スイートなバレンタイン
モテパニ作者2月14日今日はバレンタイン。
加音町にもその日が訪れた。
C拓海「…」ソワソワソワソワ
エレン「なんか今日やけに落ち着きなくない?」
C拓海「そ、そうか!?」
まあ理由はわかっている。
意地悪する理由も無いので早く渡してやろう。
エレン「はいチョコレート。これが欲しかったんでしょ」
C拓海「…シャッ!!!」
エレン「予想より喜んでる…」
喜びの表現の大きさにびっくりするエレン。
C拓海「今まで貰ったチョコで一番嬉しいな…いや俺はバレンタインチョコ初めて貰ったけど」
エレン「ッ!そう///」
一見するとただ初めてチョコを貰ったというだけの台詞だがC拓海のそれは事情が違う。
本物の記憶を受け継いでいるC拓海には事実として初めてでも貰った覚えはある。
その中にはおそらく彼女も…
しかしC拓海の一番という言葉は本当だが、本物の拓海の想い人は馴染みきった幼馴染。
C拓海の好きなエレンはあらゆることが新鮮な会って数ヶ月程度の仲。
こういったイベントで感情の単純比較はしにくかった。
だがまあ本人達がいいならそれでいいだろう。
C拓海「ありがとな、ホワイトデーのお返しは気合い入れるから」
本物の拓海ならこういう時自分もチョコを贈るのだろうがC拓海はそれをしない。
それは本物とゆいのやり方だ、自分はエレンと自分のやり方を見つければいい。
エレン「無理しなくてもいいけど?拓海お金無いでしょ?」
C拓海「ぐぅ…」
まあ他にも事情はあったが。
以前したおいし〜なタウンへの観光、ただでさえ予算ギリギリな中予定外の出費もあり今はもう素寒貧だった。
それどころか旅費のために音吉からお小遣い前借りしてもらったり、帰りの交通費分立て替えてもらったりで借金まである始末。
C拓海「(最悪奏の家の手伝いして材料だけでも融通してもらうか)」
まあお菓子だけなら当てはあったが。
〜〜〜
C拓海「〜♪」
音吉「ほっほ。ご機嫌じゃな拓海くん」
その日の作業中機嫌が良かったC拓海はその様子を音吉に突っ込まれてしまう。
C拓海「あ、すいませんなんか」
音吉「構わぬよ。若者の青春は眩しいのう。眩しさついでにこれも輝きに加えてもらえるかの?」
そう言って音吉から何かを渡される。
これはチョコレートだ。
C拓海「これは音吉さんから?」
音吉「アコからじゃよ。それともわしからがよかったかのう?」
C拓海「こういうのは気持ちですから誰のものでも嬉しいですよ」
音吉「別格はおるようじゃがな」
C拓海「あ…///」
音吉「はっはっは」
すっかりからかわれてしまう。
音吉の人生の厚みには敵いそうにない。
〜〜〜
手伝いも終わりC拓海はアリア学園へ向かう。
今日はエレンから呼び出されている。
C拓海「(しかしなんで待ち合わせが中学の方なんだろうな)」
そんな疑問を抱きながら歩いていると
奏「あ、拓海くーん」
C拓海「奏、今帰りか?」
奏「うん。でも帰る前に待ち合わせがあるの。正宗さんにチョコを渡さなきゃ」
C拓海「ん?学園じゃだめなのか?」
奏「学園だと他の子の目があるから…」
C拓海「関係内緒にしてたのか」
奏「私たちの交際って仮が付く関係だから、そんな関係で他の子を牽制するのもどうだかな〜って。正宗さんが私を理由に断るのはどんと来いって感じだけど、正宗さんはそんな人じゃないから」
C拓海「王子のあの人の良さはちょっと危なっかしくもあるな」
奏「あはは…私も少なからずそんなとこに惹かれたから注意はできないけどね…あ、そうだ。ちょうどいいから渡しておくね、義理チョコ」
C拓海「おうサンキュー。でもわざわざ義理って付けなくても」
