ザフトの新しい赤服ちゃんがオウくんに分からされる話⑤

ザフトの新しい赤服ちゃんがオウくんに分からされる話⑤


「いやはや……やはり凄いな赤服、もうこりゃ勝てないよ」

 彼の口からその言葉が出たのは、あれから5回目の地上戦に勝利してからだった。あれから私は、もうあんな醜態をイザーク艦長の前で晒すまいと、私は専用機と同じザクファントムで、彼のジンと戦った。

 2度目は先程の様には流石にならなかったが、それでも重斬剣が私のコックピットを貫いた。

 3度目でイザーク艦長のアドバイスをしっかり理解できたか、行き着く暇も無い射撃を放つもその雨を掻い潜り0距離でコックピットを撃たれた。

 4度目、私からも一気に間合いを詰めて相打ちになった。

 5度目……私は勝つことができた。

 シュミレーターなのに汗が酷い、それはオウさんも同じだった。彼の口から『勝てない』と言わせる事ができた。

 ただし、彼はジンのままだった。いくら専用機でOSを弄ったとは言うが、私は四度もジンに殺されたのである。その事実は変わらない。

「流石に時間を取りすぎたな、明日の事もあろう……付き合わせて悪かった」

「いいよイザーク、久々にジンに乗れて楽しかった……彼女と戦う事が無い事を祈るよ」

 明日のライブもあるからと、イザーク艦長は彼を帰し、シュミレーションルームで私と二人きりになると、艦長は話しだした。

「あのジンは……俺が戦場で幾度と対峙し落とせなかった機体だ」

「そう……なんですか?」

「こちらは地球軍から奪った、デュエルという当時最新鋭の機体で武装も、性能も上回っていてだ……まるでこちらの撃つ場所、近接戦のタイミングすら見抜いて動かれた……お前も感じなかったか?」

 シュミレーション中の違和感を指摘され、私は汗だくで疲れながら思い返す。幾度と、まるで狙いを見抜かれたような、気配を捉えられたような、未来視じみた事をしなければできない挙動を彼はしていた事に。

「つまりお前は、昔の俺が落とせなかった機体を……そこからさらに成長して上手くなったあいつの機体を、5回目で倒したわけだ」

「え、いやしかし……私は……」

「誇っていい、今後も1回目の慢心を捨てて腕を磨け」

 私に送られたのは、叱責でなく賛辞だった、今後も励めとイザーク艦長はそう言ってシュミレーションルームを出ていった。

 私一人になったシュミレーションルームで、シュミレーターの座席に座ってまだ映る画面に目を向ける。隊長が、叱責どころかこんなザマでよくやったと言ってくれる程に、オウ・ラ・フラガというナチュラルのパイロットの力を私は実感したのだった。

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