ジャヤ島inアド1
ロッシ引退で悲しいワンピース復帰勢「ルフィ、強くなったね。」
ベラミー海賊団に買う必要のない喧嘩を売られたが、拳を出さず耐えたルフィ達。黒ひげに激励された後、一人の少女が声をかけた。
「…!お前、アドじゃねえか!ひっさしぶりだな~!」
「え、この子誰?」
「ルフィお前…なんでこいつと知り合いなんだ?」
「ゾロ、この子誰だか知ってるの?」
「お前知らないのか!?こいつは蜃気楼のアド、あの赤髪海賊団の幹部だぞ!」
驚愕して声も出ないナミにアドは礼儀正しく一礼した。
「初めまして。」
「あっ…ど、どうも…。ところでルフィ、なんでこんな凄い人と知り合いなの?」
「ああ、こいつは、シャンクス達と一緒にフーシャ村に来てたんだけど…」
「昔話は後で。今は治療しないとね。船医はどこに?」
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モンブラン・クリケットという男を探していると麦わらの一味から聞いたアドは、姉を探すという自分の目的から少し寄り道をしてそれに付き合うことにした。
「ハボック・ソナー!」
猿山連合軍のショウジョウの声による攻撃でメリー号が崩れかかり慌てる麦わらの一味。
「サイレント。」
「どうなってんだ?外の音が聞こえねえぞ!?」
急に攻撃が止み驚くウソップにアドが答える。
「これは私のナギナギの実の能力。船を囲うように発生させたこのドームの外の振動は、ドームの中に届かなくなる。音とか衝撃波とか色々ね。さ、今のうちに行こう。」
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麦わらの一味は何だかんだ猿山連合軍と仲良くなり、空島へ行く手伝いをしてくれることになった。モンブラン・クリケットに、サウスバードを探せと言われた麦わらの一味は、森に探しに行くことに。
アドは残り、メリー号の強化をしているモンブラン・クリケットと少し話をしていた。
「君は、あの四皇赤髪の娘だろう。本当は知っているんじゃないか?空島があるのかを。」
「…父はロジャー海賊団の見習いでしたから、色々と話は聞いています。」
「…!」
「でも、おじさん達とルフィ達自身で答えを探さないと、きっと意味がないと思います。それでもいいなら…。」
「いや、君の言う通りだな…潜水病になって、思うように体が動かなくなってきて、少し焦っていたのかも知れない。ゆっくりでも、自分達で答えを見つけるさ。」
「…私も体が弱かったから少し気持ちが分かります。でも、赤髪海賊団のみんなが支えてくれた…おじさんにも、そんな仲間がいるじゃないですか。」
「ああ…そうだな。すまねえ。」
「きっと、おじさん達とルフィ達なら。少し風に当たってきますね。」
(…邪魔はさせないよ…。)
アドは研ぎ澄まされた見聞色の覇気で、こちらに近づいてくる船の気配を感じとり、そこへ向かった。
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金塊があることを嗅ぎ付けたベラミー海賊団、入江に船を繋ぎモンブラン・クリケットの家に向かおうとするが、そこに一人の少女がいた。
「おい、そこの女、なに突っ立ってるんだ?」
「…金塊を奪いに来たんでしょ?ここから立ち去って。今なら何も見なかったことにしてあげるから。」
ベラミー海賊団は大笑い。
「ねーちゃん一人に何が出来るってんだよ!」
「空島なんてもの信じてる妄想野郎どもから奪って何が悪いんだ!?」
アドの表情が冷たくなっていく。
「おじさん達は友達なんだ。邪魔しないでほしいかな…。」
そこにベラミーが姿を現した。
「おいそこの女。パンチの撃ち方知ってるのか?」
「…。」
「は~、もういい。邪魔だ。スプリングスナイプ!」
サーキースはやれやれと思った。
「おいベラミー!殺さない程度にしておけよ!」
(しかしあの女どこかで…いや、それはあり得ねえ。こんなところにいるはずが…。)
ゲラゲラと笑い声が聞こえる中、ベラミーがアドに突っ込んできた。しかしアドは、まるで未来が見えているかのようにヒラリと避けた。
「フン、運が良かったな。」
アドは何も答えない。
「気味の悪い女だなァ。スプリングホッパー!」
ベラミーは崖と崖の間を高速で跳ね回る。
「海賊が夢見る時代は終わったんだよ!」
「パンチの撃ち方知ってるかって言ったよね…?」
次の瞬間、アドが抜いた二丁拳銃から放たれた銃弾は、ベラミーの両膝に音もなく撃ち込まれた。
