グエル先輩のささやかな報復
「……ふはあああ。やっぱり落ち着きますねえ、グエルさんの胸の中……」
「お前よおー。嫌がらせが重なって凹んでんのはわかるんだがよ……。そろそろいい加減にしろって!仮にも年頃の男女だろうが!」
グラスレー寮との決闘に協力してやったことが功を奏したか、あるいは地道な餌付けのたまものか。(単にたかられていただけの気もするが…)妙にスレッタに懐かれてしまった俺は、今日もテントの中で生殺しの責め苦にあっていた。
嫌がらせを受けストレスで限界になる度、スレッタは俺の胸に抱きついて子供のように甘えるようになってしまっていたのだった。
「…つうか前から思ってたんだが。これって不貞になるんじゃねえのか?花婿さんよお」
くしゃくしゃ頭を撫でてやりながら問いかければ、憮然とした顔で。
「お友達同士でも、ハグくらいしますし。……それに、グエルさんは別に、そういう枠じゃありませんから」
などというナめくさった回答。下手に出てるように見えて、妙に図々しいんだよな、こいつ…。
しかし今の回答にはさすがに少しカチンときた。……今回は少しだけ、意趣返しをしてやろう。
「まるで赤ん坊みたいだな」
ならば今日は、赤ん坊の喜ぶ遊びをしてやるとしよう。
ストンとスレッタを押し倒し、トップスの裾をめくる。今日はオレンジのインナーではなく、スタンダードなキャミソールを着用しているようだ。好都合。キャミソールもめくってやって、その柔らかい腹の皮膚にひたりと唇をつける。
「ひゃんっ!ちょちょちょっと、何をやってるんですか、グエルさん!!」
スレッタがなにやら騒いでいるが、構わず続ける。
本当だったら思い切りその皮膚を吸って痕をつけてやりたいところだ。しかしその欲望は抑え込み、それとは真逆のことをしてやる。
フーッと息を吹きかけてやると、「ブーーッ」という間の抜けた振動音が皮膚から鳴る。…昔親族の家で見かけたのを見よう見まねでやってみたが、案外上手くいくもんだな。
「ヒッ!」とスレッタが振動音にビビっているので、説明してやる。
「赤ん坊相手にな、こうやって皮膚を鳴らす遊びがある。大抵の赤ん坊はケタケタ笑って喜ぶんだよ。お前も赤ちゃんみたいなもんだし、お誂えむきだろう」
ブーッ「ふっひゃ」ブーッ「あうっ」ブーーッッ「あッ」
スレッタの腹の皮膚に唇をつけ、間抜けな振動音を何度かたててやる。
「ふはは!面白え音ー」
「んっ、ふっ……ンッ……。やめて…やめてください、グエルさん…。なんか、これっ、ヘンな感じ……」
頭上からそのように訴えてきたスレッタは、うるうるとした涙目になりほんのりと顔を赤らめていた。心持ち息が上がってしまっているし、あと俺の肩を掴む手に力が入りすぎていて痛えんだよなぁ。
少しだけだが、溜飲が下がる思いだ。
今度から、しばらくはこれで遊んでやろう。
……もしかしたら、腹以外の場所でもいけるのかもしれんな。後で調べてみるか。