キャプテンエース炒飯
「愛空はなんで見てんの?」
「我らがエースと俺たちを打ち倒したストライカーが一緒とか、そんなの見たいに決まってるだろ。ダメか?」
「俺はダメじゃないけど……」
これから潔と閃堂はあんなことやこんなことをする予定で、それは人に見せるようなものではない。まあ青い監獄はこういった面でも常識を捨て去っているので観賞者がいる状況は珍しいものでもないが。常識を捨てるのはサッカーだけにしろとツッコむ人間は残念ながらいない。
愛空はベッドのそばに椅子を持ってきてまるで映画でも見るような構えだ。完全に観賞するつもりらしい。閃堂がこの部屋に来た時から一緒に来ていたので、潔は特に反対しないだろうと見込み、閃堂も了承したうえで愛空がここにいるのだろう。やっほーと愛空が現れた時は潔も驚いたが、乱入者がいるのは珍しくもない。それにしたってこういった場面の観賞とは趣味が良くない気がするが。それに見てるだけって楽しいのか? 潔にはそこら辺よく分からない。
「閃堂黙っちゃってるし……」
「緊張してんのか閃堂?」
「いやそういうわけじゃないけど……愛空に俺の恥ずかしいところ一方的に見られるってズルくね?」
近い未来を想像したのか、ふんわり赤くなった閃堂の頬は温かい。その頬に添えた潔の手に口付けて、閃堂が愛空に視線をやった。潔もつられて愛空を見る。閃堂の発言は意外だったのか愛空も目をぱちくりとさせていて。左右で色の違う瞳が瞬いた。
それから、閃堂が手招くのに、愛空はついといった風にベッドに乗り上げた。前からちょっと思ってたけど愛空って閃堂には特に甘いよな。潔はそう思った。本人は鑑賞だけするつもりだったはずなのに今も誘われるまま、ベッドまで来てしまっているし。この先に何があるか分からないわけでもあるまいに。
「なあ潔。愛空も一緒で良いか?」
「良いよ」
閃堂の提案は潔の予想範囲内のことだったので、すぐに頷いてやった。愛空が嫌がれば潔も考えるが、閃堂に乞われれば愛空は断らないだろう。本人に自覚があるのかはわからないが、"ストライカー"に甘い節もあるし。
「俺も一緒かあ……」
閃堂が渋る愛空の服を引っ張って、愛空を寝ころばせる。そこで大人しく寝転んでやるあたりが答えだよな。潔はそう思ったが、藪を突いて蛇を出したら困るので黙っておいた。閃堂に睨まれるのも嫌だ。閃堂が怒っても怖くはないけど、面倒事は避けたい。
「俺も愛空の恥ずかしいところ見たいし!!」
「仕方ねえなあ。まあ、俺は恥ずかしくねえけどな」
「俺だって恥ずかしくはねえよ!!」
キャンキャン吠える閃堂をどうどうと宥めて、潔は両者に口付けた。同時に二人相手ってどうやれば良いのかな、そう考えながら。