ジャンルアルトリア同人誌を出すことにした水着バーヌマティーの話
ビーマ
「ジャンルがアルトリアだけってことで、カルデアにいるアルトリアに俺の料理を食べてもらって食レポ本にすると決めたはいいが……それだと表紙がな」
アルジュナ
「アルトリア達の写真では駄目なのでしょうか?」
ビーマ
「いや、写真でもいいとは思うんだがなかなか上手い構図が思いつかないんだ」
アルジュナ
「それで、今は同人誌制作から離れて助力を得るためにある人物のもとに向かっているということですか」
ビーマ
「ああ。……あいつは俺に会いたくはないんだろうが、前回の実績もある。俺としては、あいつに話を聞くのが一番いいだろうと思ってな」
アルジュナ
(誰に聞きに行くのかだいたい察した顔)
「そうですね。前回彼女が出した同人誌の表紙はそのままポスターにしてもサバフェス参加者の目を引くものでした。彼女ならば良い助言をしてくれるでしょう。……彼女が水着霊基であることを願うばかりですが……」
ビーマ
「確か、この部屋で作業をしているんだったな」
アルジュナ
「マスターから伺ったので、間違いないでしょう。……私が尋ねた方が良さそうだ。失礼します──」
???
「あ、アルジュナ…………と、ビーマ」
ビーマ
「は?」(困惑した顔)
アルジュナ
「……どうして、チトラーンガダーがここに?」
チトラーンガダー
「アルジュナこそ、どうしてここに来たんだ? 今はバーヌちゃんが同人誌の最後の仕上げにかかっているところだぞ」
ビーマ
(あだ名で呼び合うほど仲が良かったのか……)
アルジュナ
「私は兄ちゃんと、同人誌の表紙の相談をしに来た。……チトラーンガダーはどうして、バーヌマティーの部屋にいる?」
チトラーンガダー
「バーヌちゃんのアシスタントだ」
ビーマ
「そうか。……なあ、バーヌマティーの霊基ら復讐王妃ではなく、水着か? 水着っつーか、夏の装いだけど」
チトラーンガダー
「復讐王妃であれば、貴様の気配を察した時点で暴れている。……バーヌマティーはこっちだ。呼んでくるから待っていてくれ」
「バーヌちゃん! ビーマとアルジュナが来てる〜!!」
水着バーヌマティー
「は〜い! ちょっと待って保存したら行く〜!!」
水着バーヌマティー
「あらいらっしゃいビーマセーナ。どうしたの? 頭を垂れて蹲う気になった?」
ビーマ
「元気そうでなによりだ(げんなり)。……恥を忍んで頼みたいことがあるんだが」
(中略)
水着バーヌマティー
「ふぅん。同人誌の表紙ねぇ」
チトラーンガダー
「なるほど、貴様らはそうやってジャンルアルトリア縛りを乗り越えたのだな」
アルジュナ
「はい。……ですが、せっかく作っても読まれなければ意味がありません。そのためには、多くのサーヴァントの関心を買う表紙を作らなければなりません。そこで、前回私と貴女たち3人の恋物語を描き上げたバーヌマティーに表紙の相談をしようと思いまして」
ビーマ
「そっちの原稿の邪魔にならねぇか心配だったんだが……アルジュナの言ってた『バーヌマティーの筆の速さはヴァーユの暴風に匹敵する』ってのは本当だったんだな」
水着バーヌマティー
「まあ今仕上げてるの2冊目だからね」
ビーマ、アルジュナ
「……(絶句)」
水着バーヌマティー
「昼間の時間をぜ〜んぶ使って執筆にあてて、食事と遊びは夕方と夜にやればこれくらいいけるわよ。私達サーヴァントに睡眠は必要ないし、気力は食事で回復できるからね。今回はちーちゃんがアシスタントしてくれてるのも大きいし」
チトラーンガダー
「ちょ、ちょっとバーヌちゃん! アルジュナの前でその呼び方はやめてよ!」(赤面)
アルジュナ
「…………」(ニコニコ)
水着バーヌマティー
「まあ、そんなわけで今2冊目が終わるところだし、特別に相談に乗ってあげるわ。私は慈悲深きクルの王妃。助けを求める哀れな子羊を導きましょう。ほら、いらっしゃい。さあ、表紙の案を見せてもらうわよ」
チトラーンガダー
「では、私は印刷所に連絡をしておくぞ」
水着バーヌマティー
「ちーちゃんよろしく! 終わったらラーメン食べようね!」
チトラーンガダー
「だからちーちゃんはやめてってばぁ!」(赤面)
水着バーヌマティー
「実際にアルトリア達に撮影に協力してもらうってことだしこんな感じにしたわよ。あとは自分たちで絞って決めなさい。あなたたちの同人誌なんだから」
ビーマ
「おう、ありがとな!」
水着バーヌマティー
(調子狂うわね、ほんと……)
アルジュナ
「……バーヌマティー。一冊目はもう完成しているのですよね?」
水着バーヌマティー
「うん、してるけど」
アルジュナ
「一冊目は何を描いたのですか? ジャンルはアルトリアのみと制限された中でも貴女の筆の速さが鈍らないのには感服しましたが……貴女が何を描いたのか、興味があるのです」
水着バーヌマティー
