スペースオモダカさん宇宙に帰れなくなるの巻

スペースオモダカさん宇宙に帰れなくなるの巻


「宇宙人……ですか」

「ええ。隠してはいましたが、アオキだけには話しておいた方が良いかと思いまして。」

 あまりにも奇想天外な事実。だが、目の前の女性ならありえない話ではない。アオキはそう思った。

「この惑星のパルデアという地域をより良く導け。お父様達にそう言われて地上に降ろされたんです。」

 そこから十数年。オモダカはパルデアリーグやアカデミーを発展させる下地を作り、若き俊英を見出した。もう数年もすれば、あの子供達がトップチャンピオンやリーグ委員長の仕事を十全にこなせるのは想像に難くない。

「宇宙に帰るつもりなんですか、トップ」

「私としては故郷が懐かしい気持ちもありますが……どうでしょうか。まだ、迷っていて」

 彼女が語る帰れなくなる条件はたった一つ。雌性体の場合は現地の生物と交配して遺伝情報を取り込んだ場合。これを母星に戻した場合、遺伝子汚染の危険があるため問答無用で帰還は不許可。任務は寿命を迎えるまで無期限へと変更される。

 過去にはジョウトやシンオウで同じような使命を受けて降った彼女の「お姉様達」がその条件で結局戻ってこなかったという。

「まあ、私にはそういった交配相手もいませんから。いずれ迎えがくることでしょうね」

 それまでは自分の任務に全力を尽くしますよ、といつものアルカイックスマイルで語るオモダカ。

「そうですか」

 普段と変わらずボソッと呟くアオキ。だがその頭の内は、目の前の女を故郷に帰さない算段で埋め尽くされていた。

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