クインハーバーにて⑤

クインハーバーにて⑤


良くない予感、というやつは、当たってほしくないにも関わらず、だいたい容赦なく大当たりを撃ち抜いてくるものだ。

モニターで捉えていたデミトレーナーから発せられるパーメットリンクがスコア4を示すとほぼ同時に、ノレアはザウォートを全力で後退させた。

相手がGUNDフォーマットを搭載しているか否かに関わらず、スコア4の時点でパーメットリンクはセンサー有効半径の拡大をもたらす。

「ソフィ!後方警戒!」

「まだ気づいてないよ!そのまま逃げちゃえ」

事前に入力した脱出ルートのままに真っ直ぐ突っ切る。

デミトレーナーの位置は変わっていなかったが、手持ちのミサイルランチャーを撃ってきたようだ。

「熱源、4!」

4連装の誘導弾が全部こっちに向かっているのは、敵も流石と言うべきか。

「ECM発射、そんでパージっと」

複合型の電波障害弾頭が発射される。目視距離での殴り合いでも発生しない限り、煙幕とは通常、電子戦対応の妨害手段だ。

「手持ち終わりぃ。さ、帰ろ帰ろー」

ベクタードブースターを焚いて一気に離脱を図る。流石に高機動仕様のザウォートだけあって、デミトレーナーの追尾は振り切ったようだ。

「武装が残ってりゃ、ちょっと小突いても良かったけどなー」

「…あんたねぇ…『お兄ちゃん』にチクるよ?」

「一発殴るくらいいーじゃーん!」

オートパイロットで飛行するコックピットで、IFFセンサーに反応が入る。

「進行方向、IFF応答あり…ファラクトのお出迎え、だよ?」

努めて冷静なノレアの反応が返ってきた。

「…よ、4号のかしら」

「んー、お兄ちゃん滅多なことじゃファラクト乗ってこないしぃ~?」

作戦前に送ったメッセージに、どうやら感づいたのか。

「いいなー、彼ピのお出迎えかぁー」

「その言い方やめなって」

「えー?じゃあダーって呼んだほうがいい?てか、嬉しそうな顔しちゃって」

「してない!!」




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