よーしよしよし、お手」
「ワンワン!!コォン!!」
「ルフィ〜!!?」
「言われたそばから…」
猛烈な三連噛みつきを食らったルフィであったが、器の大きさを示すためかそんな派手な粗相を許すかのような優しい声色でよしよしいい子だとケルベロスを諭す。
「よーしよしよし…そうだゆっくり離せ…いい子だな…
こんにゃろォ!!!!」
優しく諭し噛み付いてきた口を離させたのは、全てこの一撃のためだったのだ。ドゴゴン!と壁に三つ首がめり込むほどに殴られたケルベロスはその場でぐったりとダウンする他なかった。それを見たルフィは「ふせ」と言い放ちあたかも手懐けるのに成功させたかのような雰囲気を醸し出す。それを後押しするかのようにウタもグッ!とサムズアップし後方にいる仲間達にアピールするも「イヤイヤ…」と呆れられてしまう。
何はともあれケルベロスを従えて堀も抜けゴースト島の冒険を再開するルフィ一行。ケルベロスのヒドイ傷やキツネが混じってることに多少の疑念を抱きながらも堀を抜けたその先にある森を歩もうとする。そこでルフィが真っ先にん?と何かを見つける。
「おっさんの木と…ユニコーンが一杯やってる!!」
ケルベロスが可愛く見えるほどのありえない光景を目の当たりにしたルフィは震え、そしてその木のおっさんとユニコーンを捕まえる。
そしてまたあの禁断のあの言葉を口走ろうとする。
「お前ら!!おれと一緒に海賊やら」
『フザけんなァ!!!』
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ところ変わってドクトル・ホグバックの屋敷の庭。今現在この屋敷内では連行されたナミ達が何とか脱出せんと奮闘している。そしてこの庭にはまたなんとも言えない連中が集まっていた。ドクトル・ホグバックはともかく、一方は猛獣の唸り声を鳴らす透明のように見えなくなっている男ともう一方は女の声を持つゴースト。何やら悪巧みをしているようで…
「おい!!アブサロム!!いるんだろう。今の騒ぎは何だ!!また風呂場にいたのか貴様!!」
「ガルル…ホグバック…嫁探しだ。あの女気に入ったぜ!!おいらのものにするぞ!!」
「あれでも一応賞金首、お前には渡さん」
「今回は7人も賞金首がいるんだ、内二人は1億超え。船長は3億だ!!」
「3億…軽く言うがペローナ、政府が3億懸けるってのは並の海賊じゃないぜ?」
「それがわかってるなら獲物の捕獲に全力を注げ…アブサロム。今夜は大仕事になりそうだ……!!!」
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ところ戻ってスリラーバークの森の中。そこではサンジが何でも仲間にしようとするルフィの姿勢を正そうと説教中だ。
「ただでさえタヌキだのロボだの色々いんだぞウチにゃあ!!!」
「おい、おれはロボじゃねェサイボーグだバカ野郎!!」
流れ弾のように自分をロボと言われ憤慨したフランキーが食ってかかるもサンジのベースは変態だろうが!にそこ解ってくれるなら別に…と意外な形でルフィへの説教は終わりを迎えてしまう。
次は何が出るのかな〜〜♪楽しいな〜〜♫と口ずさむルフィを尻目にロビンは先程の"木の人"と"ユニコーン"にもあったこの森の奇妙な生物達の共通点を語り出す。包帯・縫い傷・そして番号が体に刻まれていることを。ケルベロスにもそれら3つの共通点が施されており、番号が割り当てられているところを見るに何者かに管理されていることは明らかだった。
だがそうしてこの奇妙な森を解読しようとする傍らで、ルフィの後ろでケルベロスに乗っかっていたウタが頭を抑え何やら難しい顔をしており、ロビンがどうしたのと問いただす。
「どうしたのウタ?どこか体調でも優れないのかしら」
