サーカスの賑わい
これはただの想像。落下傘のようなサーカス小屋。暗い辺りと格子に、光が当てられた中心部分。
ノスタルジーを感じるピエロと派手な格好の演者。
それを見ている僕と他の知らない皆さん。
幾時代かありまして、茶色を超えた溝色の三原色が映える時代となりました。冬も過ぎた春先に咲く花も、夜は小屋が代わりに咲きます。
今宵の演目は様々。呆然とブランコを眺めながら酌する人々も疎。ゆあーんと揺れるブランコには仮面を被った知らぬ演者。面白げな仮面をつけては手を振り、振られた子供も振り返しています。
高い梁から人影がなくなると、次に出てくるのはリボンを持った演者。桃色や青色のリボンをひらひらと揺らして投げ、柄を掴んではくるくる回っています。
集客された観衆は皆鰯のようにして向きを変えては視線を変え、目紛しく回り映る光景に手を叩き、時には青ざめ、そして最後には喜びます。
楽しいのでしょうか。サーカスは。
ふと瞬きをすると、光景が移り変わります。
演者の顔が露わとなりました。
そこにいるは総勢30名以上の見知った顔。それを見ているのは何者でもない僕です。
まだ染まらず、何色になろうかすらも分からないオーニソガラムを抱えて座り、その光景を見ています。
美しい光景でしょうか。
サーカスをも超えたミュージカルのような、悲劇と喜劇が織りなす物語を見るのは。
いいえ、きっと美しいでしょうね。
ならば、僕は何に———
いや、今はいい。
今は、揺れるぶらんこから風を感じて、ただ揺られていたい。
ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよん、と。
引用と参考:中原中也『サーカス』