ショタ地右衛門に断髪してもらうだけ

ショタ地右衛門に断髪してもらうだけ


ショタ地右衛門モブレ

モブレだけどエロさは無い

可哀想

地右衛門視点にしたせいで名前が出てこない

読みにくい

可哀想






自分の髪にこれといった思い入れはない。すぐにぼさぼさになるし、特に珍しい色と言う訳でもない。

だけど、おっ母の温かい手が髪を梳いてくれた時のくすぐったさと、おっ父が大きな手で髪をぐしゃぐしゃにしながら褒めてくれた時の嬉しさは、大切な思い出だと思っている。


けれど今、二人が優しく触れてくれた髪は、名前も何も知らない男に乱暴に解かれて、掴まれている。ぶちぶちと嫌な音を立てて髪の毛が抜けていく。


「あ、あぁ、あ゛っ……!」


引き攣った声がこぼれた。引き裂かれるような痛みにぼろぼろと涙があふれていく。

痛い。痛い。いたい。こわい。だれか、たすけて。

そんな言葉が全部、意味の無い悲鳴に変わっていく。


「やっぱガキは締まりがいいなぁ……!」


男が髪へと触れる。おっ母と違って冷たい手が、おっ父と違って乱暴に、髪を引っ張る。


「男でも案外イケるもんだな、髪が長ぇから、後ろから見りゃ女に見えなくもねぇ」


そんな事を言いながら、男はげらげらと笑っている。

何をされているのかも、何を言われているのかもよく分からない。分からないけど、苦しくて、悲しくて、悲鳴と涙が止まらなかった。




死ぬまで続くかと思った時間は、満足そうに笑いながら男が立ち去った事でようやく終わった。

身体はどこもかしこも痛くて、どろどろで、外も中も全部が汚く思えて仕方なかった。


「っ、うぇ……」


べちゃべちゃと、吐き出したものが地面へと落ちる。吐いて、吐いて、喉が切れたのか血が混じっても吐き続けて、胃の中が空っぽになるまで吐いた。

そして吐き終わって、解けた髪を結ぼうとして触れた手に、どろどろとした白い液体がまとわりついた。


「……あ」


男にされた事、言われた言葉がぐるぐると頭の中に流れていく。

これからはきっと、自分の髪に触れる度に名前も知らない男の顔を思い出すのだ。おっ母とおっ父の思い出を上書きして、あの、悪夢のような時間を。


「……ぐすっ……」


目が痛くなるほど泣いたのに、また涙があふれだす。

本当に泣き虫だねって言いながら撫でてくれる人も、大丈夫だって抱き締めてくれる人も、ここにはいない。もう、いない。


「ひっ、……うぅ……っ」


涙でゆらゆらと揺れる視界の中に、どこかの侍が落としたらしい短刀が落ちているのが見えた。

それを掴んで、迷わず髪へと押し当てる。ばらばらと白く汚れた毛が、地面へと、吐瀉物の上へと落ちていった。

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