「なんだウタ、お前どっか調子悪ィのか?あ!さてはさっきサニー号で掴まれた時になんかあったんだろ!?」
「いやっ!あれはもう大丈夫だから本当に!!2人とも心配してくれてありがとう。ただ…なんというか……さっきから頭の奥が疼くような、何か声が響いてくるような感覚というか……変な感じなんだよね」
声が響いてくるというウタの発言を皮切りに一行は周囲へと耳を澄ますが、聞こえてくるのはザワザワと森特有の自然音のみであった。
「声ねェ…おれにはそんなもん聞こえてこねェが」
「ウタちゃんは耳がいいからな。多分おれ達には聞こえない何かが聞こえてきちまってるんだろう…こんな物騒な森なら何か変なもんが聞こえてきても不思議じゃねェ!!気に病むことないぜウタちゃん」
「そんなに気になるんだったらよ、今ここで食っちまうか海賊弁当!!なっ!!」
「フフ…ありがとうみんな!何かこうやって話してたらどうでも良くなってきちゃった!!」
ウタがそう言うように、彼女の頭の奥の疼くような感覚や響く声は仲間達とのやり取りの間で拭い去られていた。さあ気を取り直してゴースト島の深い森の探索の再開だと意気込むと、何やら妙な掛け声のようなものが聞こえてくる。
「ん?なんか聞こえるぞ?」
「ネガティブ、ネガティブ」
「出たー!!ゴーストだーー!!!」
ネガティブ、ネガティブと感じの悪い掛け声と踊りと共に一体から二体、二体から三体に増えていくそれを見たルフィとウタは面白がり、いよいよ捕獲の時だと網を構える。
「なァウタ!もしかしてさっきの声ってコイツらなんじゃねェのか!?」
「さァわかんないけど…今私達がやるべき事は一つだよルフィ!!」
そうして2人同時に一体のゴースト目がけて飛びかかり網を振るう。
『捕まえて飼ってやる!!』
「だー!!」
「やー!!」
懸命に網を振るう2人であったがまるで感触が無かった。完全に霊体かと見切りをつけたフランキーが大きく息を吸い込み、残る二体のゴーストへ向けて攻撃を仕掛ける。
「"フレッシュファイア"!!!」
フランキーの火炎放射攻撃をホロホロホロホロロロとすり抜け、一切効く素振りを見せないゴーストが効かねェと漏らすフランキーの体をすり抜けるように通ると、フランキーはさらに言葉を続ける。
「全くダメだ、今週のオレホントにダメだ…何やってもまるでダメ。生きていく自信がねェ…死のう」
「どこまで落ち込んでんだよお前は!!!」
異常に落ち込むフランキーにサンジがつっこむ横で、網で捕まえられないことに痺れを切らしたルフィとウタは直接手掴みで捕らえようとする。しかし当然実体のないゴーストを捕まえることは出来ず、フランキーのように体をすり抜けてしまう。
「もし生まれ変われるのなら…おれは貝になりたい。最低だ……死のう…」
「歌ってるときの動き……キモ過ぎてすみません……もうダメ…逃げたい…」
「だから何やってんだよおめェら揃って!!!」
あまりの異常事態に声を荒らげるサンジであったが、それとは対照的に嘲るようにホロホロと浮かぶゴーストにロビンは注目する。
「もしかしてあのゴーストに触れると気が弱くなっちゃうんじゃ…」
「そんなバカな」
「…ふん情けねェ奴らだな。普段から気をしっかり持たねェから妙なゴーストごときに心を翻弄されんだよ!!」
そう言い放つゾロの元へゴーストが一匹通過する。
「生まれてきてすいません…………」
「もういいわ!!!」
だがしかし、あのゾロですら気を弱らせられてしまったところを見るにどうやらロビンの仮説は正しいようだ。実体がない上触れると精神的に切り崩される、敵であれば厄介極まりない存在。
だがそれ以上にゴースト達から干渉されることはなく、ルフィ達がネガティブな状態から復活する。
「あんのゴースト今度現れたらもう承知しねェ!!!」
「飼うのもやめやめ!!いらないあんなの!!!」
