クルクシェートラ体験記 パーンダヴァルートでの一幕
「人数は大丈夫そうか?」
「昨年はそんなに出生率高くなかったからおそらく」
「この分だと悪魔の俺たちにならなくても良さそうですね」
「それじゃあ始めようぜ兄貴」
「ああ。始めよう、未来へと続くためのわし様たちの戦争を!」
もし子どもの頃に俺がアイツらを傷つけなければ、アイツらと俺らは仲良くできたのだろうか。
味方も敵も大勢の人が死んでいく、この戦争は起こらなかったのだろうか。
嫌いな従兄弟たちを殺した。
最悪な気分だ。
「大嫌いな相手を殺すっていう時に辛気臭い顔してんなあお前。もうちょっと楽しそうな面でもしたら?」
血まみれの従兄弟がそう俺を嘲笑いながら言った。
「……一つ聞かせろドゥフシャーサナ」
「なんだよビーマ」
「この戦争で沢山の戦士が死んだ。……お前ら百王子も含めて」
「そうだな。お前に俺の弟は殺された」
「どうして家族が死んでそんな平気そうな顔ができる。なぜお前たちは戦争を起こした!」
ドゥフシャーサナはキョトンとした顔をして言った。
「……マジかよ。本当に何も知らないんだな憐れなビーマ」
「どういう意味だ」
「俺がお前に何かを教える義理はねえよ。クリシュナにでも聞くんだな。まあ答えてなんてくれねえだろうけどな」
ドゥフシャーサナは俺に子どもの頃のような笑顔を向けて言った。
「じゃあなビーマ。無知であることを選んだ英雄。
俺はお前のことが本当に心の底から嫌いだったぜ!」