コックに任命する話

コックに任命する話


ルフィは地下牢に閉じ込められていた男を救出して自分の船に乗せた。

男はサンジと名乗り、突然の状況に混乱していた為、一先ずは痣だらけである身体を手当てしてもらおうと部屋にチョッパーと二人きりにさせて外で待機する。

手当ても終わりサンジも落ち着いてきたとのチョッパーの報告にルフィ達は部屋に入った。


「この仮面…鍵がかかって取れないんだ…」


サンジは鉄仮面をしていて、外そうと何度か試みたがダメだったとしょんぼりとするチョッパーにゾロが声をかけた。


「どいてろ」


ゾロの一声に全員ゾロから距離をとる。全員が離れた事を確認するとゾロは刀を握ってサンジに斬りかかった。


「!!」


カパッと鉄仮面だけが綺麗に真っ二つに割れて床に落ちていく。鉄仮面が外れた事でサンジは目をぱちくりとさせた。


「あ、あぶねーだろゾロ!!!」

「サンジまで斬れたらどーすんだ!!」

「ちゃんと外れただろ」


突然斬りかかったゾロにウソップとチョッパーは心臓をバクバクとさせながら非難を浴びせるが、ゾロはあっけらかんとしている。

何はともあれ無事に取れたと、ルフィは事の経緯を軽く説明した後、サンジに質問をした。


「お前さ、なんかしたい事とかあんのか?」

「…………したい、こと…」

「ほら、夢とかさ」


11年間全くと言っていい程に人と話す事がなかったサンジは上手く喋ることが出来ずにいた。それでも問われた事を受け応えしようと必死におずおずと喋り出す。


「…………オールブルー……」

「おーる、ぶるー??」

「それって…なに?」


恐がらせないように優しくナミが問いかけると、サンジはか細い声でたどたどしく説明をする。

それを聞いたルフィは少しだけ考え込むとすぐさま何かを閃いたのか、よし!と声を上げた。


「じゃあお前このままおれの船に乗れ!」

「……え」

「ちょっとルフィ…!」


ルフィの発言に驚いたのはサンジだけではなかった。チョッパーがサンジを治療してる間に一味で救出したサンジをどうするかの話し合いをした際、多くの危険が伴うこの航海にサンジをずっと乗せるわけにはいかないと判断し、次の島に到着したらサンジを降ろすつもりでいた。にもかかわらずルフィはサンジをサニー号にずっと乗せると言い出したのだ。


「だってよその、おーるぶるー…?ってのは海に出なきゃ叶う事が出来ないんだろ?なら丁度いいじゃねぇか」

「けど、」


先程話した事を口に出したかったが、サンジがいる前では言うべきではないと、全員がルフィに反論出来ずに口篭る。

そんな周りを気にすることなくルフィはサンジに近づきニカッと笑ってみせた。


「お前さ、料理好きなのか?」

「!」


サンジがなんで、と問う前にルフィはサンジの前にドサッと本を数冊置いた。その本は全て料理関連の本だった。地下牢でサンジを助ける時にサンジの近くに置いてあった本であり、ルフィはその本をサンジと一緒に持って来ていた。


「ウチには今コックがいねぇんだ。だからさお前ウチのコックになってくれよ!」

「…………!……けど、」


ルフィの言葉にずっと暗かったサンジの表情に輝きが見えた。だがそれも一瞬で、すぐにまた暗い顔に戻ってしまう。


「……料理、したい、けど…作れない……きっと失敗、する……」


料理は監禁されてからも何度かした事がある。だが兄達に居場所がばれてから調理道具を全て取り上げられてしまい料理が出来なくなってしまった。残されたのは料理本のみで、サンジの料理スキルは本で得た知識しかない。

そんな人間にコックが務まるわけがない。作っても失敗するに決まっている。だから、出来ない。

床に置かれた料理本を両手でギュッと抱きしめ俯いてしまったサンジに、ルフィは首を傾げた。


「別に良いじゃねぇか失敗したって」


何がダメなんだと言いたげなルフィにサンジは口をポカンと開けた。


「料理が好きで料理がしたいんだろ?なら沢山作ればいいじゃねぇか。失敗なんて誰でもするし、人ってのは失敗して成長していくんもんだろ?だから失敗を恐れんな!」

「…………!」


屈託のない笑顔を向けて放たれるルフィの言葉はサンジにとっては衝撃だった。


(失敗して、いいんだ……)


失敗作は世に出してはいけない。だから弱くて出来損ないの失敗作(おれ)は地下牢に入れられた。それが、当たり前。

なのにこの人は失敗してもいいと言う。人は失敗して成長していくものだと。本当にそれが許されるのだろうか?にわかに信じ難い。

けれど、その言葉は自然と心を軽くしていく。


(おれにも、出来る…?)


サンジは意を決したように、恐る恐る本音を口にした。


「おれ……料理、作りたい…!」

「!!おう!じゃあ今日からお前はウチのコックだ!よろしくな、サンジ!」


ルフィのより一層の笑顔に、サンジは肩の力が抜け強ばっていた表情が自然と和らいでいく。

麦わらの一味に、新たな仲間が加わった。


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