ジガネモとパルツバタ

ジガネモとパルツバタ


⭐︎独自解釈(特にレジェアル関連)を多分に含む。

⭐︎エミュスキルなんてねぇよ!

⭐︎駄文長文尻スボミー





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光がさんさんと降り注ぐ中、穏やかな風が木々を撫でる。その木々の合間から空へと羽ばたいた複数の影は、鋼の羽音を響かせながらゆったりと来訪者を観察している。鋼の兜から覗く眼差しは、今しがた来たばかりの二人の人間と見慣れない1匹のポケモンに向けられていた。

「……うんうん、やっぱり事故だね…カキツバタ?」

二人の人間ーーネモとカキツバタの手前でまごつく1匹は項垂れながら、3対の翼で浮遊している。不思議な事にその翼は妙に関節が剥き出しで、耳を澄ませば羽音というより駆動音が聞こえてくるのである。


「へいへいっと…あの亀坊の寝返りも困ったもんだねぃ」

あいよ、とカキツバタは指先で空をなぞる。瞬きのうちに出来た割れ目からは、こことは似つかぬ風景が広がっていた。彼らの目の前のポケモンはそれを見るや、顔に安堵の表情を見せて割れ目へと入っていった。

「災難だったねー!今度はあんまり変な穴入り込んじゃダメだよー!」

穴の向こうへと去っていくポケモンに、ネモは元気に手を振った。


開いた穴を元通りに戻しながら、カキツバタは会って以来の質問をネモに投げかけた。

「アンタ、秩序がどうたら…って権能持ってんだろぃ?ここの事はノータッチなんだねぃ」

エリアゼロの一部のポケモンは、時代や世界を超えてやってきたいわば外来種である。秩序を守るとされる存在の目にはこの地はどう映っているのか、かねてから気になっていたのだ。


「そうかな?今みたいに帰りたい子見つけたら遠慮なく呼んでるけど」

「毎度呼びつけられる身にもなってくれぃ…じゃねぇやそこは亀坊を責める気もねぇし。

いやオイラ的には…ここのポケモンいつか外に出たら今の生態系割と大打撃じゃねぇのかいって事な」

「あー、なるほどね?」

ネモはカキツバタを横目に一瞥した後、視線を前へ戻して質問に答える。

「だって命の総数は大きく変わらないからね」


カキツバタが思わず見やったネモの横顔は涼やかだ。ネモの返答は即ち、生きた何かが星に存在すればよいと取れる。極論人間どころか本人が不要となる事さえ許容する、という機構的な返答であった。

「…思った以上にシステム重視だねぃ」

「そういう意味での答え、聞きたかったんでしょ?とにかく、ここにパラドックスポケモン達が沢山来たところでジガルデとしてやる事は無いよ」

そういうもんかねと溢しながら頭を掻くカキツバタに、今度はネモが問いかけた。

「逆にカキツバタはあれ以降、マメに人間社会を見てるんだね 壊さなくてよかったの?」


カキツバタの腕が止まる。

近くの木々の葉を擦らせていた風も、空を飛び交っていたポケモンの羽音もいつしか消えていた。


ネモが問うたのはヒスイの神殿で起きた一件に他ならない。ギラティナと一人の人間により乱れた時空を以て、アルセウスの分け身であるディアルガとパルキアはこの世界の存続を人の身に委ねた。方や人の側に立ち、その異常な乱れを正す為に導く。方や乱れた時空の荒御魂として顕現し、他世界への波及前に世界を終わりへ誘う。カキツバタの本体たるパルキアは、後者の役割であった。


主神に刃向かった分身は未だ健在であり、その意味では危険性がそのままであるこの世界を壊してやり直さなくてもいいのか。ネモは純粋な疑問を述べたに過ぎないが、カキツバタが心を落ち着けて回答するには数刻必要だった。

「……阻止されちまったからねぃ」

「それだけ?」

「いんや?……オイラ、気に入っちまったもん」

「結構本気じゃなかった?カロスの『ジガルデ(ワタシ)』がそっち見てたぐらいだよ?」

「モチロンあんときゃ本気も本気よ。手ェ抜いたつもりはこれっぽっちもねぇ。ただ…オイラの分は無い筈だった『あかいくさり』、カケラ拾ってまで細工して寄越したんだぜ…って言ってもピンとはこねぇよな」

長くなるしなぁとボヤくカキツバタに対し、まだ帰りを気にする時間でも無いのを確認したネモが仔細を催促する。ネモのとどまらない好奇心を前に致し方なし、と髪を項垂れたカキツバタはかいつまんで伝える事にした。