ベラミーは空中から落下し、アドの目の前に落下した。
「ぐわあああああ!!!」
「パンチは得意じゃないけど、銃の撃ち方なら知ってるよ?」
「おいおい嘘だよなベラミー!?クソ!大刃撃!」
サーキースが大鉈による攻撃を仕掛けるが…
「…ひっ!?」
アドは攻撃を見切ってサーキースの後ろを取り、後頭部に銃を突き付ける。
「もう一度だけ言うよ。失せろ…!」
「う.…うわああああああ!!」
サーキースは情けない声を上げながら自分達の船に向かって逃げた。
目の前で何が起きたのか理解出来ないベラミー海賊団の船員達に向かって、アドは足元で痛みに泣きわめくベラミーを蹴り飛ばす。
「おいサーキースどうなってるんだ!?二人ともやられるなんて――」
「いいから逃げるぞ!!あいつは…あいつはあの蜃気楼のアドだ!」
それを聞いたベラミー海賊団の船員は戦慄した。
赤髪海賊団のナワバリのとある島(アドが体調不良で船を一時的に降りて滞在していた島)に、赤髪海賊団が不在の隙をついて海賊の大船団が襲いかかった。その中には億超えの賞金首が何人もいたという。
しかし、"蜃気楼"によってたった一夜にして"音もなく"殲滅された話を数ヶ月前に新聞で知っていたからだ。
「な…なんであんな化け物がこんなところに…」
「うるせえ!いいから早く船を出せ!俺達全員殺されちまうぞ!」
(ルフィ達、サウスバードを捕まえたみたいだね。)
森から出てくる麦わらの一味の気配を感じとり、アドは今起きたことを悟られないよう、こっそりと帰った。
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「色々バタバタして自己紹介が遅くなっちゃったね。私はアド。赤髪海賊団の銃士兼絵本作家、よろしくね。ルフィがいつもお世話になってます。さてと―――」
そう言うとアドはスケッチブックと鉛筆を取り出した。
「よければ今までの冒険のこと、沢山聞きたいな。」
「おう!いいぞ!どっから話すかな~?」
「アドちゅわ~ん!特製コンソメスープはいかがですか?」
「い…いただこうかな…?」
「コラ、サンジ君!引いちゃってるじゃない!」
ノックアップストリームが起きるまでまだまだ時間があるルフィ達は、今までの冒険を振り返り始めた。
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『―こうして、すなのおうこくをしはいしていたおおきなわるいワニは、おうじょさまとなかまによってたおされました。すなのおうこくにはみんなのえがおと、たくさんのあめがもどってきました。』
(うん、いい感じ。)
「そう言えば、ルフィとアドはなんで知り合いなんだ?」
アドにモフモフされながらチョッパーが尋ねた。
「私は、赤髪海賊団のみんなと一緒にフーシャ村に一時期滞在していた時があったんだ。」
「じゃあ、エースとも知り合いなのか?」
「いや、それは違うぞチョッパー。シャンクス達がフーシャ村から出港した後にエースとは知り合ったからな。あ、そう言えばエースとはこの前アラバスタで会ったな~元気にしてるかなぁ?」
(…!ティーチとエース君がぶつかるのは、もう時間の問題か…。)
「あれ?でもアドとエースって会ったことあるのか?」
「え…うん、私達の海賊団のところに、ルフィが世話になったってお礼しにわざわざ来たことがあったからね。そこで仲良くなってさ。」
「そっか~。ところでアド、お前なんでこんなところにいるんだ?シャンクス達のことあんなに大好きだったじゃねぇか。」
「…っ、それは…。」
アドはルフィ達に心配をかけないよう、エースにこれから起きかねない事態を思案しつつ、自分が探している姉"ウタ"の名前を出さないよう慎重に言葉を選んで話し始めた。
「…人を探してるの。そのことでお父さんと大喧嘩して今は家出中なんだ。いいルフィ、これから私やエース君に何が起きても、ルフィはルフィの仲間のみんなと冒険を続けて。約束だよ。それと――――」
今までに見たことがない真剣な眼差しでアドは言葉を続けた。
「"しんじだいの約束"、忘れてないよね?」
「おう!ま~まだどうすっか決めてねぇけどな~、ししし!!!」
「よかった。さて、そろそろお暇しますか。ありがとう、今日は楽しかったよ。」
「え~もう行っちゃうのか?親父の武勇伝もっと聞きたいのに~。」
ウソップにごめんね、私も用事があるのと言った後、アドはペコリと頭を下げた。
「麦わらの一味のみんな、ルフィをよろしくお願いします。」
アドは蜃気楼の如く、姿を消した。