「弱点は必ずある!!抹消してやる!!!」
「わははは面白ェモン見た」
「うっせェ!!!」
打倒ゴーストに燃えるルフィ達復活組。だが、ゴーストにやられなかったサンジとロビンは番号を持った生物達や船から時折監視するかのように接触してくるゴースト達の糸を引く誰かが問題だと考え始める。
そんなこんなで深い森を抜けるとその先に広がっていたのはなんとも雰囲気のある広い墓場であった。ルフィが弁当を食おうと提案するもメシがマズくなる上に急いんでんだとサンジが忠告する。そこへなにやら墓場にある墓標の一つからあー…という声が聞こえてくる。
ルフィ達がそこへ目をやるとボコ…!と手が飛び出す。
「ア〜〜〜〜〜〜……!!!」
だがそうして全身飛び出してきた存在の肩を掴んだルフィはゆっくりと押し戻す。まるで何事もなかったかのように…
「って帰るかアホンダラァ〜!!!」
「大ケガした年寄り!?」
『ゾンビだろどう見ても!!!』
その後、先程のゆっくりと起き上がってきた見本的なゾンビとは真逆にゾンビナメンなァ!!とアグレッシブに墓場中からゾンビが湧き上がり襲いかかる。
『ゾンビの危険度教えてやれェ!!!』
ウオオオオ!!!と迫るゾンビの群れに一切怯むことなく一行は戦闘準備を整える。
「な〜んだやんのか。危険度ならこっちも教えてやる…!!」
『7億B・JACK POT!!!!』
強力な合体技によりゾンビの群れを蹴散らすとその場にゾンビ達を正座させたルフィはお前らここで何してたんだと聞き出す。
「えーと……ゾンビだし…埋まってたっていうか」
「腐ってたっていうか………」
「……腐ってた」
「おれも」
「フザけてんのか」
『スンませんっ!!』
しょうもない問答はやめにしルフィはナミ達がここを通ったかをゾンビ達に問いかけるも、何かを知っている素振りを見せながらゾンビ達は話さない。が、少し脅してみせると面白いくらいに情報を吐いてくれた。
この墓場を通りかかろうとしたナミ達3人にみんなで襲いかかるも屋敷の方へ逃げられたとの事だった。ブルックの所在については分からないらしく、ならばもう用済みと言わんばかりにゾンビ全員を逆さまに埋め立て直した一行はナミ達が向かったという屋敷へ出発する。
そこへもし!と後ろから何者かが声をかけてくる。
「今…見てたぞ。あんたら恐ろしく強いんだな。少し話をさせてくれねェか!!?」
「大ケガした年寄り!?」
『だからゾンビだっつってんだろ!!!』
「イヤ大ケガした年寄りじゃ」
『紛らわしいな!!!』
もうゾンビと言っても差し支えないほどの見た目をした爺さんにはブルック同様影がなく、どうやら何者かに影を奪われたようだった。倒して欲しい男がいると言われそれが誰なのかをゾロが問うと爺さんは"モリア"という名を挙げる。するとロビンがもしかしてと爺さんに確認を取る。
「ゲッコー・モリアの事かしら………!?」
「ああ…そうさ…そのモリアじゃ!!」
「ロビン知ってんのか?」
「……名前ならよく知ってる。元々の懸賞金でさえあなたを上回る男よルフィ…!!ゲッコー・モリアは"七武海"の一人よ!!!」
七武海、それはかつてルフィが倒したあのクロコダイルの持っていた略奪を許可された海賊の肩書き。謎が多くロビンでさえも何をしているか分からないその男はこの深い霧に包まれた海域に誘われた者達の影を狩りまくっているらしい。
この地の暗い森をゾンビに恐れながら這い回る者や海へ出てなお太陽に怯える者。いずれにしろこんな体では生きている心地はせん、太陽の光の下を歩いてみたいと爺さんは涙を流し、それに釣られてかフランキーが爺さん以上にはうはうと泣きだし力になるぜ!と勝手に背負い込んでしまう。それに対しゾロが軽く背負い込むなと忠告するとまったくだと同意する。泣き落としは美女の特権だという持論ありきではあるが。
