コピペしたss其の一

コピペしたss其の一


 新世界の中でも凪の帯にほど近い場所に『陸珊瑚島』は位置していた。

 土地の大半が陸生の珊瑚に覆われ、農地に乏しい上に猛獣が徘徊する過酷な環境のこの島にも人間は住んでおり、そしてその環境からくる貧しさから天上金を支払うことが出来ずに世界政府の庇護を受ける事が出来ないでいた。

 にも関わらずこの島は多くの海賊がその立地から拠点として狙い襲撃することが後を絶た無い。

 この島を縄張りにして居た『白ひげ』エドワード・ニューゲート亡き今、この辺鄙な立地の島は四皇の目を出し抜き潜伏するには都合がいい立地と言えるのだ。

 そしてこの島を狙うルーキーの海賊がまた一隻、海軍の巡視船を置き去りにしてやってくる――懸賞金1億3000万の賞金首、不屈のドッグ率いるバイティング海賊団である。

 真昼にも関わらず薄暗く風は強く、そして雨は黒い線となって海賊船に降り注ぐ。海賊団はそれに負けじと帆を操り、舵を取って陸珊瑚島へと近づくのだ。

 海軍を振り切ってここまで来たのだ。この島をちょいと脅して拠点を築けば、当分の活動は安定するだろう。

 その見込みは大雨の陰に隠れた黒い翼によってマストと共にへし折られた。

 雷がマストを縦に裂き、波にさらわれ海に沈む。

 黒い影は彼らの訪れを知っていた。賞金首との繋がりが深い海軍中将――先の巡視船の上司が既に黒い影に海賊船の情報を伝えていたのだ。

 うろたえるバイティング海賊団の真上で、てらてらと光の線が広がる。

 やがてそれは複雑に折りたたまれ、一人の女性が甲板に降り立った。

 リュウリュウの実幻獣種、モデルネロ・ミェールを宿す賞金稼ぎ、ヒュドロス・メルの狩りが始まる――。

 狩り――そう。狩りであった。

 メルの振るう薙刀は水飛沫を上げながら柔軟な線を描いてバイティング海賊団の船員を薙ぎ払う。

 逃げ場はない。一人、また一人と薙刀は水を纏って返り血を洗い流し、金にならない雑魚を倒していく。

 メルの肌にピリリとした感触が走る。静電気と見聞色が生み出すレーダーが強い力を察知した。

 そのままゆったりと右足を軸に体を半身にズラし、先ほど自分がいた場所に薙刀の刃を置く。

 それだけの動作で少しは殺れると言った風情の海賊は深手を負い、甲板に臥して雨水を浴びるばかりとなる。

 甲板が戦闘不能の海賊と、怯えて動けない海賊とに分かれて静かになる頃にメルは甲板上にドッグ船長が不在である事に気付いた。

 問題は無い。水と電気を操るこの力に加えて見聞色の範囲には自信がある。

 数分ほど探ってやると、情けない事にあの船長は部下を見捨てたった一人で小舟を漕ぎ、船から離れて荒波に揉まれていた。

 追いかけるのは簡単だ。だが後顧の憂いは絶っておこう。生き残りが故郷の陸珊瑚島に上陸し狼藉を働かれたら困る。

 悪魔の実の力を全開にすると、メルの姿が人の姿を失い膨らんでいく。

 背中からつややかに光る翼膜を張った翼が広がり、手足は太くなり爪は鋭く甲板の木材を抉る。

 人の皮膚は見る者を惑わす何とも言えぬ質感の皮膚へと変わり、骨格はヒトからトカゲに似たそれへと変わっていく。

 寺の天井に描かれているかのような厳つい龍の顔にはさっきまでのうららかな女性の面影はなく、帯電した髭が揺らめいている。

 これが『溟龍』。水と雷を操る激流の主。

 その巨体に電流が走る。威嚇ではない。   

 ほとばしる青白い電光は甲板を濡らす雨水に触れるとそれを泡立たせ始める。

 一部始終を眺める海賊たちの恐怖が頂点に達した時、彼らは船ごと吹き飛ばされて水漬く屍と化した。

 水蒸気爆発。彼女の纏う高熱が水を膨張させ、その威力はガレオン船をも轟沈させるという。

 爆風を広げた翼に乗せて飛び上がった彼女は、ゆったりと飛びながら高度を下げ、ドッグ船長へと近づいた。

 怯えた彼は銃を放つが、龍の皮膚に鉛玉は通用しない。

 ネロの腕がドッグ船長を鷲掴みにすると、電撃が彼の意識を直ちに刈り取る。

「今日はチョロい仕事だった」

 このまま海軍の基地に飛んでいけば巨体の油臭い海軍中将は気前よく1億3000万ベリーを即金でくれるだろう。

 これで島中の皆がしばらくは夕食のおかずを一品増やせる。

 そう考えるとネロの口元はわずかに緩むのであった。 

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