△△△△シティにおけるとある騒動について
みつけてください児童向けオカルト本「ポケモンよりも不思議?」シリーズ四巻、「ポケモンよりも不思議?本当にあったオカルトミステリー!?」より抜粋
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ミステリーNo.18 △△△△シティの悪夢……狂気をもたらすきのみ
20xx年xx月xx日、△△△△シティは異様な雰囲気に包まれた。飛行場と農場で知られるこの街の朝は早い。その日も、早朝から多くの人がせわしなく動いていた……のだが何かがおかしい、何か引っ掛かるものがあったと語るのは、騒動の第一発見者であったD氏である。
「私は当時、飛行場で整備士をしていました。その日も普段のように幾つかの点検を終え、一時の休憩をとっていたんです。すると、滑走路近くの畑が妙に騒がしいのが気になりました。休憩時間はまだある程度残っていましたから、様子を伺ってみることにしたんです。」
D氏はそこで信じられないものを目撃する。
いよいよ収穫の迫っていた筈の畑が、どこまでもどこまでも荒らされていたのだ。作物は乱雑に切り倒され、土も端から端まで掘り返されている。
どうやら、掘り返された土は畑の中央に運び込まれているようだ。
「十数人が土を必死になって運び続けていました。しかし、この人数とはいえこれだけの敷地を荒らすには夜通しの作業が必要になるはずです。私の考えを裏付けるかのように、彼らの目は真っ赤に血走っていました。」
驚くべきことに、畑荒らしはこの農場で働く人々であった。D氏は彼らに対して何をしているのかを問いかけたが、反応は皆同様「まだある。」としか言わない。淡々と、ただ土の音だけが轟々と響いていく。
「しばらくすると、中央に盛られた土の山が崩され、一つの形へと削り出されていきました。死体が腐っていく過程を逆再生したような感じです。最終的には、一人の女の人の姿が見て分かるようになりました。土で出来ているはずなのに、肉を感じさせるほど精巧な出来栄えです。私は思わず息を呑み、そして言いようもない不安と恐怖に駆られ続けていました。何か、これが完成したらマズイことが起きる気がする。今すぐにでも彼らを止めるべきだと、本能が告げていました。
……その時です、彼らは一斉に叫び始めたんです。
「見つけた」 「見つけた」 「見つけた」 「見つけた」 「見つけた」 「見つけた」
「見つけた」 「見つけた」 「見つけた」「見つけた」 「見つけた」 「見つけた」
」
……「見つけた」と叫んだ直後、彼らは一斉に失神した。D氏の通報によって農家達は緊急搬送、現在は全員が意識を取り戻しているという。
調査の結果、奇行の原因は栽培されていた「きのみ」に蓄積した幻覚成分によるものと判明。当該農場で栽培されていた作物は全て廃棄の上、農場自体の土壌も完全に入れ替える形で一連の騒動は幕を閉じた。
だが、この事件は一つ大きな謎を残している。原因とされた「きのみ」は本来幻覚成分など持っていないのだ。では何故…土壌に散布された肥料に「ナニカ」が紛れ込んでおり、それが植物に取り込まれてしまったという話もある。その「ナニカ」、そして「土で作られた女」……関連性を感じるのは私だけだろうか……