そこへルフィがまーでもよと爺さんへ声をかける。
「元々影を奪う張本人を探してたんだ。そいつがおれ達も狙ってんならぶっ飛ばすだけだ」
「ルフィの言う通りだよ!それにそうなったらおじいさんもついでに助かるんじゃない?」
「……あ…ありがてェ言葉だ……!!ついででも何でも希望が持てますじゃ!!!」
ルフィとウタの発言により希望が持てると爺さんが言うと周囲から頼んだぞー頑張れーという声が聞こえてくる。どうやら爺さん以外のその他の犠牲者達もこのやり取りを聞いていたようだった。
犠牲者達の声援を背に一行は再び屋敷へと向かい始める。屋敷へと続く門が見えいよいよ乗り込むかと息巻いていると、ポツポツと雨が降り出し、このまま屋敷へ走るかと言うとルフィが待ったをかける。
「屋敷の後ろに…マーク!?でっけェ何かが見えるぞ!?」
「少し霧が薄れてるな…何だ…旗か!?」
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霧が薄れ見えてきたのは海賊旗の模様が描かれた帆であった。それを未だついてきていた大ケガした年寄りの爺さんがこの島の正体と共に教えてくれた。ここスリラーバークは村を丸ごと載せた世界一巨大な海賊船であり、屋敷の裏に見えるメインマストにゲッコー・モリアがいることを。
スリラーバークのおおよその全貌、そして影の支配者ゲッコー・モリアの位置を把握した一行は屋敷へと続く門を開け乗り込む。
「さァ行くか!!オバケ屋敷!!!」
そこで待ち受ける死者達の魔境が織り成す悪夢がどれほど恐ろしいものかも知らずに……
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門を通り屋敷の扉の前まで来たルフィ一行。挨拶も程々に中へ入ろうとするがどうやら鍵がかかっているようだ。
「あ…開いた開いた」
「開いたっていうかお前…」
「ルフィらしいよ」
ルフィの拳という名のマスターキーを用いて屋敷へお邪魔すると、そこに使用人と思われる者が一人もいないばかりかまるで乱闘の後のような部屋が一行を出迎える。
ナミ達に何かあったのかと思案すると突然壁から生えているブタが話しかけ、客人を迎えてやれと号令を出す。その号令を合図に周囲の壁にかけられていた絵や敷物が襲いかかってくる。
「オイオイこれもゾンビか?」
「この島ではもう…どんな生き物がいても不思議じゃないわね」
何が出てこようともナミ達を救出するために一行は襲いかかってきたゾンビ達を返り討ちにしていく。
サンジはその自慢の足技でゾンビの顔面をメキメキとへこませ吹き飛ばし、ロビンは大口開けた女ゾンビをボキバキボキ!と捻らせ、フランキーはその両腕に掴んだゾンビの頭を互いに激突させノックダウンさせる。
ゾロは並行に構えた刀二本を振り抜き向かってきたゾンビを斬り伏せ、ウタはチカチカと穂先から光を照射することでゾンビの視界を奪うとすぐさま刺し貫く。
「しししし!!ホンット面白ェなこの島っ!!」
「この…!!すばしっこい奴め!!」
「おれ達の邪魔しなきゃ仲良くやれたのに…!!"ゴムゴムの"…!!!"バズーカ"!!!」
「ベオォ!!!!」
ルフィ渾身のバズーカで巨大な敷きグマの顔面を壁にめり込ませたのを最後にほぼ全てのゾンビを叩き伏せた一行は唯一残ったブタにナミ達の居場所を聞き出すが、寝室で眠っていて安全だとふざけたことを抜かされる。
だがそこへゾロがある異変に気付く。
「ん?おいちょっと待て…───あのぐるぐるコックがいねェぞ」
「え?ほんとだ…」
「あり?さっきまでいたのに…サンジの奴どこ行ったんだ?」
サンジがいなくなっていることを不思議に感じていると倒されたゾンビ達やブタがぷふふブヒヒと笑い出す。何かした事を瞬時に悟ったゾロであったがまあいいかとすぐに切り替える。
