スヨーダナ分離イベ
平和が続いたある日、集合がかかるマスターとインド鯖の面々。
「微小ではあるが特異点が発生した」
ダ・ヴィンチちゃんがそう切り出す。人理への影響はさほどなく、放っておいても自然消滅するような特異点だが、ひとつ問題がある、と困ったように眉を下げた。
「実は、その特異点に独断でレイシフトしたサーヴァントがいてね」
その言葉にマスターは集まった鯖の面々を見回した。
《ドゥリーヨダナがいないね》
「そうなんだ。特異点が発生する前か後かの判別がつかないけど、彼が今特異点にいることは間違いない」
「何してやがんだ、あのトンチキ王子は」
「まだ旦那が原因とは決まってねぇだろ」
《そうだね》
《カルナとアシュヴァッターマンはカルデアに残ってるもんね》
マスターがフォローしたつもりで言うと、しょんぼりとした顔になるカルナとアシュヴァッターマン。
ドゥリーヨダナがやらかしているのだとしても、巻き込まれたのだとしても、そこについていけなかったことが悲しくて淋しいのだ。
「最初に言ったとおり、人理にはさほど影響がない特異点だ。とはいえ、見付けた以上は放っておけないし、今後どう転がるかはわからない。さっそくだけど、行ってもらってもいいかな?」
《もちろん》
──そういうわけで、インドのとある地域へとレイシフトした一行。
とても平和な街。
ひとびとは生き生きと活動して、市も賑やか。花の良い香りが辺りに漂っている。
「はぁ〜〜っ、賑やかっスねぇ」
「そうですね。戦争などが始まっていたらどうしようかと思っていましたが」
のんびりと観光気分な女性陣。
1日目バトル VS岡田以蔵
賭けに負けたツケをマスターたちの足止めでチャラにしてくれるというので乗ったと言う。
「何が巻き込まれたかもしれないだ。明らかな黒幕じゃねぇか」
怒るビーマと呆れるアルジュナ。やっぱり少し落ち込むカルナとアシュヴァッターマン。ふよふよ浮くアルジュナ・オルタ。
2日目バトル VSバーヴァンシー
《何でバーヴァンシーが?》
「アタシが協力してる理由なんて、お母様以外にある?」
驚く一行とは異なり、ダ・ヴィンチちゃんは少し納得した様子。
「ドゥリーヨダナがレイシフトしたことに疑問があったんだ。彼ひとりで仕組みをすべて理解したうえで実行できるのかって。けど、女王モルガンが協力したのなら納得だ」
理由はまだわからないけれど。
それなりに足止めしたと判断したバーヴァンシーが退く。
戦闘後、気付くとカルナとアシュヴァッターマンの姿がなかった。
バトル3日目 VSカルナ&アシュヴァッターマン
《知ってた》
《ところでアシュヴァッターマンはどうして2臨なの?》
バーヴァンシーを追ったところ、ドゥリーヨダナに会うことができたのだという。合流できたからにはドゥリーヨダナに付くべきと判断した。
ということをカルナがカルナ語で語る。(カルナ語わかりませんごめんなさい)
バトル4日目 VSアルジュナ
「アルジュナ! おまえ、何を考えている!?」
「ごめん、兄ちゃん。ですが、今回ばかりは……私もこちら側で弓を引かせてもらう」
そうしてぶつかる五王子のふたり。ただし、アルジュナは足止めに徹するのみで、ある程度の時間を稼ぐとバーヴァンシーのように退いていった。
ふと気付いたように、アルジュナ・オルタが顔を上げる。懐かしい匂いがする、と。
バトル5日目 VS言峰神父(姿は一臨)
「頂く神は違えども、誕生は区別なく祝福されるべきものだ」
周囲の雰囲気は初日と異なり、不穏な気配が漂い始めている。花の香りは相変わらずだが、日の光は翳り、薄暗い。獣たちもどことなく怯えた様子だった。
「ドゥリーヨダナは一体何を生み出そうとしているんだ?」
「さて。それは時が満ちればわかるだろう」
バトル6日目 VSモルガン
「えぇ。彼から、直々に頼まれました。子を想う親ならばわかるだろう、と。……いえ、彼が言ったのは正しくは『親を想う子の気持ちをわかってくれ』でしたが。実際、痛いほどわかったので、協力しました」
語るモルガン。ここで回想。
同じバーサーカーのクラスとはいえ、遠巻きにしか見たことのない、関わりのない男。しかし、なんとなくのひととなりは理解していた。
その男が、今、目の前で頭を下げている。
『頼みがあるのだ。わし様ひとりでは成し遂げることができない。おまえの協力を仰ぎたい』
『はぁ? お母様がおまえごときに何の得があって時間を割くと?』
『子どもが親の前からいなくなったのだ。時間が経てば戻れるが、戻るのに時間が掛かる。その間の連絡手段がないし、実は戻れるか戻れないかも半々だ。だが、子どもは戻るつもりでいるし、俺もそう信じている。──しかし、戻れない間、親に心配を掛けたくないのだ』
わかるだろう、と訴えかけるドゥリーヨダナに、バーヴァンシーは呻いた。その気持ちは、痛いほどにわかってしまう。ちらりと母を見れば、母はやさしく笑っていた。
『良いでしょう』
バトルなし7日目
ドゥリーヨダナの回想。
朝、目が覚めたときに体の内が少しすぅすぅすると思ったのだ。
ほんの少し不安を抱きつつ、ドゥリーヨダナはまず自分の内側に意識を向けて99の弟と1の妹に朝の挨拶をした。それから、同居人のスヨーダナにも挨拶をし、その答えがないどころか、存在すらも消失していることに気付いた。
ドゥリーヨダナは慌てて、スヨーダナの気配を探った。元より同じ肉塊から生まれ出でたわけではないが、完全同位体の肉塊のスヨーダナである。気配の残滓を掴むことは早々にできたし、向かったらしい場所もわかった。何が起ころうとしているのかも、わかった。
しかし、それが成される前にその地は消えるかもしれず、そしてドゥリーヨダナにはそこに行くだけの力がなかった。具体的には、レイシフトの仕方がわからなかった。
ついでに、ドゥリーヨダナはスヨーダナの不在を知って悲しむだろうアルジュナ・オルタの顔を見たくなかった。悲しませたくなかった。
なので、ドゥリーヨダナはモルガンへと協力を仰いだのだった。
誕生のときはきた。
大きな、大きな花が開き、スヨーダナが目を覚ます。
紫の髪、少し白さの目立つ肌、四肢と腹から下はカリのそれで、開いた瞳は血のように赤い。
幼子は無感動な瞳でカルデア一行を眺め、それから、パァと破顔した。
「とうさま!」
配布サーヴァント スヨーダナ
更新最終日に姿を現すタイプの配布ってありだろうか…?
アルジュナ・オルタがスヨーダナを抱っこして、空いた手でドゥリーヨダナの頭を撫でる。
「……神たるアルジュナよ。わし様はもう分離済みで、おまえの子はおまえの腕の中だが?」
「父に心配かけまいと頑張ったのなら、あなたも私の子で良いのでは?」
「いや、判定ガバか!?」