奏「義理ではあるけど手作りだもの。て、手作りだからって勘違いしないでよね!あくまで義理なんだから!勘違いしたら承知しないんだから!…エレンが」
C拓海「はは、そりゃ気をつけないと」
コテコテのツンデレ演技に乗っかるC拓海。
そんな会話を最後に奏と別れるのだった。
〜〜〜
響「あら?拓海こんなところでどうしたのよ?」
C拓海「響。いやエレンに学園の方に呼ばれててな」
道中奏に続き響とも遭遇する。
響「学園に…あー、エレン例の話題気にしてるんだ」
C拓海「話題?」
響「最近話題になってるのよ。lucky spoonにたまに現れるイケてる店員。あんた最近lucky spoonの手伝い始めたでしょ?」
C拓海「ああ、忙しそうな時と予定が無い時な」
響「それが一部の女子の間でね、顔には出さないけどエレン気にしてるみたい」
C拓海「そ、そうなのか」
響「なんで嬉しそうなの、独占欲持たれてうれしーってこと?私にはわかんないや。ま、私からもあげるけどエレンの独占欲刺激しないようにそっちで気をつけてねー」
響からチョコが渡される。
普通の板チョコ、一目で義理とわかる代物だった。
響「てなわけで私は私で貰ったチョコ食べたいから帰るね。へへー奏からも貰ってるんだー♪」
響は嬉しそうに言う。
C拓海は知らないが、前のバレンタインの時期の響と奏は少しの行き違いから一年間喧嘩していた。
だから響はこうして奏からチョコを受け取るのをC拓海がエレンから受け取る以上に喜んでいた。
響「じゃーねー!」
C拓海「おー」
C拓海は笑顔の響を見送った。
〜〜〜
そろそろアリア学園が近くなってきたところ…
???「あ、いた!おーい!」
C拓海「ん?…野乃?」
はな「久しぶりだね拓海くん!」
C拓海の前に現れたのは予想外の人物はなであった。
はな「うーんやっぱりきみとは会えるんだ」
C拓海「会える?てかここにいるってことは俺のこと…」
はな「あ、うん。あの後さあやから事情は聞いたよ」
C拓海「そっか、バレてんなら白状するけど俺さあやって誰か知らないんだよ」
はな「そうだったの!?」
C拓海「だからこの前は誤魔化すの大変だったよ。で、野乃はなんでここに?」
はな「それはね、じゃーん!バレンタインチョコだよ!」
C拓海「おお。わざわざ加音町まで?」
はな「うん!仲良くしてる男の子にはだいたい渡してるからね。というわけでわたしは今からおいし〜なタウンの方の拓海くんにも渡してくるから、それじゃあ〜ね〜」
そしてはなはあっという間に去っていく。
C拓海「気持ちいいやつだったな」
本物の自分と会おうとして本来偽物である自分と会ってなおどちらも"拓海"として扱っている彼女の姿はC拓海には少し眩しかった。
〜〜〜
エレン「で?さっきの子は誰?」
はなを見送ってからすぐのこと。
先程のやりとりは学園のすぐ近くだったこともあり、エレンにばっちり見られていた。
エレンに誤魔化しは通用しない、素直に話そう。
C拓海「前においし〜なタウンであった子だ。本物の俺の関係者らしくて逃げたのがバレないように連れ回した。けどエレンの事は教えてるから怪しまれる事はしてない」
エレン「…はぁっ、嘘じゃなさそうね。まあ、あの子の雰囲気はそういう感じじゃなかったから許すわ」
C拓海「ありがとう」
エレンはヤキモチを妬きやすいが、下手な誤魔化しをしなければすぐ鎮火する。
もうC拓海は慣れていた。
エレン「ん」
はなへの言及が終わるとエレンは手を差し出してくる。
C拓海「ああ」
その手をC拓海もすぐに取る。
二人にとってもはやお約束のやりとり。
C拓海「今日はどうする?」
エレン「歩きながら考えればいいでしょ」
そうして二人は手を繋ぎながら街へ繰り出して行くのだった…