ステアウェイ・トゥ・ヘヴン

ステアウェイ・トゥ・ヘヴン


デンジは限界まで高度を上げると回転、サンタクロースを上空に投擲した。チェーンが怪物の意志に従って外され、サンタクロースは投石機から放たれたように高天へ向かっていく。

同時に落下を始めたデンジはデパート近くのビル屋上に設置された看板にチェーンを絡め、落下の勢いを殺しつつ激突に等しい形でそこに降りた。

「なにやっとるんじゃ、デンジ!」

「パワー!?」

パワーが爆心地と化したビルディング上層までやって来た。デンジは自分が現在、人形の元凶と戦っている事をパワーに説明した。

「そいつ、俺を地獄に連れてく気でよ〜!逆に天国へ連れてってやろうと思うんだ!」

「天国?どこにあるんじゃ?」

「いいとこらしいぜ?行った事ねーけど」

デンジは右腕で頭上を指した。パワーは意図を了解したらしく、己の姿を少女の姿から人体を歪に撚り合わせた魔王の如きものへ変化させる。

「よし、ワシが責任を持って天国に送ってやろう!デンジ、ついてこい!」

「おう!」

サンタクロースが空から降ってくる。力強く宣言したパワーは宙に舞い、サンタクロースの真下に陣取る。闇の悪魔が腕を掲げた。

「ダークネスキャノン!」

光一つない漆黒が、再びサンタクロースを上空へ打ち上げた。チェンソーの魔人とは異なる者の攻撃である事はわかったが、何がしたいのかわからない。てっきり墜落死させる気かと思っていたのだが。

答えは間も無く、サンタクロースの視界の端に現れた。

「星…宇宙!?」

サンタクロースは大気圏を超えて、無限の彼方へ旅立っていった。だが、サンタクロースは折れていない。彼女の人形は未だ世界中にあり、触れて人形にすれば誰もがサンタクロースと呼ばれる殺し屋になる。

地獄で雷の悪魔と契約を果たせるし、何度だってチェンソーの魔人を殺しに行ける。彼女の脳は世界中にいる人形達と繋がっているのだから。

「いつ着くかのう…」

サンタクロースを地球から追放したパワーは、崩壊したビルの上から小さくなるサンタクロースの姿を見ていた。彼女の姿はすぐに見えなくなり、「着いたようじゃ!」とパワーは言った。

クァンシと戦っている最中、ヒロフミと岸辺は目隠しをつけた。マキマが現場に到着したのだ。彼女は刀を手に、2人の脇を通り抜けて近づいてくる。

「降参する」

クァンシは武器を捨てて、両手を上げた。未だ愛人の2人は蛸の触腕の中にある。彼女が到着する前に全員を救出できていれば、一目散に逃げたのだが。

「私が逃げると思うなら四肢を切ってもいい。だから私の女達は殺すな」

足りなかったのは戦闘力か、あるいは判断の速さか。

「助かるなら靴でもなんでも舐める」

「死体が喋っている」

クァンシの懇願を、マキマは冷淡に切り捨てた。クァンシと両隣にいた魔人2体の首が落ちる。蛸に捕らえられた女達の首も1秒の誤差なく刎ねられた。

人形達は沈黙する。刺客達の来訪をきっかけに始まった狂騒は終わったのだ。

「目隠し…取らないんですか?」

許しが出た為、ヒロフミは目隠しをとった。視線を向けると、岸辺は目隠しをしたまま微動だにしない。

「何も見たくねえ…」

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