あかいくさり。その機能とは時空を司る存在を繋ぎ止める事であるとも、世界を正しく見る事であるとも言われる。

「本来の力だと何をするにも大振りでねぃ。あかいくさりはその世界で出していい力まで制限させる物差しになんのよ」

「『オイラの分』とか言ってたね」

「3匹が寄って作るんで基本一点モノでな…先に顕現したのはディアルガだったから人間達はくさりを渡してディアルガもそれを受け取った」

つまるところディアルガが人と共に世界を守る側に立ち、パルキアは荒御魂として世界が存続に値するか試練を課す役割となった。くさりを受け入れ力を抑えたディアルガと共に、ヒスイの人間達は起源の力を持ったままのパルキアに挑んだ。

「勝利条件は?」

「『パルキア(オイラ)』を倒すに決まってらぁ」


だがカキツバタが述べた通り、ヒスイの人間達はパルキアを葬る事なく鎮めた。「シンオウさま」の力が宿るとされる鉱石を探し出し、既に砕けたくさりのカケラを集め、まだ開発されたばかりのボール形に落とし込んでパルキアを捕らえたのだ。

「そもそもくさりって物差しにゃ、3匹の分身達が生き物達の心から集めてきた『世界の見え方』がサンプル詰め合わせーって感じでギュギュッと入ってんのよ。で、オイラ達はそれ見ながら力と考え方のスケール感を合わせてくんだ」

「すごい、よく分かんないけど」

「…まぁアレだわな、くさりで見た『人間の世界の見え方』がツバっさん的にどストライクだったワケよ。本来ならくさりは1匹繋いでお役御免、オイラは役割上見れもしねぇ筈のモンまで投げて寄越して…自分達の信じた神とは違ったのに対等に敬ったんだ。そりゃもう体験コース、いっちょやっか!ってねぃ」


パルキアにとって、世界とは視野全体以外を指すことは無い。その視野が世界のサイズに合わせて大小こそするが、力の行使範囲である事は一切変わらない。

対して人間は時に自身に全く関係のない場所、時に既に失われた過去さえも己の思考に組み入れる。歴史を探究する者と現生生物を探究する者、或いは同一人物の昨日と今日。短い時のうちにころころと変化して時には関わり合って認知世界を広げていく様は、最初から全て見えているパルキアーーすなわちカキツバタの心に、ある種の美しさとして響いていた。


「じゃあカキツバタは人間になろうとは思わなかったの?」

「オイラはオイラ自身が見たものを『パルキア(オイラ)』にフィードバックしたいんでねぃ」

「あーそこは分かるかも?バトルとかすっっごく楽しいし変な言い方だけど本当に『人間してる』のすっごく楽しいから!流石にゼロになっても良い生き物だなんて思えないし本体にもそう言いたいかなー」

あーバトルしたくなってきた、と天を仰ぐネモにこの人物も随分人間に入れ込んでいるという事をカキツバタは理解した。


「そうは言ってもアンタ秩序方面やる気ないんだろぃ?」

「ジガルデとしてやらないだけだからね!私は全然人間の味方でも何でもやるかもって事!」

「さっきと言ってる事違くねぇか?」

「私フォルムにしたら5%くらいの能力だから私1人でどうにか出来ちゃう事なんて微々たる揺らぎでしかないよ?だからわ た し は!全力で何やってもオッケー!って感じかな!」

屁理屈じゃねぇかぁ?というカキツバタの疑問は真っ当ながら、ネモがそれを認める事はなかった。



互いに多少腹を探ったという実感があったせいか、両者は揃って腕を伸ばして体の緊張をほぐす。その腕に沿って目線を上へと上げていたネモが、未だ降り注ぐ光にハッと息を飲んでカキツバタへ向き直った。

「ここ、夕方になってもお日様沈まないんだった!」

「マジか」



結局、その日カキツバタは帰りの交通機関に姿を見せなかったにも関わらずいつの間にかリーグ部の部室に帰ってきたという。

---おしまい---



⭐︎書き終わってからジガルデの説明見たらちゃんと生態系単位でゼドアーッするっぽいことを知った。ごめんネモちゃん。仮にタイムマシン活発化して本パラドックス大量流入し始めたら本体ちゃんと動きそうだから存分に人間のこと贔屓してくれ。

⭐︎亀坊とはテラパゴスのこと。タイムマシン以前からいるパラドックスは多分この子の力でワープして来てるんだけどもしそうなら休眠中でもポコジャカ飛ばす寝癖の悪い亀ちゃんだなって思いましたまる

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