シャンクス♀だった場合のSSもどき

シャンクス♀だった場合のSSもどき


 私は女の子だけど、男の子のバギーより強かったから。

 2人で大変な目に遭った時は、私がアイツを守ってやろうと心に決めていた。

 だからあの地獄での行いに後悔は無い。

 この傷も痛みも、より多くの苦しみから少しでも兄弟分を守ってやれたのだと誇れる勲章だ。

 本気で、心の底から嘘偽りなくそう思っている。

 ……だというのに。

 ロジャー船長たちから助けて貰った今になっても、あの頃の記憶を夢に見る。

 背中に押しつけられた焼きごての熱さ。

 膣の入り口をナイフで切り裂いて血のぬめりで突っ込まれた男性器。

 こうすればお前の真っ赤な髪が伸びたように見えると、上から下に振り下ろされ続けた鞭の縦痕。

 戯れに打たれた違法な薬物の数々。

 今日の餌だと犬用の皿に乗せられた他の奴隷たちの死肉。

 殴る蹴るからバギーを庇えた時の鈍い痛み、バギーを庇えなかった時のそれを見ている鋭い痛み。

 何もかもが私を捕らえて離さない。

 なんてことないんだって自分に言い聞かせても、そんな訳ないだろうと己の無意識がそれを否定してくる。

 でもこんな弱みを見せたら、バギーにもロジャー船長やレイリーさんたちにも心配をかけるから。

 朝と昼はできる限り平気なフリをして、夜、1人になったら布団の中でガタガタ震えて自分の身体を抱き締める。

 勝手に歯が鳴らないように唇を噛んで。

 目を閉じると瞼にあの頃の幻影が浮かぶから、勝手に脳が深く眠ってくれるまでずっと起きて部屋の隅を見ている。

 当然、助け出された日から一週間たってもこの調子なんだから、寝不足が酷くて頭はガンガンと鐘を叩きっぱなしだった。

 それでも周りの皆に迷惑かけるよりはマシだ。

 早く元の明るく無邪気で小生意気な末の見習い娘に戻りたくて、心が追いついてくれるように、まずは体からそう振る舞う。


 一一シャンクス。

 大丈夫。お前は強い奴なんだから。

 ロジャー船長のような、麦わら帽子の似合う自由な海賊になるんだから。

 女だてらに同年代の子には負けたことないくらいの腕っ節なんだから。

 だから。だから。

 こんな風にズルズルと恐怖ばかり引きずっていては駄目だ。

 だってこんなの、普通の女の子みたいじゃないか。


 天竜人やその取り巻きたちに投げられた暴言が脳裏をよぎる。

 いっぱしの海賊のつもりでも、お前は所詮、こうして男に嬲られるしか能の無いただの雌なのだと。

 泣き声が娼婦のようだと。

 そんな風に悲鳴を上げる女が剣や銃なんて扱える訳がないと。

 奴隷の印を焼き付けられたばかりの背中に爪を立て、野郎共の出したもので汚れた髪を手で乱暴に引っ張って、前から後ろから快楽なんてあったもんじゃない挿入をされながら、そんなことを口々に言われた。


 目の前でマワされる私を見て、私よりもバギーが辛そうだった。

 目元を鼻に負けないくらい真っ赤にして泣いているアイツを見て、そんな顔をしてほしくなくて笑った。

 そうだ。

 私が笑っている時だけはアイツが少しマシな顔をしてくれたし、何より、こんな目に遭ってもちゃんと笑える私は将来きっと立派に海賊としてやっていけるって。

 そう思いたくて、どんなことをされたってずっと笑っているようにしたんだ。


 そうやってあの地獄を、ロジャー船長たちに助けて貰えるまで乗り切ったんだから。

 きっと大丈夫。この苦しみの余韻だって、いつもみたいにヘラヘラ笑って平気なフリをしていれば、きっとどこかへ行ってくれる。

 我慢し続けよう。ろくに眠れないのも、頭が痛いのも、心臓がうるさいのも、太陽が眩しすぎるのも、足がふらつくのも、傷が疼くのも、吐き気がするのも、他のことだって全部。

 そうすれば、私はきっと強い生き物でいられる。

 バギーや船長たちを安心させられるシャンクスでいられるんだ。

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