「惜しい男を失った」
「あのな」
「まーでもそうだな。サンジはいいか!」
「サンジ強いもんね。何とかするでしょ!」
「だけどこんなゾンビ屋敷じゃ3人の方の救出は一刻を争うかも知れない」
サンジはともかくこんな得体のしれない場所に放り込まれたナミ達の身を案じた一行はブヒブヒと減らず口を叩くブタを案内に先へ進もうとする。すると倒されたゾンビ達もブタに負けじと減らず口を叩き始める。一人また一人と仲間が減っていく恐怖に怯えるがいいと。
そんな負け惜しみを言う憐れな敗者達をゴチャゴチャうるせェ、そのモリアのバカに伝えとけとルフィは口を開く。
「おれの仲間の身に何か起きたらお前をこの島ごとぶっ飛ばしてやるってな!!!」
「な………!!!」
「第一サンジは放っといても死にゃしねェんだ。行こう」
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ブタを案内に連れ部屋の階段を登った先の奥へと歩みを進める一行であったが、ここでまたさらなる異変に苛まれることになる。
「おーーい!!おーーーい!!あれ??おい!!"ブヒ"!!お前またなんかしやがったのか!?吐け!!」
「おれは最初から何も知らねェって言ってんだろ!!ブヒヒ」
「……笑ってんじゃねェか白々しい奴だぜ…!!!」
「不思議ね…音もなく…絞め殺されたのかしら…」
「お前の回路は何でそういつも不吉なんだ!!」
「でもロビンの言う通り音なんて何もしなかったよ。黙っていなくなるとも思えないし……」
「おっかしいなァ……!!!ゾロまで消えたぞ!?」
サンジに続きゾロまで消えた。先程は乱闘中であったが故に多少仕方ないと思えても、今回は廊下を歩いていた時に消えたのだ。なんとも不思議な現象が続いているがそれでもナミ達3人の救出が優先だと一行は歩みを止めない。
そんな道中で見つけた鎧を着込んだルフィとそれをいいないいなと羨ましがるウタの2人をフランキーがこんな時に何やってんだと叱るが、男のロマンをルフィに説かれ心まで鉄にしたつもりはねェと「サイボーグ鋼鉄旅情」を歌い始める。歌えー!だの私も歌うー!だの盛り上がる一行を見て、自分達の置かれてる状況分かってんのかとブタが呆れたタイミングで広間に出たとロビンが知らせてくる。
その広間はまるで闘技場のようであり、その奥は外に繋がっているようだった。ナミ達やサンジらもおらず、さてどうしようかと佇んでいると突如頭上からギラッと輝く剣がフランキー目がけて降りかかる。
「うお!!!」
「フランキー!!!」
「……!!誰!!?」
フランキーへ剣を降らせたのは槍が刺さったまま動くヨロイ、もとい鎧を纏ったゾンビであった。なおも斬り掛かるそのゾンビからの攻撃を左腕のシールドで防いだフランキーが"ストロング右"を叩き込む。だがその鎧のゾンビは吹き飛ばされずに踏みとどまり、フランキーへ飛ぶ斬撃を浴びせかける。
「うおっ!!!……!!壁が……!!!一端の剣術を…!!"ウェポンズ左"!!!」
ボゥン!と左腕から放たれた砲撃で鎧のゾンビを今度こそ吹き飛ばす。が、すぐに立ち上がり怯むことなく果敢にフランキーへと襲いかかりとうとう一太刀を入れられてしまう。
「うわっ!!フランキーが!!!」
「…………!!…やられやしねェよ…!!こんな死人なんぞに!!!」
鎧のゾンビの頭を掴み広場の奥へとぶん投げたフランキーであったが、鎧のゾンビは倒れることなく再び立ち上がる。その頑強さにラチがあかねェとボヤくと遠くに離れたブタが思い知るがいい本当のゾンビの恐さを!と吠える。
武装した将軍ゾンビ達は一人一人が生前に名を揚げた強硬な戦士たちであり、そんな奴らが不死身になったのだからおめェらなんかが勝てるわけねェし仲間達だって誰一人無事じゃねェよと。
