コハルの意地~魔女ハナコの想定外
「う、ぅぅっ…ダメ、お砂糖は…アレ、食べないとっ…!」
「…どうして、今更…コハルちゃんは何で私を戻したんですか…?」
砂の砂丘の中、周りに人気のない場所で二人の少女が吠える。
コハルは何とか中毒症状を抑えたものの心の底から湧き上がってくる砂糖への欲求に必死に蓋をしながら何かを貪り、
ハナコは中毒症状とはまた違う頭の痛みに襲われながらもそのコハルの様子を後悔に濡れた頭で見ていた。
…今の混沌とした状況になる、今から数十分程前の事。
アビドス砂祭りを強襲する作戦、その中でハナコとコハルは1対1になった。
本来なら補習授業部と補習授業室がお互いの傍にいた筈なのに、戦況が目まぐるしく変わってしまうせいでハナコに翻弄され続ける二人を前に、
コハルは「自分が囮になる」と買って出た。
…当然反対意見も出たがあまり長い時間戦うとハナコの全身から発する中毒症状にやられてしまう可能性もあるため、最終的に二人は何とか後方から来る保守授業室の追撃をかわしながらコハルを囮にする作戦を了承してくれた。
…そこからは状況が目まぐるしく動いた。
クルセイダーちゃんから降りたコハルが補習授業室に周りこんで攻撃をしようとしていたのを見抜いたハナコが他二名の相手を補習授業室に任せながらコハルを追い、
そして…時間を稼ぎ、粘って…負けた。
「ふっ…ハナコ、あんたぁっ…!」
「うふふ♥悪く思わないでくださいね、コハルちゃん…♥」
結果として、最初に二人と別れた地点から離れた砂丘でハナコに捕らえられたコハルは砂糖による拷問…快楽攻めのような物をハナコから受けた。
甘くて気持ちよくて全てを投げ出してしまいそうな、そんな砂糖の誘惑に…
「ねぇ~、ハナコ…わたしも、おさとうあげるぅ…」
「あら、嬉しいですコハルちゃん♥それじゃあいただきますね♥」
ついに落ちてしまったように見えるコハルを前にして
心底嬉しそうな/吐き気を堪えるような顔を浮かべたハナコが次の砂糖を出そうとしていた処から後ろを振り向いて…
「…せいぜい、これでも喰らっときなさい!バカハナコ!」
帽子の中。平常心の時のハナコなら容易に見つかったであろうセイなる手榴弾を
自分をまきこむ形で爆破したコハル。
堕ちそうになる意識を勇気と友を救う気持ちで抗い続け、
完全に砂糖に堕ちたかのように見えた演技をしたコハルの作戦がハマった事により、
セイなる手榴弾は「味方」をしっかりと回復…させなかった。
コハルは確かに砂糖に飲み込まれないように抗っていた。
しかし最後の抵抗をするかのように砂糖が彼女の神秘を一時的に変異させ、
敵を中毒にする/味方を中毒から回復させるという能力が開花するきっかけになってしまったのである。
これが一時的、そして初使用だったとしてもその影響は大きく…
「う、ぅぅっ…ダメ、お砂糖は…アレ、食べないとっ…!」
「…どうして、今更…コハルちゃんは何で私を戻したんですか…?」
そして現在、本来ハナコを回復させつつ自分も回復してから何とか二人の方に戻ろうとしていたコハルの考えていたパターンは完全に機能しなくなってしまった。
(ああもうやっちゃったっ…なんか頭がぼーっとしてたのが急に冷えてきて…
急いであれ飲まなきゃ!!)
(…そう、ですか…私は戻れるかもしれませんが、コハルさんがもう…
…どうしてこんな時に正気に戻ってしまったんでしょうか?