「フフ、いいわ。気晴らしさせてくれたお礼にサンプルを見せてあげます。ほら、そこでボーっとしてるビーマセーナ。特別にあなたにも見せますから、ありがたく読みなさい」
ビーマ
「俺もいいのか。どれどれ……。…………なるほどな。学園モノで、主人公と同じく弓道をやっている男勝りなヒロインが主人公への恋心に気づくところから物語が始まるんだな。しかし女子にモテる主人公の周りにいる女子生徒はみんな小さくてか弱くて愛らしい女子生徒ばかり。自分は背も高く、腕っぷしも強く、とても可愛いとは言えない。そんなヒロインがイメチェンをしようと一念発起して、可愛くなろうとあの手この手で努力をする。ヒロインが可愛くなると男子からはチヤホヤされ、女子からは妬まれるが主人公はつれない。そんな中、クラス全員で夏祭りと花火大会に行くことになる。ヒロインは浴衣を着ておしゃれして参加して、主人公にモーションをかける女子生徒に混ざってアピールするが主人公は動じない。困っているうちに、泥酔した中年男女が若い男女と喧嘩をしているところを見かけて、ヒロインは助けに入る。中年女が若い女性を殴ろうとしたのを止めて冷静に諭すヒロインだったが、そんなヒロインに腹を立てた中年男に殴られてしまう。そこで主人公が来て助けられた。ヒロインは情けないところを見せてしまい幻滅されたと絶望するが、むしろ主人公はヒロインの強いところに惚れて、最後は花火大会を二人で見て告白して終了……か」
水着バーヌマティー
「要約ありがとうビーマセーナ。どう? この私の完璧なテンプレのラブコメは。テンプレとは、万人に愛されるからこそテンプレ……だからこそ王道に乗っかってみたわ。主人公は大人びたアルトリア、ヒロインは少女のアルトリアに似せてみたから正常化委員会にもオッケーされた渾身の一作よ」
アルジュナ
「チトラーンガダー」
ビーマ
「アルジュナ、どうしたんだ?」
チトラーンガダー
「な、なななななななに? あるじゅな」
アルジュナ
「アルトリアのジャンルでカムフラージュできるからといって、自分の話をまたバーヌマティーに描かせたのですね……」
チトラーンガダー
「ち、違うもん!! 私がネタを出しただけだもん!」
水着バーヌマティー
「あー、やっぱりそうだよね? 描いてるうちにデジャブ感じてたんだよねー。私、ちーちゃんの話好きだから描いたけど」
チトラーンガダー
「なにこれ公開処刑!? ねえちょっとやめてよアルジュナ! 言っていいことといけないことがあると思います!」
水着バーヌマティー
「まあまあいいでしょ? アルトリア顔だからバレないし」
ビーマ
「俺はアルジュナに言われるまでお前とアルジュナの話だと気づかなかったしな!」
チトラーンガダー
「うぅ……もう座に帰る……」
水着バーヌマティー
「あれ? ◯郎食べないの?」
チトラーンガダー
「食べる…………家系も食べる…………」
ビーマ
「……何だそれ?」
水着バーヌマティー
「あらあらあらあら……フフフフフ。厨房に籠りきりのビーマセーナともあろうお方がラーメンの人気ジャンルをご存知ない? それでも料理人なのかしら?」
ビーマ
「お前のこういうところ、ドゥリーヨダナの妻って感じだな」
アルジュナ
「聞いたことはあっても食べたことはありませんね。兄ちゃん。せっかくですし食べてみては?」
ビーマ
「そうだな。腹も減ってたし丁度いい」
水着バーヌマティー
「あら、そう。ならば私が奢りましょう。フフフ、私は偉大なるクルの王妃。金ならあるからね。フフフフフ……」
チトラーンガダー
「よし、じゃあ今日こそヤサイマシだけにしなきゃ」
水着バーヌマティー
「あれ? ちーちゃんはラーメン大盛りに全部マシマシが好きなんじゃなかった?」
チトラーンガダー
「バーヌちゃん!!!!!!」
ビーマ
「ちなみに二冊目は何を描いたんだ?」
水着バーヌマティー
「スヨーダナが最近和菓子にハマっていて、食べているところを写真に収めたりしていたのだけど……高確率でアルトリア達と一緒に映っていたのよ。だからそれの写真集にしたわ。挿絵もつけてね。挿絵にはちびキャラのセイバーオルタが何を食べているかの解説をしているのよ」
アルジュナ
「…………兄ちゃんの本とジャンルが被っていませんか?」
チトラーンガダー
「いや。私達の本の主題はスヨーダナとアルトリアが和菓子を食べる写真で、ビーマ殿の本の主題はアルトリアによるビーマの料理紹介だから違うと思うぞアルジュナよ」
ビーマ
「同じじゃねぇのか?」
水着バーヌマティー
「これが同じだったら、あなたとアルジュナと、ドリタラーシュトラとパーンドゥも、怪力の兄と弓取りの弟だし一緒だよねって言えるわよ」
ビーマ
「全然違うんだな……」
水着バーヌマティー
「そうよ。だから自信を持って出版しなさい。我が夫の宿敵であるビーマセーナが弱気であるなど許されませんから」