このやろ!!とルフィがブタへ迫ろうとするがカベゾンビと言われた壁のゾンビが来た道を塞いでしまう。だが塞がれたのは後ろだけではない。
「…おれの経験から物を言わせてもらうと…コリャさすがに………手強すぎるぞ………!!!」
「うーおー!!!ヨロイだらけだー!!!」
鎧や剣など武装した将軍ゾンビ達が行く手を阻む。コイツら全員相手してちゃこっちが消耗しちまうだけだとフランキーが言うが、スッとウタが将軍ゾンビ達の前へと歩み寄る。
「でもこれ…相手しなきゃいいんでしょ?だったら私の能力で一発だよ!!3人とも耳塞いでてね」
「お!それもそうか!!やっちまえウター!!!」
背中に携えた槍をマイクスタンドのように地面へ突き立てそこへマイクをセットし、ルフィ達が耳を塞いだのを確認したウタは歌い始める。その能力で将軍ゾンビ達を眠らせこの場を切り抜けるために。
だが耳を塞いだルフィ達はともかく、そんな素振りを一切見せていないにも関わらず将軍ゾンビ達は誰一人として意識を失う者などいなかった。
「え!?なんで!?なんで眠らないの!!?」
「ウタの能力が効いてねェのか!?」
「……もしかしたらと思ったのだけれど…痛みを感じないゾンビ達はそもそも眠らないんじゃないかしら……」
「ありうるな…でなきゃ問答無用で昏倒させる能力が効かねェわけねェからな」
「そんなァ!?じゃあ戦って倒さないとダメなの!?」
初めての事態に慌てふためくウタを落ち着かせるようにロビンはさらなる提案をする。
「いえ、その必要はないわ。この広場をまっすぐ抜けると……おそらく中庭に出られるわ」
「よし!じゃあおれ達4人そこで落ち合おう。また誰か消えねェ様に気いつけろよ!!」
「そうだね…それじゃあ」
「いくぞっ!!!」
かかれ!!と一斉に襲いかかってきた将軍ゾンビ達を各個に対処し広場の奥へと突き進むルフィ達一行。だが将軍ゾンビ達の猛攻は凄まじく、どれだけ攻撃を加えても倒れる気配すらなかった。
そんな中、ロビン得意の関節技とフランキーの火炎放射が炸裂し、なんとか広場の奥へと2人は辿り着く。
「ルフィとウタは………!?」
「まだ出てきてねェ様だな。振り返ってもゾンビばかりでどこにいるやら」
「………!!!でもゆっくり待ってもいられない。すぐにゾンビ達が追って来るわ」
ロビンの言う通り、獲物を2人逃した将軍ゾンビ達が雄叫びを上げ2人へ迫ろうとしている。まさかあいつらまで消えたわけじゃねェだろうなとフランキーが2人へ呼びかけると、ガコンと何かが作動したかのような音が鳴る。
音のした方向を見るとそこには屋敷からメインマストへと繋がる鎖がかかっており、そこへ屋敷の中から蜘蛛の糸のようなものでぐるぐる巻きにされた棺桶が2つほど運ばれてくる。
「ちきしょう出せ!!」
「んー!!んーー!!!」
「何だ…?棺桶…!?」
「……!?今の声…!!ルフィ!!?」
メインマストの中へと運ばれる棺桶の内片方からルフィのものと思われる声が響いてくる。もう一方の棺桶はなにやら声にならない声をあげているが状況的に恐らくウタが入っているのだろう。
そうアタリをつけたフランキーとロビンは2人の救出へと走り出す。
「まさかアレに麦わらが入ってんのか!?じゃあもう片方は……!!何やってんだよオイ!!あのバカ共捕まりやがったのか!?追うぞニコ・ロビン!!」
だがそんな2人の行く手を阻むように巨大グモが道を塞ぐ。将軍ゾンビの一人で巷で噂のスパイダーモンキー・タラランである。
「巨大グモ……!!」
「昆虫の域を超えてる!!化けグモだ!!」
「あああああ」
「んー!」
「…おーまた一人一人と…」
「しまった棺桶が……!!!てめェらあいつらをどうする気だ!!」
ルフィ達を案じるフランキーに対しタラランはせめて自分達の心配をしろと忠告する。───これで一味は全滅だとまで言いながら。