せめて安らかに気持ちよく落としてあげなきゃ…)
悶絶しながら無理やり自分を抑え込みつつポケットから出した何かを
口に含んだコハルにああ、結局は彼女も砂糖に屈してしまったのだと
安心/堕落しそうになったハナコはゆっくりと彼女に近寄る。
今の彼女の表情を確認して墜とさ/謝ラないといけない…そう思っていた矢先の事。
「…えいっ!隙ありっ!!」
「あっ…きゃぁ~♥」
コハルに足をひっかけられて砂の上にハナコが押し倒される。
中毒症状で強くなっていたはずの身体は中途半端に中和されたことで
何かを覚悟したような顔をするハナコ
「ふふ、このまま私も砂糖を流し込まれちゃうんでしょうか…♥興奮してきますね…♥」
(コハルさんでも抗えないなら…せめて魔女のまま堕ちて…)
「~~~~あーもうっ!しょうがないわねハナコは!」
へらへらと笑うハナコにコハルは意を決したように顔を近づけていく。
ハナコはそれを見て納得したように全てを受け入れた顔をすると砂糖が放り込まれるであろう口を開けて
彼女が砂糖を放り込むのを待って…
「んっ…ふぅぅっ…!」
(すっごい恥ずかしけど、これでも喰らいなさいバカハナコ!)
訳の分からない言動を繰り返すハナコに中毒症状から回復したばかりのふらつく頭と
どうしても助けたい友達への思いが「普通」を自称する自分の友達のような行動力を今のコハルに与えていた。
先程口に含んだのは事前に連合軍と勇者PTに配布されていた砂漠の砂糖の成分を中和する薬…を飴玉にした物。
現地で間違って落としてしまってもバレないようにと対策されていたその飴玉を口に含むと
自分の上手く覚えられない頭をうんうん唸らせながら聞いていた言葉…「経口摂取」をさせるために
ハナコと自分の唇を重ね合わせると一気に口の中で溶かした飴玉を流し込んだ。
「………!?」
(…へぇっ!?わ、わたしコハルちゃんに…きす…!?)
これに驚いたのはハナコ。
自分が砂糖に友人を鎮めていた筈が正常な判断力を急に戻されてしまい、混乱の最中
友人の凶行を自分の今までの行いが帰って来たのだと受け入れたらいきなりの接吻を受けてしまった彼女の頭が
完全にオーバーヒートし、普段の淫靡な言葉や過激な露出趣味は見る影もない。
唾液で溶けた飴がコハルが夢中で舌を使いハナコの口をこじ開け、
無理やりクリアな思考にされつつも恥ずかしさといじらしさ、
そしてつたないながらも自分への想いを込めたこの一撃に
ハナコは全くと良いって言いほど抗えなかった。
(…もう、無理…です…)
「わ、わたしのこうさん…です。ので…後は全部自分で食べま…」
「くっ!さっき私に砂糖を食べさせてきた時と同じ事言ってるわハナコ!
こうなったら全部今持ってる飴を流し込んでやるから覚悟しなさい!」
(ダメでした…どうしてあんなことを言ってしまったんでしょう、過去の私は…)
「…は、はい…まだダメそうなので、お願いして、いいですか…?」
降参宣言をしようとするハナコ、過去の自分の行いに足を掬われてしまい完全に逃げ道がなくなった彼女は、コハルに口内をしばらく優しく蹂躙されることを受け入れる事になり…それからしばらくの間、コハルが夢中で飴を全て消費し尽くすまでは
ハナコは恥ずかしいようなくすぐったいような薬飴による口移しをしばらく受け入れることになり…
「んっ…んっ…んぅぅっ…!」
(ハナコの口…やわらか…じゃなくて!これはしっかり薬の成分をしみこませないと…!)
「ふ、ふぅぅっ…んちゅっ…♥」
(ああ、私どうしたら…お願いです、誰でもいいから早くこっちに…
でもコハルさんとのキスを見られてしまうのも気恥ずかしいです~…)
砂丘の真ん中、砂が覆い隠すこの土地で場違いにも口づけを交わす二人。
純度の高い砂糖を摂取して副作用すら承知でホースを生やしていたのに今は萎びて、
いつの間にかしゅるしゅるとハナコとコハルを取り囲むようにしなりながら二人を見守るように今は動いている。
それからコハルが夢中で残ったアメを全部解けて流し込み終わるのは、それから数分後の事だった…
【何とか補習授業室を止めて合流したアズサとヒフミは
何故か距離の近いような遠いような二人が顔を赤くしつつもハナコが正気に戻っていた事に安堵し、ひとまず謝罪と現状確認をする事になったとか…】